ワイズマンと賢者のいし

刀根光太郎

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個人戦

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 待機席に戻るとロロとフィンリーが喜んでいた。ノラは試合が丁度終わったところだった。既に二戦目らしい。アイナがリルの太ももを枕にする。個人戦に出なくても出席点が貰えるので、眠くても頑張ってきたようだ。


 フィンリーの名前が表示された。舞台に上がると試合が開始される。黒クラスの男子と戦う。

「おいおい、女かと思ったら男かよ。こんな弱そうなのが白クラスなのか? 運が良いぜ!」

 フィンリーはかなり緊張し、耳に入ってないようだ。マグナ先生のアドバイスを思い出す。試合の最初は緊張して、力加減を間違えやすい。少し近くに試し打ちをしろ、と。

 開始の合図がなるとリングを相手の近くに投げた。

「はっ。何処に投げて」

 次の瞬間、小さな石が高速落下し地面に深い穴を開けた。風圧で彼は吹き飛ばされる。

「はぁ?」

 舞台に落ちるが勢いが止まらずに転がり続ける。ギリギリ場外には落ちなかった。

「先生の言った通りだ。一回肩の力を抜かないと。力の調整が出来る。僕なら出来る。練習の通りに出来る」

「ぁ……うそ、だろ……」

 男子はアレに当たった自分の姿を想像してしまう。そして、彼は不思議な力により場外に落ちた。

「うわー!! 境界線の魔力余波が!!」

「え??」

 勝者はフィンリーと表示された。彼は観客席のリルたちの方を見て、何度も小さく跳んで喜びを表現していた。フィンリーが戻るとロロも試合を終えていた。同じクラスの男子と戦い勝った。

 試合を何度も終える。リルは今のところ全勝。ロロは一敗。フィンリーは不戦勝。

 そんな時、ノラとフィンリーの名前が表示された。マグナ先生はフィンリーに言う。緊張してようがいまいが、最初から当てても良いと。二人は向かい合い待っていると、試合開始の合図が鳴る。


 リングを自分の手前に投げる。命中率は落ちる。これは発生の速度を優先した。入試試験の時はこれで外し、黒判定を貰った。

 しかし、今回はしっかりとノラへと向かう。撃ったのはいいが、フィンリーはノラが防ぎきれないかもと、ふと考えた。

 彼女は金属の礫を連続で五つ放つ。さらに地の魔法で分厚い壁を作った。星の魔法の礫はそれを全て砕いて突き進む。しかし、威力が弱まった魔法を槍で弾く。

 フィンリーは何が起こったのかは見えなかったが、上空を向いた。魔力を感じ取ったからだ。槍が帯電していた。防ぎきれないかもというのは杞憂だった。彼女はそれを振り下ろし、雷を飛ばす。

「あわわ!! まずい!」

 彼はリングを前に出して回転させる。雷は魔防壁で何とか防いだ。そのまま二発目の石を飛ばそうと魔力を溜める。

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