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寒さ
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フィリアが嫁いできてから半年ほどが過ぎて、秋も終わりに差し掛かったころ唐突な寒波がやってきた。
「こ、これくらいは何ともないんだから・・・」
布団をかぶりながら、歯をガチガチ震わせた。
「フィリア様? いらっしゃいますか?」
(アベル・・・!)
布団を体に巻き付けながら扉を開けると、アベルは青い瞳を見開いた。
「フィリア様!? 顔が真っ青ですよ!」
「え、ええ。ちょっと体が冷えてしまって・・・」
「というか、部屋の中が寒くないですか? まだ廊下の方が温かいですよ」
アベルが心配そうに尋ねてきた。
確かに室内の空気よりも、扉を開けたときに入り込んできた廊下の空気の方が温かい。
どうやらフィリアの部屋は寒気がこもりやすい部屋だったらしい。
その上、暖炉の類も設置されていなかった。
「フィリア様、個室風呂が使えないか確認してきましょうか?」
「・・・そうね、お願いするわ」
宮殿には身分を問わず使える大浴場と、皇帝を始めとする身分の高い者のみが使える1人用の風呂があった。
ただし大浴場は使用時間外で、個室風呂は皇帝でもない限り事前に予約しないと入れない仕組みになっている。
「少々お待ちください、フィリア様」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
15分ほどしてアベルは戻ってきた。
片手には湯気の立つ桶を持っている。
「すみませんフィリア様、個室風呂の担当者に確認してみましたが急にお湯を沸かすことはできないとのことでした」
「いえ、いいわ。気にしないでちょうだい」
「代わりといっては何ですがお湯と布を持ってきましたので、これで体を拭かせていただきたいのですがよろしいですか?」
フィリアはしばし逡巡する。
相手がアベルとは言え、他人に体を触らせるのは躊躇された。しかし冷え切ったフィリアは熱い湯の誘惑に逆らえず、アベルの厚意を受け入れることにした。
「わかったわ、お願いしていいかしら・・・?」
「ええ、わかりましたフィリア様。足元、失礼いたします」
アベルはフィリアをベッドに腰かけさせると、懐から布を取り出して湯にひたすとフィリアの足に触れた。
「んっ・・」
まず足首からつま先までをぬぐうと、続いて足の指を1本ずつ丁寧に、さらに指と指の間もくまなく拭いていった。
ゴシゴシと擦られた場所が熱くなっていく。
それはお湯の熱さのせいだけではなかった。
アベルは布の面を替えてフィリアの衣服の裾をめくり上げると、足首より上に移動していった。
ふくらはぎを拭いあげ、膝をこえたところでアベルの手は止まった。
「もう片足を拭かせていただきますね」
アベルの手は膝のすぐ上の地点で止まるともう片足に移動すると、先ほどと同様にフィリアの足を拭き上げていった。
「フィリア様、お手を拝借してもいいですか?」
「・・・ええ」
フィリアが腕を差し出すと、アベルは布を替えてから足をそうしたようにフィリア自身が触らないような部位まで丁寧にぬぐっていった。
ひざまづいたアベルが無心に手足を拭いてくれている・・・その光景にフィリアはゴクリと唾をのみこんだ。
不可解な陶酔感にフィリアの意識がのぼせていく。
「ふう、終わりました。どうですフィリア様、多少は温まったでしょうか?」
「ええ・・・本当にありがとう」
真っ白だったフィリアの手足に血色が戻っていた。
間もなくアベルは任務があるということで去っていった。
1人残されたフィリアはアベルが拭いてくれた場所を指でなぞる。
布越しに感じたアベルの掌の感触を思い出すだけで頬が熱くなる。
単なる他人に触れられた羞恥というには、その感情は熱すぎた。
「ああ・・・私・・・」
フィリアの口から湿った声が漏れる。
「・・・私・・・アベルのことが好きなんだわ」
たった1人で嫁がされた先で出会った、心からの優しさをくれた相手。
禁じられた想いを自覚したフィリアは布団をかぶさり悶絶した。
後日、フィリアの部屋に暖房器具が設置されたが、どれだけ薪をくべてもアベルが手足を拭ってくれたとき以上に体が熱くなることはなかった。
「こ、これくらいは何ともないんだから・・・」
布団をかぶりながら、歯をガチガチ震わせた。
「フィリア様? いらっしゃいますか?」
(アベル・・・!)
