オルビネティラの空~滅びかけた大地。人々は再び上昇する~

刀根光太郎

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第二章 十二王家の目覚め

23話 空の戦い

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 南に飛んでいると飛竜が五体確認出来た。テオは直ぐに気が付いた。一体の飛竜を見るや否や「あれなら余の力に堪えられそうだ。あれを貰う」と言って、加速し、一人で前に飛び出した。

 飛竜は口から炎のブレスを吐いていたので、テオも火を放出して対抗する。飛竜もそれに驚き、対抗意識を燃やしたのか、次々と攻撃を繰り出す。まるで炎で絵を描く様に宙を舞う。そんな不思議な光景になっていた。



「うおぉぉぉぉお! 肉弾戦が出来るのはアルフィーだけじゃねぇんだよッ!」

 クライヴも不思議な光景を作り出していた。グリフォンで加速し、飛び降りると殴る。飛竜もわざわざ体当たりで対抗する。クライヴが落ちるとグリフォンが拾い、再び接近していた。それを延々と繰り返す。

(まさか怪鳥の戦いを参考にしてるんじゃ……でも空中でそれをやるのは恐れ入った)


 ロイクと戦っている飛竜は素早かった。凄まじい速度で空を駆け抜ける。彼のグリフォンもとても速かった。

(風精霊の恩恵があるグリフォンよりも速いのが居る何て……)

 ロイクは雷の魔法を放出する形を取っていた。魔素の消費はともかくとして、恐らくはそれが一番最速な方法なのだろう。

 時折、短剣を飛ばし、それに自分を引き寄せるといった戦法で飛竜をかく乱する。



 エルナとディアナは共闘で、飛竜と戦っていた。見事なコンビネーションである。

 ロイクが意外にもアクロバットな戦いをしているのに対して、エルナたちは狩りに近い堅実的な動きであった。現に飛竜の方が焦っている様に見える。

(エルナが一人だと今のロイクさんよりの動きになるけど、二人の時は違うのか……)



 一番苦戦しているのは意外にもユイであった。原因は恐らく足場が無い。グリフォンでは彼女の凄まじい脚力に堪えれないのである。それゆえ、かなり加減して攻撃している。

 体の回転や落下、クライヴの様にグリフォンの加速を利用して無理やり威力を底上げしているようだが、やはり何時もの彼女を見ていると見劣りする。

(ここはユイさんを補助する)



 接近に気が付いたユイは不満そうな顔を見せる。

「私頼りないカ?」

(……むしろ緊急時に毎回連れて来るぐらいに信頼している)

「ユイさんと共闘するのが一番面白そうだったので。こっちに来ました。勉強させてください」

「オオ! 血が騒ぐてやつネ」


 エルナたちの戦いを見るに、鱗の様な皮膚はかなり硬いらしい。剣や槍でもほぼ傷を付けれていない。剣を使っても大丈夫なのを確認する。アルフィーとユイは接近戦を仕掛ける。

 ユイは少し高い位置から回転し、足を叩きつけるように振り下ろす。まだまだ飛竜はピンピンしている。間入れず、すれ違うざまに腹部を目掛けて剣での一撃を入れる。

 少しバランスを崩したが一瞬で、すぐに立て直した。大きなダメージは与えていないように感じる。飛竜は態勢を整えているユイを狙う。

(ユイさんの方がダメージが大きいのか。攻撃の際、グリフォンと分離している隙を付いているのか)

 騎乗した状態だとかなり接触しなければならない。グリフォンが戦闘不能になればなす術がないので、ユイはその辺も考えている。

 どちらにせよ自分を見て無いのならと。アルフィーは竜の後頭部に剣を振り下ろし、思いっ切り強打する。気絶は無理だったが、結構効いたのか怒って向かって来た。


 アルフィーが逃げ回っていると、真正面から態勢を立て直したユイが向かって来た。すれ違いざまにグリフォンから下りると、両手でそれぞれ拳を二つ作り、飛竜の鼻を目掛けてそれを振り下ろした。大きな唸り声が響いた。

 同時に、激痛に耐えながらもその爪を振り下ろす。ユイの腹部に爪が創が刻まれる。

「ユイさん!」

 グリフォンに拾われる。服は破れていた。そこから腹部の深い傷が露になった。
傷から血が滴り落ちる。

「だ、大丈夫ネ……」

 その表情からは余裕が無い。すぐにでも治療に行きたいが、現状では無理だ。そんな事をしていると殺されてしまう。

 ユイの動きが鈍った事で、徐々に防戦に追い込まれる。飛竜は弱ったユイを執拗に狙う。背後から攻撃を仕掛けるが、鋭い尻尾でグリフォンごと攻撃を貰ってしまう。

(くっ……焦りすぎた)

 致命傷は避けているものの、ダメージが蓄積して言っている。風精霊の恩恵があるとはいえ、グリフォンの体力も限界が近い。周りを見ているが、同じく苦戦を強いられている。

(……撤退か……それとも……)


 アルフィーに決断が迫られる。


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