One

マン太

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その後

2.先輩

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 その日、仕事終わり、再び匠と顔を合わせていた。立ち寄ったのは大人の雰囲気漂うバーだ。静かに語り合うのには丁度いい。誘ったのは匠だった。数日後、日本を立つらしい。その前に飲もうとあったのだ。

「で、どうしてあんなマネを?」

 すでに事の次第は薫から聞いていた。島まで虎太郎についていって、余計なお節介を焼いたと言う。

「あんなって、ことはないだろ? あいつの恋が成就するように、ちょっと手を貸しただけだって」

「──乱暴なやり方だ。あの後、お前らのキスシーンを見た薫をなだめるのにどれだけ大変だったか…。全部、話したからな?」

「ああ。奴の俺を見る目が厳しかったからな? 許さないって顔にかいてあってさ。かわいいよな? ああいうの。それに虎太郎もやられたのか?」

「薫はもともと人目を惹く子だったからな。人を惹きつける力がある。うちの連中はみんなそうだが。それを、虎太郎が好きになるなというのが、無理だろう」

「あーあ。もっと早く手を打っとけばな…」

「だったら。あんなこと、すべきじゃなかったな。今更だが。いい薬になっただろう?」

「…俺も若かったんだって。今だってそう、年食ってるわけじゃないが…」

「後悔さきに立たず。今後は気をつけることだ」

「ま、あのガキで虎太郎が満足できればいいけどな。上手く行かなきゃ、俺がまた助けてやるさ」

「余計なお世話だ。それに、薫はああ見えてかなりしっかりしている。病んだのだって、妙に生真面目なところがあったからだ。だが、今は虎太郎がいる。うまくフォローしてくれるだろう。俺としては、今後も末永く、薫の面倒を見て欲しいと思っている」

「…会社の為にか?」

「それもあるが。──あの時、ろくに助けられなかったからな。虎太郎にも幸せを感じて欲しいだけだ」

「虎太郎を利用しているくせに、よく言う」

「…そのつもりでいたが──結局、やめた。虎太郎がどれだけ、薫を思っていたか知ったからな。うちの会社としては、当分の間、伏せてもらうことになるが。それが必要なくなる時代も来るかもしれないしな」

「向こうに渡れば、少しは生きるのに楽になるだろうに」

「それも、薫と虎太郎に任せる。…いずれそうなるとしても、今じゃない。それに、今はまだそんな先まで考えていられないだろうしな」

「アイドル業界は大変だな?」

「仕事ばかりじゃないさ。虎太郎との生活に、今は必死だ。必死というか──楽しくて仕方ないってところだな…」

「若いってのは、いいね」

「だな」

 互いに顔を見合わせて、苦笑する。カランと、グラスの氷が音を立てた。



ー了ー
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