布団を体に巻き付けながら扉を開けると、アベルは青い瞳を見開いた。
「フィリア様!? 顔が真っ青ですよ!」
「え、ええ。ちょっと体が冷えてしまって・・・」
「というか、部屋の中が寒くないですか? まだ廊下の方が温かいですよ」
アベルが心配そうに尋ねてきた。
確かに室内の空気よりも、扉を開けたときに入り込んできた廊下の空気の方が温かい。
どうやらフィリアの部屋は寒気がこもりやすい部屋だったらしい。
その上、暖炉の類も設置されていなかった。
「フィリア様、個室風呂が使えないか確認してきましょうか?」
「・・・そうね、お願いするわ」
宮殿には身分を問わず使える大浴場と、皇帝を始めとする身分の高い者のみが使える1人用の風呂があった。
ただし大浴場は使用時間外で、個室風呂は皇帝でもない限り事前に予約しないと入れない仕組みになっている。
「少々お待ちください、フィリア様」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
15分ほどしてアベルは戻ってきた。
片手には湯気の立つ桶を持っている。
「すみませんフィリア様、個室風呂の担当者に確認してみましたが急にお湯を沸かすことはできないとのことでした」
「いえ、いいわ。気にしないでちょうだい」
「代わりといっては何ですがお湯と布を持ってきましたので、これで体を拭かせていただきたいのですがよろしいですか?」
フィリアはしばし逡巡する。
相手がアベルとは言え、他人に体を触らせるのは躊躇された。しかし冷え切ったフィリアは熱い湯の誘惑に逆らえず、アベルの厚意を受け入れることにした。
「わかったわ、お願いしていいかしら・・・?」
「ええ、わかりましたフィリア様。足元、失礼いたします」
アベルはフィリアをベッドに腰かけさせると、懐から布を取り出して湯にひたすとフィリアの足に触れた。
「んっ・・」
まず足首からつま先までをぬぐうと、続いて足の指を1本ずつ丁寧に、さらに指と指の間もくまなく拭いていった。
ゴシゴシと擦られた場所が熱くなっていく。
それはお湯の熱さのせいだけではなかった。
アベルは布の面を替えてフィリアの衣服の裾をめくり上げると、足首より上に移動していった。
ふくらはぎを拭いあげ、膝をこえたところでアベルの手は止まった。
「もう片足を拭かせていただきますね」
アベルの手は膝のすぐ上の地点で止まるともう片足に移動すると、先ほどと同様にフィリアの足を拭き上げていった。
「フィリア様、お手を拝借してもいいですか?」
「・・・ええ」
フィリアが腕を差し出すと、アベルは布を替えてから足をそうしたようにフィリア自身が触らないような部位まで丁寧にぬぐっていった。
ひざまづいたアベルが無心に手足を拭いてくれている・・・その光景にフィリアはゴクリと唾をのみこんだ。
不可解な陶酔感にフィリアの意識がのぼせていく。
「ふう、終わりました。どうですフィリア様、多少は温まったでしょうか?」
「ええ・・・本当にありがとう」
真っ白だったフィリアの手足に血色が戻っていた。
間もなくアベルは任務があるということで去っていった。
1人残されたフィリアはアベルが拭いてくれた場所を指でなぞる。
布越しに感じたアベルの掌の感触を思い出すだけで頬が熱くなる。
単なる他人に触れられた羞恥というには、その感情は熱すぎた。
「ああ・・・私・・・」
フィリアの口から湿った声が漏れる。
「・・・私・・・アベルのことが好きなんだわ」
たった1人で嫁がされた先で出会った、心からの優しさをくれた相手。
禁じられた想いを自覚したフィリアは布団をかぶさり悶絶した。
後日、フィリアの部屋に暖房器具が設置されたが、どれだけ薪をくべてもアベルが手足を拭ってくれたとき以上に体が熱くなることはなかった。
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