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1章-1 カプト様が落ちていた。 ~『無法と欠けた月』のエグザプト聖王国の旅
とりあえず挨拶は大事と教わった
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「あの、僕はラヴィ=フォーティスと言います」
「……わしはカプト・ラセルテだ。ところでここは……どこだ」
頭、カプトは改めてキョロキョロと周りを見渡して困惑した声で告げた。
そういえば何でここにいたんだろう。普通通るなら道だよね。首が道を通る? うん? どうやって。
「ここはラテラテの町の近くです」
「ラテラテ? 聞いたことがないな。ふむ。ここはどの魔女様の領域だ?」
「『渡り鳥と不均衡』の魔女様です」
「む……思ったより飛んだな」
飛んだ?
カプトはなんだか考え込んでいるようだけど、トカゲの表情はいまいちよくわからない。首が飛ぶの? でも首族なんてみたことないから、遠くから来たのかな。そう思っているとざわざわと風が吹いて木立が揺れた。
改めて見ると本当に地面に埋まっているだけにみえる。なんとなく地面に埋まって頭だけ出してるトカゲ人を想像すると面白くなってきた。どこかシュールだ。
でもやっぱり道を逸れると危ないかもだし、そろそろ行かないと。
「あの、じゃあ僕はこの辺で……」
「待て待て‼ わしを連れて行け‼」
「えぇ? 無理無理。結構重いし」
「わしを齧っておいて何を言う⁉」
気づいてたんだ……。
「う、そう言われると少し心苦しいです……」
「それにわしは小さくなれるから問題はない」
小さく?
カプトがぶつぶつと何かを呟くと、見る間に縮んで手のひらに収まるサイズになった。
トカゲ人って小さくなれるものなのかな?
「ひょっとして魔法ですか?」
「そんなようなものだ」
「魔法って初めて見ました」
この大きさだと食べられるかな。でもわざわざ小さくして食べるのはもったいない気がする。
ちょっと真面目に考えよう。
やっぱり焼いたら固くなるのかな。お肉だもんね。でもちょっと齧った感じでは結構柔らかかったような気がする。ため息をつかれたような気もする。
「お主、今不埒なことを考えてるだろ」
「いえ、そんなことは」
「はぁ。わしは『大きな辻と狂乱』の魔女様の領域から来た。そこに連れて行ってもらえぬか。この大きさであればその鞄の脇とか帽子のヘリにでもくっ付けておいて貰えればよい」
「えええ無理です。僕はこれから就職」
「お主は頭は弱そうだが悪いやつではなさそうだ」
「はい?」
「礼はする」
返事をする前にカプトの首は飛び上がり、帽子の隙間に収まった。どうやって飛んだんだろう。飛びキノコの仲間なのかな。
「ちょっと、あの」
「わしはもう動かんぞ! わしを齧ったんだからな! 運の尽きと思って連れて行くがいい!」
「えぇ?」
「ほら、どこかに行くのだろう? わしはこれでも諸国を広く回っておったのだ。旅をするなら何か役に立つこともあるだろう」
「別に旅をしているわけでは」
「なんだ。そうなのか? ここは深い森ではないのか? 隠された財宝や未知なる遺跡、古代文明!」
村でも冒険だとか夢みたいなことを言う友達はいたけれど、そんなものより僕は美味しいものがいい。美味しいものがたべたいんだ。でも未知なる遺跡とかには未知なる食べ物もあったりするのかな。
でも遺跡でしょ? もうすっかり腐るか風化してるよね。美味しいものなんてありそうもない。
「あの、そういうのは別に。それに歩くとすぐ街道に出ますし」
「なんじゃつまらんのう。お主も男子であろうが。では何に興味があるのだ。おなごか」
「えぇ? おなごとか、そんな、その。その僕が好きなのは美味しいものです」
「何? そんなものでよいのか? まあ、各地の名産物産はある程度ならわかるが」
「本当に……⁉ カプト様。是非ご教示ください!」
「だがこの魔女の領域は知らぬ」
なんだ、駄目じゃないか。
でも僕の就職先はワールド・トラベル出版だから旅に出たりもする……よね?
