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四月篇

第22話  橋岡夏海【はしおかなつみ】という女の子

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 春課題のテストが終わった次の日——

「ねえ、ねえ、唯ちゃん! テストの結果、どうだった⁉」

 と、唯の名前を呼ぶ人物がいた。

「夏海さん、どうしたんですか?」

 と、唯は後ろを振り返った。

 そこにはセミロングの女子がいた。

 身長は唯と同じくらいである。

 名前は橋岡夏海。同じクラスの生徒であり、電車通の生徒の一人である。

 彼女もまた、唯と同じ町の出身であり、中学校も違い、最寄り駅も一駅違う。

 三姉妹にとって、高校に進学して、初めての友達である。

「テスト、あまり点数取れなかったんだよね。ほら、見て! この点数だよ!」

 と、夏海が三教科の解答用紙を唯に見せる。

 国語・六十点、数学・七十三点、英語六十八点——

 これを見た唯は、どう返事を返せばいいのか迷う。

「うーん、この点数なら、まだ、いい方じゃないかな?」

「そうかなぁ? 高校だと、レベルが上がるんだよね。ううぅ……。どうしよう」

 夏海は、自分の解答用紙を見ながら落ち込んでいると、夏海の机の上に置かれた解答用紙に目が留まる。

「唯ちゃんのも見せて!」

 と、不意打ちで、唯から解答用紙を奪い取る。

「あ、夏海さん!」

 夏海に奪われて、取り返そうとする唯。

 夏海が、唯のテストの結果を見ると、驚愕する。

「なっ⁉」

 夏海の心がへし折られる。

 国語九十六点・数学・百点・英語九十七点——

 全てが、自分よりも成績がいい。

「この裏切り者~!」

「えっ? どうしたのですか? 夏海さん⁉」

 唯は、涙目になっている夏海に驚いた。

「なんで、ここまでの点数が取れるの⁉」

 と、夏海に言い寄られる。

「な、なんでと言われましても……。勉強していましたから……」

「勉強かぁ……。私苦手なんだよね……」

 夏海は、ガックリとくる。

「大丈夫です。夏海さん! 人間、諦めずにコツコツと勉強すれば、成績がきっと上がりますよ!」

 唯は、夏海を励ます。

「それは、私に対する嫌がらせかぁあああああ!」

 夏海は、本当のことを言われ、唯に抱きついた。
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