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第六章 受付嬢ナディアの災難
第8話 ナディアの不幸。序章~
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【人が少ない時間帯・ギルド】
皆が依頼に行ってギルド内にはほとんど人が居ない。そんな時を狙ってナディアに絡みに行く男達は多数いる。ナディアの同僚はまたかと思いながらも何時もの光景なので驚かない。この時間帯には色々とやっておきたい業務があるのでナディアは適当にあしらう。
業務が片付いて、受付も静かになり、一息した所で同僚がある男について話し出した。
「そう言えば、今日クロウ君いないね」
「その辺で買い物してますよ。欲しいのがあるらしいです」
「ほぇ~。クロウ君の事なら何でも知ってるってか?」
「そうじゃありません! 勝手に言って来たんですよ!」
「へ~、報告制か。浮気は許さないとぉ~……絶対的な意思を感じるぅー……」
同僚が芝居がかった口調でからかうとナディアが少し怒った感じになっていた。
「いい加減にしないと怒りますよ!」
「ッ……冗談だって~」
「もぉう!」
そこで、同僚は前から聞きたかった事を問う。
「クロウ君って、なんでナディアにだけは『さん』を付けるの?」
「え? コールさんも、私にさんを付けて来ますよ?」
「違うって。クロウ君の話。ナディアにだけだよ」
「ん~。そう言われましても……」
「あら、知らないんだ。まだまだね」
「私はそういうのじゃありませんっ!」
【災難は突然に】
そんな会話をしているとギルドの扉が開いた。ザワザワと周りが騒いでいる。
「誰だっけ?」
「さあ?」
普段ならただ入って来ただけなら気にしないのだが、その男は雰囲気が違った。高価な衣服と装飾品を纏い、堂々とした態度。その周りには数人のボディーガードらしき男達。明らかに貴族だ。
しかし、そんな人物が何故こんな所にそれが来たのか。それがギルドで周りが騒いでいる原因だ。
扉の近くで仕事をしていた職員の女性を手で押しのけて歩いて来る。受け身が取れずにテーブルにぶつかり、頭から血を流す女性。それを近くにいた人たちが治療をする。誰かが叫んだ。
「おい! 何やってんだあんた!」
「……ああ?」
押しのけた男が叫んだ男を睨んだ。彼の取り巻きの男達も戦闘態勢に入る。
「あ、いや……その……」
その男は大人しく下がった。
「何も無いなら話かけてんじゃねぇ! 俺の時間を無駄にしやがってッ」
男はそう言いながら奥の方へ入って行く。そして、ナディアの所に来た。
「ナディアだな」
「え……はい。そうですが……ギルドにどの様なご用件ですか?」
「先日、お前が歩いているのを見かけた。その時に気に入ってな」
「は、はぁ……」
「鈍い女だ……俺が話しかけてやってるのにな……田舎出か?」
「ぇ……ま、まあ……そうですが……」
「ふん! 喜べ。お前を俺の女にしてやる」
「い、いえ……私はっ……そういうのはちょっと……」
同僚が立ち上がり、男に強い声で。しかし、丁寧に言う。
「申し訳ございませんが、その様なご用件はお断りしております……お引き取り下さい」
「ああッ?」
同僚はその眼光に思わず後ずさりをしていまう。
「俺を誰だと思っている!? かの五賢人の息子、スクルタ・スピーナだぞ!」
「「「……ッ」」」
一同はそれを聞いて、不味いといった表情をした。国の最高峰の役職についている者のご子息。
「俺がその気になればこのギルドなど簡単に潰す事も可能だっ。逆らう奴は皆どうなるか分かってるんだろうな……?」
ナディアがそれを聞いて動揺していた。
「そ、そんな……」
「なら……どうすれば良いか……分かるだろ?」
「ッ……」
「明日、もっと綺麗な服を着て来い。デートしてやる」
そう言い残して彼は去って行った。嵐が過ぎ去ったかの様に静まり返る。
「ナディアっ……行くこと無いって……私は大丈夫だからっ」
「……いえ……ただのデートですよ……大丈夫です。それに皆にご迷惑をおかけする訳には……」
本当ならそれを止めたい者達は大勢いた。しかし、あれはやばい。あの男は確実にさっき言ったそれをやってのける。
「す、すまねぇ……ナディアちゃん……」
「い、良いんですよ……あれは私の問題ですので……どうか、お気になさらないでください」
