REDeyes

Beeya

文字の大きさ
3 / 3

第2章「初動」

しおりを挟む
 TVでは、しきりに池袋でのニュースが流れている。
 一人の男が駅の中で暴れ出し、警官が発砲。しかし暴れていた男はその警官を攻撃。
 しかし、その警官もなぜか市民を襲い始めたため、しかたなく仲間の警官が射殺した。
 最初に暴れていた男は、その間に消えてしまい、いまだ発見されていない為、池袋駅周辺の方々は警戒して下さい。

 どのチャンネルに変えても、その緊急放送が流れていた。
 その頃の人々はまだ「ああ、稀に起きるおかしな奴の猟奇的な事件か。」
 そのようにしか捉えられていなかった。

 池袋駅東口から東に進むと、東池袋になる。
 昔ながらの1車両しかない、都電荒川線と、地下鉄有楽町線の走る東池袋。その2つの東池袋駅が交差している場所の、すぐ近くの安いアパートに25歳になる青年が一人住んでいた。185センチの大きな体を、ベッドの上に横たえながら、その放送を見ている。
 名前は葛城護一(ごいち)。
 彼は地方から上京してきた青年だ。なんとなく入った高校で柔道をやりながら、あまり熱心に勉強もせずになんとなく卒業したが、
 地方ではなかなか就職先が見つからず、やっと入れた就職先の条件が、東京の池袋支店への配属であった。東京には特に憧れも興味もなかったが、これ以上就職活動もするのも嫌で、
 まぁ、東京も悪くないかな?
といった軽い考えで上京し、今の安いアパートで暮らし始めた。それから6年たっていた。

 「物騒だなぁ東京は。」

 一人ごとを呟きながら、彼女や友人、家族からきた安否確認のLINEの返事を打っている。
 護一はLINEを打ちながらとある人物の心配をしていた。

 池袋にはサンシャイン60というビルがあり、その近くのマンション一階で古武術を教えている道場がある。
東京に来てから1年がたった頃、中学、高校で柔道をやっていたし、まだ若かった護一は興味本意で入門した。
 そこで出会った武術師範である、進藤文太が彼の人生を変えた。江戸か明治に生まれたのではないか?と思われるような古風な人物で、己に厳しい人であった。空手、ボクシング、柔道、合気道、古武術、居合道を学び、合気道と古武術を基本に独自の武術として道場を開いた人物だ。一番熱心に取りくんだ合気道では、アメリカ、インド、オーストラリア、ロシア等にも指導してきた実績があった。

 元々正義感が強く古風な一面もある護一は、その師の生き様や考えに触発されて、師の後を継ぐかのように仕事帰りに毎日のように通いつめた。
 その武術に役立てる為に、キックボクシングも習うほど没頭していた。今では師のいない時は指導者として任される程の腕になっている。ここまで何かを真剣に続けたのははじめてであった。

 「進藤先生は大丈夫だろうか?」

 70歳になる進藤が心配になり護一は彼の携帯に電話をしたが、つながらなかった。道場の上の階に住む進藤のマンションは徒歩5分で近くである。護一は進藤のマンションに行き、様子を伺いがてら、コンビニで何か買いに行こうと、軽い気持ちで身支度した。
 外に出ると、いつの間にか騒然としていた。パトカーや救急車が何台も池袋駅に向かって走っている。護一は嫌な予感をおぼえた。何かこれからとんでもない事が起きてくるのではないか?とっさに部屋に戻りある程度の食量や練習で使う短い木刀、軽い着替えなどをリュックに詰めて、埼玉の川口に住むとにかく何かおかしいから警戒するように伝えると、再び外に出て自転車で師である進藤のもとへ急いだ。

 

 
 



 

 

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...