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第20話

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品評会が終わってからアレンとルークはユリアを高級宿屋に送り届けると、自分たちは庶民が泊まる安宿に入った。

「やっぱりエミリーさまに随伴してもらった方がよかったんじゃなかったですか?」

予約していた宿屋の部屋に入ってすぐルークはアレンに切り出した。

「ルーク・・・それは契約違反だ。僕がエミリーとの結婚に求めたのは『ヴェルファイアの家名』だよ。結婚が成立した以上は、あとは屋敷で暮らしてさえくれればいいんだ。品評会に参加するという僕個人の望みに付き合わせるのはナンセンスだよ」

「かもしれませんが・・・エミリーさまはアレンさまのことは悪しからず思っているみたいですし、頼めば来てくれたと思いますよ?」

「そうかい?しょせん僕は金で結婚を買った無礼者だ。無理に品評会に連れ出してもエミリーは苦痛に思うだけだろうさ」

「はあ、そうですか・・・」

商売となれば微に入り細に入った気遣いができる割に、プライベートでは鈍感な主人にルークは呆れそうになる。

「それにしてもユリアには悪いことをしてしまったね。せっかく来てもらったのに、あのレベッカ・シエンタのおかげで台無しだ。貴族とも会話できて、営業もできるという高級娼婦の中でも並外れたコミュニケーション能力の持ち主だから宝飾品のセールスの役に立つと思ったんだけど・・・まさか、あんな形で逆手に取られてしまうとはね・・・こんなことなら僕とルークだけで参加した方がよかったかもしれないな」

「それは今更言ってもしょうがないでしょう」

「そうだね。でも僕のミスだ。品評会を単なるビジネスの場と捉えて貴族たちの社交の場でもあるということを見逃していたようだ・・・」

2人の会話は重苦しかった。

フローラ商会の宝飾品を売り込むどころか、逆に公衆の面前で成金よばわりされてしまう始末だ。

「気を切り替えていこう、ルーク。とりあえずは品評会の最中に声をかけてきた貴族たち全員に手紙で売り込みをかけていくよ。上手くいけば大口の顧客が見つかるかもしれない」

「はあ、かまいませんけど・・・2か月後に改めて催される品評会はどうするつもりで?エミリーさまと参加できなかったらエスクワイア夫人に悪い意味で目を付けられかねませんよ」

「うん、まあ、それは追々考えるとしようか・・・」

雰囲気を変えようとしつつも肝心な所で歯切れの悪いアレンに対してルークは心の中で改めてあきれ返る。

(契約結婚したっていうことに捕られすぎなんだよ、アレンさまは・・・)

その後しばらく、今後の方針について話し合ったのちにアレンとルークは床に就いた。

品評会での疲れもあって2人はあっという間に眠りに落ちていった。
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