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第5話
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旅立ちの日は快晴だった。
屋敷の前で身の回りの物をまとめた大きなカバンとともに両親に向かって頭を下げる。
「お父様、お母様、今までお世話になりました」
「ああエミリー、元気でね!お母様はいつもあなたのことを思っているからね!」
「エミリー。何か辛いことがあったら、すぐに帰ってきていいからな」
涙もろいお母さまはもちろん、普段はいかつい雰囲気のお父様までもが目の周りを赤く腫らしている。
それを見て、生まれ育った家から離れるという事実がようやく私の中で現実のものとなっていく。
(やだ、私まで泣いてしまいそう・・・)
みっともない姿を見せまいと私は素早く体を翻す。
そこにはルークさんが御者を務める馬車が待っていた。
「もうお別れはいいんですかい?エミリー様」
「はい、『アレン』様のもとに参りましょう。ルークさん」
ステップを登り、乗り込んだ。
他に同乗者はいない。『アレン』様の意向で召使を連れていくことは許されなかった。
正真正銘の1人発ちということだ。
間もなく馬車がガラガラ音を立てて動き出す。
事前に聞いた話では『アレン』様の屋敷は我が家から半日と少しの距離にあるとのこと。
(アレン様は一体どういう方なのかしら?)
思うことは沢山あったけど馬車の単調な振動と窓から差し込む暖かい日差しに当てられた私はいつの間にか眠ってしまっていた。
「エミリーさま・・エミリーさま!着きましたよ!」
「・・・ハッ!」
私を起こしたのはルークさんだった。
見れば太陽は地平線に沈もうとしている。
「ごめんなさいルークさん、すっかり寝入ってしまいました」
「いいですよ。それよりも、まずはアレン様と顔合わせをしましょう。屋敷の中で待っているはずです」
「わかりました、行きましょう」
馬車を降りると、そこは小さなお屋敷だった。
2階建てで、窓の数からして部屋の数は10といったところだろうか?
平民としては大きい方だろうけど、貴族の感覚では非常に小さいと思ってしまう。
(成金の大富豪と言っていたけど、お屋敷は案外に慎ましやかなのね)
庭もあるけど、それも小さなもので手入れはさほど行き届いていないみたい。
「さあ、こちらです。エミリーさま」
ルークさんの後に続いて屋敷に入る。
内部はそれなりに整えられているけど、装飾品の類が一切なく殺風景な印象を覚える。
コンコンコンッ
「アレンさま、エミリーさまを連れてまいりました」
「そうか、入れ」
ルークさんがノックして要件を言うと、中から若い男性の声がした。
「さあ、お入りください。エミリーさま」
(いよいよね・・・)
ゴクリと唾をのみ込み、一歩を踏み出す。
『アレン』様とのご対面だ。
屋敷の前で身の回りの物をまとめた大きなカバンとともに両親に向かって頭を下げる。
「お父様、お母様、今までお世話になりました」
「ああエミリー、元気でね!お母様はいつもあなたのことを思っているからね!」
「エミリー。何か辛いことがあったら、すぐに帰ってきていいからな」
涙もろいお母さまはもちろん、普段はいかつい雰囲気のお父様までもが目の周りを赤く腫らしている。
それを見て、生まれ育った家から離れるという事実がようやく私の中で現実のものとなっていく。
(やだ、私まで泣いてしまいそう・・・)
みっともない姿を見せまいと私は素早く体を翻す。
そこにはルークさんが御者を務める馬車が待っていた。
「もうお別れはいいんですかい?エミリー様」
「はい、『アレン』様のもとに参りましょう。ルークさん」
ステップを登り、乗り込んだ。
他に同乗者はいない。『アレン』様の意向で召使を連れていくことは許されなかった。
正真正銘の1人発ちということだ。
間もなく馬車がガラガラ音を立てて動き出す。
事前に聞いた話では『アレン』様の屋敷は我が家から半日と少しの距離にあるとのこと。
(アレン様は一体どういう方なのかしら?)
思うことは沢山あったけど馬車の単調な振動と窓から差し込む暖かい日差しに当てられた私はいつの間にか眠ってしまっていた。
「エミリーさま・・エミリーさま!着きましたよ!」
「・・・ハッ!」
私を起こしたのはルークさんだった。
見れば太陽は地平線に沈もうとしている。
「ごめんなさいルークさん、すっかり寝入ってしまいました」
「いいですよ。それよりも、まずはアレン様と顔合わせをしましょう。屋敷の中で待っているはずです」
「わかりました、行きましょう」
馬車を降りると、そこは小さなお屋敷だった。
2階建てで、窓の数からして部屋の数は10といったところだろうか?
平民としては大きい方だろうけど、貴族の感覚では非常に小さいと思ってしまう。
(成金の大富豪と言っていたけど、お屋敷は案外に慎ましやかなのね)
庭もあるけど、それも小さなもので手入れはさほど行き届いていないみたい。
「さあ、こちらです。エミリーさま」
ルークさんの後に続いて屋敷に入る。
内部はそれなりに整えられているけど、装飾品の類が一切なく殺風景な印象を覚える。
コンコンコンッ
「アレンさま、エミリーさまを連れてまいりました」
「そうか、入れ」
ルークさんがノックして要件を言うと、中から若い男性の声がした。
「さあ、お入りください。エミリーさま」
(いよいよね・・・)
ゴクリと唾をのみ込み、一歩を踏み出す。
『アレン』様とのご対面だ。
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