ももんがの毛

Tempp

文字の大きさ
2 / 4

第2話

しおりを挟む
『それならば、もてるようにしてほしいとか、別に願うべきことがあるのではないか』

モモンガはその小さな首をかしげた。

「あなたはかみさまではないのですか? かみさまでないとかみははやせないですよね」

うん? 
まあ、暇な神でもなければわざわざモモンガの頭に毛をはやそうとはしないだろうよ。
モモンガはまた頭のてっぺんをぺちぺち叩きながら、はあー、と白いため息をついた。
なんだかすこし、ばかにされているような、おかしな気分になった。

『神といえば、神である』

「それなら、かみのけをはやしてもらえないでしょうか」

ごそごそとほおぶくろから小さななにかの実を出す。
モモンガは今度はひげをひっぱりながら、上を向いたりきょろきょろと見回しながらつぶやく。

「おれいです。とてもおいしいです」

なにかものすごく得意そうな表情だが、べとついた実を持つ手はぷるぷるしていて、またきょろきょろと辺りを回し、スンスンと実のにおいを嗅いで、残念そうに顔から離す。
ずいぶん未練がありそうだ。
正直、いらぬ。
だがわしのところにねがいごとをするものなど久しいな。たわむれに、目の前のモモンガの運命を少し変えてみる。

『実はいらぬが、そなたの願いは叶えよう。3日もすれば毛は生えてくるはずだ』

「ほんとうですか、ありがとうございます」

礼を言う前に実は口の中に収められたものだから、その礼はもごもごと曇って聞こえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夏空、到来

楠木夢路
児童書・童話
大人も読める童話です。 なっちゃんは公園からの帰り道で、小さなビンを拾います。白い液体の入った小ビン。落とし主は何と雷様だったのです。

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

ふしぎなあな

こぐまじゅんこ
児童書・童話
みちのまんなかに、おおきなあながあいていました。 だいちゃんは、……。

青色のマグカップ

紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。 彼はある思い出のマグカップを探していると話すが…… 薄れていく“思い出”という宝物のお話。

処理中です...