僕の未来は美味しいものに満ちている、に違いない。
「……わしはカプト・ラセルテだ。ところでここは……どこだ」
頭、カプトは改めてキョロキョロと周りを見渡して困惑した声で告げた。
そういえば何でここにいたんだろう。普通通るなら道だよね。首が道を通る? うん? どうやって。
「ここはラテラテの町の近くです」
「ラテラテ? 聞いたことがないな。ふむ。ここはどの魔女様の領域だ?」
「『渡り鳥と不均衡』の魔女様です」
「む……思ったより飛んだな」
飛んだ?
カプトはなんだか考え込んでいるようだけど、トカゲの表情はいまいちよくわからない。首が飛ぶの? でも首族なんてみたことないから、遠くから来たのかな。そう思っているとざわざわと風が吹いて木立が揺れた。
改めて見ると本当に地面に埋まっているだけにみえる。なんとなく地面に埋まって頭だけ出してるトカゲ人を想像すると面白くなってきた。どこかシュールだ。
でもやっぱり道を逸れると危ないかもだし、そろそろ行かないと。
「あの、じゃあ僕はこの辺で……」
「待て待て‼ わしを連れて行け‼」
「えぇ? 無理無理。結構重いし」
「わしを齧っておいて何を言う⁉」
気づいてたんだ……。
「う、そう言われると少し心苦しいです……」
「それにわしは小さくなれるから問題はない」
小さく?
カプトがぶつぶつと何かを呟くと、見る間に縮んで手のひらに収まるサイズになった。
トカゲ人って小さくなれるものなのかな?
「ひょっとして魔法ですか?」
「そんなようなものだ」
「魔法って初めて見ました」
この大きさだと食べられるかな。でもわざわざ小さくして食べるのはもったいない気がする。
ちょっと真面目に考えよう。
やっぱり焼いたら固くなるのかな。お肉だもんね。でもちょっと齧った感じでは結構柔らかかったような気がする。ため息をつかれたような気もする。
「お主、今不埒なことを考えてるだろ」
「いえ、そんなことは」
「はぁ。わしは『大きな辻と狂乱』の魔女様の領域から来た。そこに連れて行ってもらえぬか。この大きさであればその鞄の脇とか帽子のヘリにでもくっ付けておいて貰えればよい」
「えええ無理です。僕はこれから就職」
「お主は頭は弱そうだが悪いやつではなさそうだ」
「はい?」
「礼はする」
返事をする前にカプトの首は飛び上がり、帽子の隙間に収まった。どうやって飛んだんだろう。飛びキノコの仲間なのかな。
「ちょっと、あの」
「わしはもう動かんぞ! わしを齧ったんだからな! 運の尽きと思って連れて行くがいい!」
「えぇ?」
「ほら、どこかに行くのだろう? わしはこれでも諸国を広く回っておったのだ。旅をするなら何か役に立つこともあるだろう」
「別に旅をしているわけでは」
「なんだ。そうなのか? ここは深い森ではないのか? 隠された財宝や未知なる遺跡、古代文明!」
村でも冒険だとか夢みたいなことを言う友達はいたけれど、そんなものより僕は美味しいものがいい。美味しいものがたべたいんだ。でも未知なる遺跡とかには未知なる食べ物もあったりするのかな。
でも遺跡でしょ? もうすっかり腐るか風化してるよね。美味しいものなんてありそうもない。
「あの、そういうのは別に。それに歩くとすぐ街道に出ますし」
「なんじゃつまらんのう。お主も男子であろうが。では何に興味があるのだ。おなごか」
「えぇ? おなごとか、そんな、その。その僕が好きなのは美味しいものです」
「何? そんなものでよいのか? まあ、各地の名産物産はある程度ならわかるが」
「本当に……⁉ カプト様。是非ご教示ください!」
「だがこの魔女の領域は知らぬ」
なんだ、駄目じゃないか。
でも僕の就職先はワールド・トラベル出版だから旅に出たりもする……よね?
僕の未来は美味しいものに満ちている、に違いない。
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