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その後 1.ノックアウト
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「岳…」
「大和…?」
仕事が一段落して、さて、このままひと息に片付けるか、取りあえず今日はもうこの辺でおしまいにして眠りにつくか、デスク前に座って悩んでいると、大和が階下に降りてきて姿を見せた。
パジャマ代わりのロングTシャツに、スウェットを履いた大和。どこか寝ぼけまなこなのが可愛い。
「まだ…、やんのか?」
「いや。悩んでいた所だ。終わらせれば、明日はゆっくり出来るしな」
明日は仕事は休みの日だ。ヒマラヤ山脈での撮影以降、中々きちんとした休みが取れなかったのだが、ここへ来てようやく休暇が取れる状況になった。
それまでは、溜まった仕事を片付けるのに大わらわで。データの整理や依頼された作品の修正、岳だけにしか処理出来ない事務仕事もあった。
これを終わらせれば、明日は全てを大和との時間に使うことが出来るが。
「…岳」
大和がまるで夢遊病者のごとく、手を伸ばしこちらに向かって来る。そうして、岳のもとへ辿り着くと、その腕を首筋へ回してギュッと抱き着いてきた。岳は慌てて背を支える。
「大和?」
「岳…。もう休もう…?」
そう言って、額を擦り寄せて来た。
くうっ、可愛い……。
岳は何とか平静を装って、
「…分かった。上に行こう」
パソコンの電源を落とし、デスクライトを消すと、大和を抱きかかえたまま二階の寝室へ向かう。
例の一件以降、大和は甘えて来るようになった。勿論、岳と二人きりになった時だけだが。
以前なら、照れて遠慮していた行動も、積極的に起こして来る。
こうしてハグを求めて来たり、キスをして来たり。あの一件がそうさせたのだ。罪悪感はあるものの、正直、嬉しい。ずっとこのままでいて欲しいと思ってしまう。
落ち着けば元に戻ってしまうんだろうが──。
申し訳ないと思いつつも、今はこの状況を存分に楽しみたかった。
「岳…」
ベッドに下ろしたと同時、大和が反転して押し倒してきた。ドキリとしてしまう。百戦錬磨の岳なのだが、この状態の大和の前では押されっぱなしだ。
「大和、シャワー浴びて来る──」
指先を頬に滑らせると、そこへ頬を寄せてきた。まるで猫のよう。
「いいよ。気にしない…」
「……」
そうして、伸ばした指先にキスしてくる。
──ダメだ。もう、耐えられない。
岳はぐいと大和を抱き寄せ反転する。ここからの主導権を、渡すつもりは無い。
さあ、これからだと腕の中の大和を見下ろせば、
「…岳、好きだ」
囁くように告げて来た。そうして腕を伸ばすと首筋に腕を回し、引き寄せキスして来ようとする。
勿論、そのまま受け入れるが。
完全に大和に翻弄されている自分に気づく。必死に求めて来る姿が可愛くて、愛おしくて。
キスの合間に大和を見下ろす。いつも活発に動く瞳がすっかりトロンと熱に浮かされた様になっていた。
「……」
可愛い過ぎる──。
完璧にノックアウトだ。
岳は降参した様に、一度頭を垂れると、再び顔を上げ。
「…岳?」
「──なんでもない」
そう言って、ギュッと大和を抱きしめると、日向の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
大和との楽しい時間は、まだまだ続く。
ー了ー
「大和…?」
仕事が一段落して、さて、このままひと息に片付けるか、取りあえず今日はもうこの辺でおしまいにして眠りにつくか、デスク前に座って悩んでいると、大和が階下に降りてきて姿を見せた。
パジャマ代わりのロングTシャツに、スウェットを履いた大和。どこか寝ぼけまなこなのが可愛い。
「まだ…、やんのか?」
「いや。悩んでいた所だ。終わらせれば、明日はゆっくり出来るしな」
明日は仕事は休みの日だ。ヒマラヤ山脈での撮影以降、中々きちんとした休みが取れなかったのだが、ここへ来てようやく休暇が取れる状況になった。
それまでは、溜まった仕事を片付けるのに大わらわで。データの整理や依頼された作品の修正、岳だけにしか処理出来ない事務仕事もあった。
これを終わらせれば、明日は全てを大和との時間に使うことが出来るが。
「…岳」
大和がまるで夢遊病者のごとく、手を伸ばしこちらに向かって来る。そうして、岳のもとへ辿り着くと、その腕を首筋へ回してギュッと抱き着いてきた。岳は慌てて背を支える。
「大和?」
「岳…。もう休もう…?」
そう言って、額を擦り寄せて来た。
くうっ、可愛い……。
岳は何とか平静を装って、
「…分かった。上に行こう」
パソコンの電源を落とし、デスクライトを消すと、大和を抱きかかえたまま二階の寝室へ向かう。
例の一件以降、大和は甘えて来るようになった。勿論、岳と二人きりになった時だけだが。
以前なら、照れて遠慮していた行動も、積極的に起こして来る。
こうしてハグを求めて来たり、キスをして来たり。あの一件がそうさせたのだ。罪悪感はあるものの、正直、嬉しい。ずっとこのままでいて欲しいと思ってしまう。
落ち着けば元に戻ってしまうんだろうが──。
申し訳ないと思いつつも、今はこの状況を存分に楽しみたかった。
「岳…」
ベッドに下ろしたと同時、大和が反転して押し倒してきた。ドキリとしてしまう。百戦錬磨の岳なのだが、この状態の大和の前では押されっぱなしだ。
「大和、シャワー浴びて来る──」
指先を頬に滑らせると、そこへ頬を寄せてきた。まるで猫のよう。
「いいよ。気にしない…」
「……」
そうして、伸ばした指先にキスしてくる。
──ダメだ。もう、耐えられない。
岳はぐいと大和を抱き寄せ反転する。ここからの主導権を、渡すつもりは無い。
さあ、これからだと腕の中の大和を見下ろせば、
「…岳、好きだ」
囁くように告げて来た。そうして腕を伸ばすと首筋に腕を回し、引き寄せキスして来ようとする。
勿論、そのまま受け入れるが。
完全に大和に翻弄されている自分に気づく。必死に求めて来る姿が可愛くて、愛おしくて。
キスの合間に大和を見下ろす。いつも活発に動く瞳がすっかりトロンと熱に浮かされた様になっていた。
「……」
可愛い過ぎる──。
完璧にノックアウトだ。
岳は降参した様に、一度頭を垂れると、再び顔を上げ。
「…岳?」
「──なんでもない」
そう言って、ギュッと大和を抱きしめると、日向の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
大和との楽しい時間は、まだまだ続く。
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