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第32話

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とうとう品評会の日がやってきた。

私とアレン様、そしてルークさんは屋敷を出て国内有数の大都市にやってきた。


巨大な建物にアレン様と並んで入り、長い廊下を進んでいく。

宝飾品が入った大きなカバンを抱えたルークさんが後に続く。

「あ、あああのアレン様、やっぱり緊張します・・・」

「なんだいエミリー、こういうイベントには君の方が慣れてるんじゃないのかい?」

「その、なにぶん貧乏な貴族の家系だったものでこういう華やかな場には不慣れなんです・・・それにこんな格好もなじみがなくて・・・」

今の私はアレン様がデザインした真っ赤なドレスとルビーの宝飾品に身を包んでいる。

普段の私なら絶対に選択しないであろう派手な服装だ。

「大丈夫、よく似合ってるよ。もともと美人なんだし、それに今はこの僕がデザインしたドレスを着てるんだ。もっと自信をもちなよ」

私を励ましてくるアレン様は黒に近いグレーの礼服だ。

礼服にはさりげなくエメラルドの装飾が縫い留められていて、アレン様の落ち着いた理知的な雰囲気と絶妙にマッチしている。

慣れない場所で所在なさげにしている私よりも余程貴族らしい風格だ。

「が、頑張ります・・・」

緊張でドキドキする胸を押さえながら歩いていくと、大きな広間の入り口に差し掛かる。

ちょうど私たちと同じように広間に入ろうとしている男女のペアがいた。

そのうち男性の方を見た私は呼吸が止まるかと思った。

向こうも私に気づいて、足を止めた。

「ラルフ・・・」

「エミリー・・・」

そこにいたのは私との婚約を一方的に破棄したラルフ・ランディだった――いやアレン様から事前に聞いていた話だと、今はラルフ・シエンタだったかしら・・・

品評会の最中に顔を合わせることもあるとは思っていたけど、まさかこんな所で出会ってしまうなんて・・・。


「やあ今晩は、いい夜ですね。ラルフ・シエンタさん、それにレベッカ・シエンタ嬢」

どう対応したものか逡巡する私をかばうようにアレン様が前にでた。

「ええ本当にいい夜ですわね、アレン・ヴェルファイアさん。そういえば風の噂に宝石が思うように手に入っていないと聞きましたけど、今夜の品評会の準備はできてきたのかしら?」

アレン様に張り合うようにラルフの隣にいる令嬢が一歩前に出て皮肉をぶつけてきた。

「ええ、どこぞに宝石を買い占めている不埒な輩がいるようでしてね・・・」

「まあ怖い・・・貴族の身分をお金で買う成金もいますしねえ。気をつけますわぁ」

「・・・そうですね」

負けじと皮肉で返したアレン様がさらなる皮肉を見舞われた。

どうやらレベッカ・シエンタはかなりな口達者らしい。

後ろでじっとしているラルフの様子からして尻に敷かれているのはラルフのほうに見えた。

ちょうどその時、他の参加者の列がやってきて私たちも押されるようにして会場に入った。



私たちは協力してきた用意してきた品を陳列していく

これで準備完了だ。

「ふう、面倒な相手だねえ。ともあれ本番はこれからだ。2人ともよろしく頼むよ?」

「「はい!」」

ルークさんとそろって返事をする。

まもなく品評会が始まった。
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