ワイズマンと賢者のいし

刀根光太郎

文字の大きさ
上 下
12 / 48
入試試験

12

しおりを挟む
 試験当日、アールック学園の門前に来ていた。緊張と興奮の混じった様子で一歩を踏み出す。

 少し歩いたところに巨大な二つの銅像があった。遥か遠くを指をさしていて、高貴な衣服を身に着けている男の銅像と、後ろで威厳に満ち、腕組をしていて高価なローブを身に付けた銅像。リルは無意識に口を開けていた。それを見て感激していた。

(道のど真ん中に……邪魔だなこの変な銅像……)

 銅像を通り過ぎ、玄関。そして、室内へと足を進めていく。巨大な二つの肖像画があった。どちらも赤い髪と赤い瞳の美男だった。

『不自然な程でかいな……歴代学園長か』

(『ええ! 知らないの! アルム様とルクス様だよ! ……ってあれ?』)

『俺か……? どっちも似てな……ルクスとかもっとアホっぽい感じだぞ』

 リルは人が多いところでは話さずに会話できるよう魔法を教えた。

(『違うよ! ルクス様は品行方正。魔導を同時に武をも究め、知性に溢れる完璧超人! アルム様に勝らないとも劣るお方で!』)


(……嗚呼。送った記憶はルクスと会って間もない頃で気が付いてないのか。名前で呼んでないし、弟子とも呼んでない時期か)

『そもそも髪の色が違う。ルクスの髪と瞳の色はリルと同じだ』

(え……? で、でもお父様とお母様は赤ー……)

『隔世遺伝だろうな。ずっと前に送った情報。あのドジな男がルクスだ』

 リルは十秒ほど固まっていた。悲しい時に元気づけられたあの記憶がよみがえる。

(『わ、わー。ル、ルクス様はやっぱりかっこいいなー』)

『嘘つけ……』


 最初の試験。筆記試験を受けるために教室に入る。自分の番号の席に座った。しばらくして辺りがざわざわと騒がしくなった。

「おい、あれ……」

「ああ……カリオストロ候のご令嬢……」

「クソ! 何で推薦じゃないんだよっ……合格枠が減るじゃねぇか!」


 皆が見ている方を見ると、金髪で赤い瞳を持つ少女がいた。リルはワイズマン家の八女だが、パーティー等に連れて行ってもらった事は無いので面識はない。両親は優しかったものの、黒い髪を気にしていたからだ。

 それでも彼女の事は知っていた。幼き天才魔導師とたたえられた少女、ノラ・カリオストロ。そんな事を思い出していると目が合った。少し怖かったので、リルは思わず眼を反らした。


しおりを挟む

処理中です...