彼女は満面の笑みでそう返した。それを見せつけられた彼等は心に痛みを感じた。だが、その苦痛を自身で広げる。彼等はそうする事でしか謝る事が出来なかった……。
皆が依頼に行ってギルド内にはほとんど人が居ない。そんな時を狙ってナディアに絡みに行く男達は多数いる。ナディアの同僚はまたかと思いながらも何時もの光景なので驚かない。この時間帯には色々とやっておきたい業務があるのでナディアは適当にあしらう。
業務が片付いて、受付も静かになり、一息した所で同僚がある男について話し出した。
「そう言えば、今日クロウ君いないね」
「その辺で買い物してますよ。欲しいのがあるらしいです」
「ほぇ~。クロウ君の事なら何でも知ってるってか?」
「そうじゃありません! 勝手に言って来たんですよ!」
「へ~、報告制か。浮気は許さないとぉ~……絶対的な意思を感じるぅー……」
同僚が芝居がかった口調でからかうとナディアが少し怒った感じになっていた。
「いい加減にしないと怒りますよ!」
「ッ……冗談だって~」
「もぉう!」
そこで、同僚は前から聞きたかった事を問う。
「クロウ君って、なんでナディアにだけは『さん』を付けるの?」
「え? コールさんも、私にさんを付けて来ますよ?」
「違うって。クロウ君の話。ナディアにだけだよ」
「ん~。そう言われましても……」
「あら、知らないんだ。まだまだね」
「私はそういうのじゃありませんっ!」
【災難は突然に】
そんな会話をしているとギルドの扉が開いた。ザワザワと周りが騒いでいる。
「誰だっけ?」
「さあ?」
普段ならただ入って来ただけなら気にしないのだが、その男は雰囲気が違った。高価な衣服と装飾品を纏い、堂々とした態度。その周りには数人のボディーガードらしき男達。明らかに貴族だ。
しかし、そんな人物が何故こんな所にそれが来たのか。それがギルドで周りが騒いでいる原因だ。
扉の近くで仕事をしていた職員の女性を手で押しのけて歩いて来る。受け身が取れずにテーブルにぶつかり、頭から血を流す女性。それを近くにいた人たちが治療をする。誰かが叫んだ。
「おい! 何やってんだあんた!」
「……ああ?」
押しのけた男が叫んだ男を睨んだ。彼の取り巻きの男達も戦闘態勢に入る。
「あ、いや……その……」
その男は大人しく下がった。
「何も無いなら話かけてんじゃねぇ! 俺の時間を無駄にしやがってッ」
男はそう言いながら奥の方へ入って行く。そして、ナディアの所に来た。
「ナディアだな」
「え……はい。そうですが……ギルドにどの様なご用件ですか?」
「先日、お前が歩いているのを見かけた。その時に気に入ってな」
「は、はぁ……」
「鈍い女だ……俺が話しかけてやってるのにな……田舎出か?」
「ぇ……ま、まあ……そうですが……」
「ふん! 喜べ。お前を俺の女にしてやる」
「い、いえ……私はっ……そういうのはちょっと……」
同僚が立ち上がり、男に強い声で。しかし、丁寧に言う。
「申し訳ございませんが、その様なご用件はお断りしております……お引き取り下さい」
「ああッ?」
同僚はその眼光に思わず後ずさりをしていまう。
「俺を誰だと思っている!? かの五賢人の息子、スクルタ・スピーナだぞ!」
「「「……ッ」」」
一同はそれを聞いて、不味いといった表情をした。国の最高峰の役職についている者のご子息。
「俺がその気になればこのギルドなど簡単に潰す事も可能だっ。逆らう奴は皆どうなるか分かってるんだろうな……?」
ナディアがそれを聞いて動揺していた。
「そ、そんな……」
「なら……どうすれば良いか……分かるだろ?」
「ッ……」
「明日、もっと綺麗な服を着て来い。デートしてやる」
そう言い残して彼は去って行った。嵐が過ぎ去ったかの様に静まり返る。
「ナディアっ……行くこと無いって……私は大丈夫だからっ」
「……いえ……ただのデートですよ……大丈夫です。それに皆にご迷惑をおかけする訳には……」
本当ならそれを止めたい者達は大勢いた。しかし、あれはやばい。あの男は確実にさっき言ったそれをやってのける。
「す、すまねぇ……ナディアちゃん……」
「い、良いんですよ……あれは私の問題ですので……どうか、お気になさらないでください」
彼女は満面の笑みでそう返した。それを見せつけられた彼等は心に痛みを感じた。だが、その苦痛を自身で広げる。彼等はそうする事でしか謝る事が出来なかった……。
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