Take On Me 4

マン太

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7.亜貴のこと

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 それは、高校三年卒業間近の頃。亜貴は国立大学の入学試験を終え、後は発表を待つばかり、となっていた。
 できれば家から通える範囲がいいと決めた行き先で。医師への道を目指すが、とにかく受からなければ先へは進まない。教員からも、模擬試験結果からも大丈夫と太鼓判を押されていたが、それでも不安は残る。
 そんな中で残りの高校生活を送っていれば、友人でありクラスメートのかなで清和せいわがそれぞれ告白してきたのだ。まるで計ったかのように同日。
 後日聞けば、まさに互いにその日にしようと決めていたのだという。
 奏は放課後、体育館裏。清和は学校帰り、いつも話し込む公園で。どちらかにオーケーが出たら、その時点で一方は諦めることになっていたらしい。
 しかし、亜貴は二人に答えた。

「無理だって。俺、好きな人いるから」

 二人の答えは。

「知ってる」

 だった。知っているなら、告白するなとは思ったが、知っていてもこの気持ちを伝えたかったのだという。
 けれど、その前から二人の気持ちには薄々は気付いていた。
 ことに、奏は態度にも顔にも出やすい。好きな相手には絡んでくるタイプだ。こっちが嫌な顔を見せても、気にせず突っ込んでくる。
 そんな奏は放課後、体育館裏に亜貴を呼び出し、好きだから付き合って欲しいと告白してきた。ウェーブのゆるくかかった長い栗色の髪をなびかせ、腕を組み仁王立ちして。
 およそ告白の態度じゃないだろうと突っ込んだが、本人は緊張した結果、そうなってしまったと口にした。
 清和はごく自然だった。いつもの公園で喋っていて、そろそろ帰るかと言った段で、話しのついでのように実はずっと好きだったと告白してきた。嫌でなければ付き合って欲しいと。
 清和は黒いストレートの髪をサラサラと輝かせ、長い足を組み替えながら。
 清和は真面目な男子だ。冗談もあまり言わないが、物静かなのが気楽でいつも一緒にいた。
 奏も清和もまるで正反対。だから面白く、付き合っていて楽しかったのだが。

「知っているなら、断られるって、分かってたんだろ?」

 髪をかきあげつつそう問えば、

「でも、好きなんだもん」

「でも、好きだから…」

 二人揃ってそう答えた。真っ直ぐこちらの目を見て。
 亜貴は二人をそれぞれ見つめた。
 奏の事も清和の事も大好きだ。ヤクザの息子だろうと、色眼鏡をかける事なく、ただ普通でいてくれた。
 奏は出会った当初、亜貴の顔がタイプだと告白し、友達になろうと言ってきたのだ。素直な言いように裏がないと判断した亜貴は、よくつるむ様になった。
 清和は亜貴から声をかけた。入学したて。化学の授業でグループになる必要があり、同じく化学を選択していた清和に声をかけたのだ。
 ひとり教室の後ろに立つ清和は誰を探すでもなく、ただそこにいて。焦った様子も、所在なさ気な様子もなく。堂々とひとりでいたのが良かった。
 清和は単にあぶれる人が出るまで待っていただけだったらしい。話して見れば、静かな物ごしながらも、視点が面白くすぐ好きになった。
 清和も亜貴を受け入れてくれ、奏と共に三人で過ごす事となった。
 楽しい三年間だったと思う。高校二年の時、大和が当時住んでいたマンションに来て。そこから少し、三人との関係に変化が生じた。
 とは言っても、つるむのは変わらない。ただ、放課後は早めに帰宅するようになり、休日は家にいることが多くなったのだ。
 奏も清和も気が気でなかったようだ。
 当時は既に二人で協定を結んでいて、告白は抜けがけしないと決めていたらしい。
 それなのに、亜貴が気もそぞろになって、学校にいる間はつまらなそうになった為、他に好意を持つ相手ができたのではと詮索仕出し。
 そして、無理やり亜貴から聞き出し、大和の存在を知った。亜貴に好きな人ができたと、二人は大騒ぎだったらしい。わざわざ、大和の仕事場、山小屋へ乗り込んでくるほど。

「お? 亜貴の友達か? いつもありがとな!」

 休日の晴れ渡ったある日。
 無理やり引きずられて、山頂直下の山小屋まできた亜貴の背後に立った二人を見て、大和はにこにこと邪気のない笑みを浮かべた。
 まだ仕事の途中で、受付から顔を出すとすぐに引っ込んでしまったが。
 満面の笑みだ。かわいいなと思って見つめていれば、傍らの二人はしばし沈黙し。

 なんだろう?

 不思議に思っていれば、山小屋近くの花畑を散策時に。

「…なんか、敵わないって思う」

 奏でがそう呟いた。清和も首をふりつつ。

「だな…。あれが亜貴のタイプなら──無理だ」

 亜貴は笑うと。

「いい人だろ? 二人だって、二人の良さはあるって。ただ、大和は俺にとって特別だから。それに、どっちかと付き合ったとしたら、どっちかが辛い思いをするだろ? それ考えると、奏と清和、どっちかなんて選べない…」

 その言葉に二人はちらと顔を見合わせた後、ふかぶかとため息を吐き出し。

「わかったよ…。亜貴」

 奏では一つにまとめた栗色の髪を揺らしながらそう口にした。清和もサラサラな前髪を傾けがっくり肩を落とし。

「そうだな…。諦めも肝心だな…」

 そうして、二人は亜貴を諦めた。
 が、気付けば二人が付き合いだしていたのだ。
 ある日の休日、待ち合わせ場所に先に来ていた二人の距離がやけに近く親密そうで。

「なんだよ。そこで付き合ったのかよ」

 冗談のつもりでそう口にすれば、はっとなったあと、かぁっと顔を赤くした二人は。

「…実は、ね」

「先週から…」

 これで、二人を失くすことは避けられたのだった。


「へぇ、あの二人、付き合ったんだ」

 家に帰って大和に話すと驚いたようだった。

「まあでも、似たもの同士って感じだな?」

「どうして?」

「雰囲気が似てたんだ。まったく違うタイプだけど、何かが一緒! みたいな」

 同時に告白してきた二人を思い浮かべる。

「…かも知れない」

「だろ?」

 屈託なく笑う大和は、やはり亜貴の心を捉えて離さない。自分の思いを改めて思い知った。
 大和が好きなのだと。

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