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第19話:品評会その3
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「あらぁ、たしか先ほど宝石のご紹介をしてくれた方だったかしら?」
エスクワイア夫人が眉をひそめた。
夫人の前に進み出たのは勝気な表情をした若い令嬢とどことなく虚ろな表情をした令息だった。
「私はレベッカ・シエンタ、横にいるのは夫のラルフ・シエンタです。ささやかながら宝石の販売を手掛けております。以後、お見知りおきを」
「それで?どのようなご用件かしら。手短に済ませてくださる?」
「もちろんですわ。まず確認ですが、この品評会は優れた宝飾品を作る、人品骨柄卑しからぬ方々を広く世に知らしめるために催されてるんですわよね?」
「ええ、そうでしてよ」
エスクワイア夫人の口調にかすかな苛立ちが混ざる。
しかい国内有数の権力者の機嫌を損ねながらもレベッカ・シエンタは堂々としていた。
「なら不思議ですわね?どうして真っ当な貴族とは言い難いアレン・ヴェルファイアがそもそも招かれているのですか?」
「レベッカ嬢、聞き捨て何らないセリフが聞こえたんだがどういう意味かな?」
ここでアレンが割り込んだ。
「そうですわよレベッカさん、ここに招かれたのは全員が貴族名鑑に載っている方々ですわ」
エスクワイア夫人もアレンに加勢する。
しかし、レベッカ・シエンタの口は止まらない。
「では、アレン・ヴェルファイア様はつい数か月前まで家名のない平民で、困窮していたヴェルファイア家の令嬢との結婚をお金で買って貴族の身分を手に入れたことは当然ご存じなんですね?」
「・・・・!!」
アレンは息をのんだ。
「あら、本当ですの?」
エスクワイア夫人の視線が今度はアレンの方を向く。
「ええ、本当ですわ。その証拠にアレン・ヴェルファイアが連れている女性――あれはヴェルファイア家の令嬢ではありません、そうよねラルフ?」
「え、ええ。僕はヴェルファイア家のご令嬢と親しくしていたのですが、あの女性は間違いなくエミリー・・・ヴェルファイア家の令嬢ではありません」
(そうか、あの男の名前・・聞いたことがあると思ったらエミリーの元婚約者か!)
アレンは心中で歯噛みする。
「その・・・妻は少々事情がありまして、私の知り合いの女性に同伴を頼んだのです」
「本当かしら?見た目だけの卑しい娼婦を売り子代わりに雇ったのではないですかぁ?」
「な、何ですって!?アンタ言わせておけば 「やめろユリア!」
煽り文句に応じかけたユリアをアレンが静止する。
だが、すでにアレンは不利な状況に陥ってしまった。
エミリーとの結婚を金で買ったのは事実、そしてユリアの言動が図らずも追い打ちをかけてしまった。
貴族社会ではどんな事情があれど人前で感情をむき出しにして激昂することはありえない。
場の人々はすでにアレンとユリアのことを疑いの目で見始めていた。
にわかにざわめきだす会場――そして。
パンパンパン!
「今日はここまでにしましょう」
手拍子とともにエスクワイア夫人が宣言した。
「今夜のMVPの発表は取り消しとします。2か月後にまた品評会を開きますので、その時に改めて評価を行いますわ。皆様、よろしいですね?」
声をあげるものはいなかった。
「それからアレン・ヴェルファイアさん。できたら次は奥方を連れてきてくださる?是非とも挨拶させていただきたいわ」
「・・・善処します」
アレンは笑顔で取り繕うので精一杯だった。
何とか首の皮1枚つながったものの、今夜の品評会では予想をはるかに下回る成果しか得られなかったのである。
エスクワイア夫人が眉をひそめた。
夫人の前に進み出たのは勝気な表情をした若い令嬢とどことなく虚ろな表情をした令息だった。
「私はレベッカ・シエンタ、横にいるのは夫のラルフ・シエンタです。ささやかながら宝石の販売を手掛けております。以後、お見知りおきを」
「それで?どのようなご用件かしら。手短に済ませてくださる?」
「もちろんですわ。まず確認ですが、この品評会は優れた宝飾品を作る、人品骨柄卑しからぬ方々を広く世に知らしめるために催されてるんですわよね?」
「ええ、そうでしてよ」
エスクワイア夫人の口調にかすかな苛立ちが混ざる。
しかい国内有数の権力者の機嫌を損ねながらもレベッカ・シエンタは堂々としていた。
「なら不思議ですわね?どうして真っ当な貴族とは言い難いアレン・ヴェルファイアがそもそも招かれているのですか?」
「レベッカ嬢、聞き捨て何らないセリフが聞こえたんだがどういう意味かな?」
ここでアレンが割り込んだ。
「そうですわよレベッカさん、ここに招かれたのは全員が貴族名鑑に載っている方々ですわ」
エスクワイア夫人もアレンに加勢する。
しかし、レベッカ・シエンタの口は止まらない。
「では、アレン・ヴェルファイア様はつい数か月前まで家名のない平民で、困窮していたヴェルファイア家の令嬢との結婚をお金で買って貴族の身分を手に入れたことは当然ご存じなんですね?」
「・・・・!!」
アレンは息をのんだ。
「あら、本当ですの?」
エスクワイア夫人の視線が今度はアレンの方を向く。
「ええ、本当ですわ。その証拠にアレン・ヴェルファイアが連れている女性――あれはヴェルファイア家の令嬢ではありません、そうよねラルフ?」
「え、ええ。僕はヴェルファイア家のご令嬢と親しくしていたのですが、あの女性は間違いなくエミリー・・・ヴェルファイア家の令嬢ではありません」
(そうか、あの男の名前・・聞いたことがあると思ったらエミリーの元婚約者か!)
アレンは心中で歯噛みする。
「その・・・妻は少々事情がありまして、私の知り合いの女性に同伴を頼んだのです」
「本当かしら?見た目だけの卑しい娼婦を売り子代わりに雇ったのではないですかぁ?」
「な、何ですって!?アンタ言わせておけば 「やめろユリア!」
煽り文句に応じかけたユリアをアレンが静止する。
だが、すでにアレンは不利な状況に陥ってしまった。
エミリーとの結婚を金で買ったのは事実、そしてユリアの言動が図らずも追い打ちをかけてしまった。
貴族社会ではどんな事情があれど人前で感情をむき出しにして激昂することはありえない。
場の人々はすでにアレンとユリアのことを疑いの目で見始めていた。
にわかにざわめきだす会場――そして。
パンパンパン!
「今日はここまでにしましょう」
手拍子とともにエスクワイア夫人が宣言した。
「今夜のMVPの発表は取り消しとします。2か月後にまた品評会を開きますので、その時に改めて評価を行いますわ。皆様、よろしいですね?」
声をあげるものはいなかった。
「それからアレン・ヴェルファイアさん。できたら次は奥方を連れてきてくださる?是非とも挨拶させていただきたいわ」
「・・・善処します」
アレンは笑顔で取り繕うので精一杯だった。
何とか首の皮1枚つながったものの、今夜の品評会では予想をはるかに下回る成果しか得られなかったのである。
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