3 / 6
第1章 一学期
迷い猫?
しおりを挟む
HR時間前の教室で、席に座る真緒の周辺に四人の女子が集まっていた。
「真緒っち、絶対吹奏楽部が良いって!皆んなと奏でる一体感は気持ちいいよ!」
そばかすがチャームポイントで、髪をお下げ髪にした彼女は中学校からの友達、水上 流菜。中学から続けている吹奏楽部を高校でも始めるらしい。愛称はルーナ。
「いやいや、真緒は身体動かさなきゃ駄目でしょ!?ただでさえのんびり屋なんだから。私とダンス部に入ろうよ。いい汗かいてスッキリしよう?」
短髪でボーイッシュな彼女も中学校からの友達で、スポーツが得意な及川 操。華麗にダンスのポーズを見せる。愛称はミサミサ。
「ダメダメね、二人共。真緒は昔から本の虫だよ?静かに集中することが好きなんだから、入るなら断然、将棋同好会がオススメだよ」
肩まで届くストレートヘアの彼女は、小学校時代からの友人の弓指 弘美。何時も落ち着いた口調で話した後は、眼鏡をクイっと軽く調整する癖がある。愛称はサッシー。
「結局のところ、真緒自体がやりたい部活は無いの?ハッキリ言っとかないと、中学の時みたいに掛け持ちになっちゃうよ?」
隣の席の机の上で、消しゴムをクルクルと回す彼女は一番の幼馴染の友人で、家も割と近い。今朝は彼女とのバスの待ち合わせの時間にギリギリだった。
彼女の名は郡司 茜。いつも真緒のことを気にかけてくれる姉さん的親友だ。愛称はアカネ。
「う~ん、やりたいというか、気になる部活なら、有るには有るんだけど…」
四人全員が、何なのと詰め寄る。妙な圧力を感じて真緒は少したじろぐ。
「写真部…」
「「「「却下ね」」」」
答えた途端に四人全員にハモって否定された。
「え~~っ?!何で駄目なの~?」
「だって写真部と言えば…ってチャイムだ!この話は後ね」
チャイムの音が鳴り、アカネを除く三人は自分達のクラスに戻って行った。
「ねぇ、アカネちゃん。写真部に何か問題あるの?」
隣の席のアカネに気になって話しかけるが、担任の先生が入って来たので、アカネは軽く首を振り、後でとジェスチャーで返してきた。真緒は仕方なく断念する。
一時限目の現国の授業が終わって、アカネと二人で隣のクラスの三人に会いに行く。ところがどうやら実習棟での授業だったらしく誰も居ない。
「誰も居ないね。それにしても、皆んなが写真部を駄目って言う理由が分からないなぁ」
「真緒はどうして写真部に興味を持ったの?」
「部活案内掲示板に貼り出されている写真がどれも凄く綺麗だったの。私もこんな風に撮りたいなぁって思ったんだ」
アカネはぁ~と納得するように頷いたが、軽く溜め息をついて真緒の肩にポンと手を乗せる。
「駄目な理由はそこじゃ無いんだよ。写真部の部員は今までに…」
諭す様に真緒を説得するアカネの足元を黒い物体が通り抜けた。
アカネはキャッ!っと悲鳴を上げて飛び上がる。そこへ一人の男子生徒が走って来た。
痩せ型の体型で髪形も真ん中分け。眼鏡をかけて少し出っ歯なその男子生徒は手に一眼レフのカメラを持っている。
「おい、そこの君達!今ここに猫が走って来なかったかい?これくらいの黒猫なんだけど」
「あ、あっちに行ったと思います」
物体が走り去った方角を指差す。既に廊下にはその姿は見えない。彼は完全に見失ったことに悔しそうにしている。
「あの猫、化け猫なんだ。校門前で見かけてさ。そのまま追いかけて来たんだけど」
「化け猫…」
「ほ、ほら!尻尾が二本生えてるだろ?」
アカネの疑う眼差しに彼はカメラのディスプレイを見せて来た。
真緒とアカネはその静止画を覗き込む。しかし、確かに二本に見えなくも無いが、ブレて写った様にも見える。
アカネが更に疑う様な眼差しで見た。
「と、とにかく!君達も見かけたら写真部に連絡してくれないか?僕は二年の山田っていうんだ。よろしく頼むよ?」
一方的にそう言うと、山田と名乗った彼は猫の後を追って逃げる様に走って行った。
「ね?あんな奴ばっかりでさ。街中で手当たり次第に写真を撮って、苦情が出て警察に覗きと疑われて補導された人も居るらしいよ?」
「うん、やっぱり止めとく」
真緒はあんな先輩とかは嫌だなと正直に思い、違う部活を探すことに決めた。
「そろそろ教室に戻ろう?」
「うん、ルーナ達は違う時間に会うことにしよう」
ミャオ。
教室に入る時に、猫の鳴き声が聞こえた気がして廊下を見ると、カメラのディスプレイに写っていた黒猫が廊下の曲がり角からこちらを見ている。
(あれ?あの猫、ウチの玄関でたまに見る野良猫に似ている?)
「真緒、早く準備しないと、先生来るよ」
中からアカネの声が聞こえて、真緒は気になりながらも教室へと入った。
机に座って、次の授業の準備をする。
(ひょっとして、迷って学校まで来たのかな?バスで来る距離だし、そんな訳無いか。きっと似てるだけね。それにしても、アカネちゃんは気付いていなかったけど、確かに二本あったなぁ…尻尾)
真緒はぼうっとそんな事を考えていたら、隣の席からアカネが小声で呼ぶ。
「真緒!起立だよ!?」
見れば生徒全員起立していて、慌てて起立する。ジッと、数学の竹下先生に軽く睨まれてしまった。
(はぁ…考えるの後にしよう)
着席を終えると、真緒は授業に気持ちを切り替えて集中するのだった。
「真緒っち、絶対吹奏楽部が良いって!皆んなと奏でる一体感は気持ちいいよ!」
そばかすがチャームポイントで、髪をお下げ髪にした彼女は中学校からの友達、水上 流菜。中学から続けている吹奏楽部を高校でも始めるらしい。愛称はルーナ。
「いやいや、真緒は身体動かさなきゃ駄目でしょ!?ただでさえのんびり屋なんだから。私とダンス部に入ろうよ。いい汗かいてスッキリしよう?」
短髪でボーイッシュな彼女も中学校からの友達で、スポーツが得意な及川 操。華麗にダンスのポーズを見せる。愛称はミサミサ。
「ダメダメね、二人共。真緒は昔から本の虫だよ?静かに集中することが好きなんだから、入るなら断然、将棋同好会がオススメだよ」
肩まで届くストレートヘアの彼女は、小学校時代からの友人の弓指 弘美。何時も落ち着いた口調で話した後は、眼鏡をクイっと軽く調整する癖がある。愛称はサッシー。
「結局のところ、真緒自体がやりたい部活は無いの?ハッキリ言っとかないと、中学の時みたいに掛け持ちになっちゃうよ?」
隣の席の机の上で、消しゴムをクルクルと回す彼女は一番の幼馴染の友人で、家も割と近い。今朝は彼女とのバスの待ち合わせの時間にギリギリだった。
彼女の名は郡司 茜。いつも真緒のことを気にかけてくれる姉さん的親友だ。愛称はアカネ。
「う~ん、やりたいというか、気になる部活なら、有るには有るんだけど…」
四人全員が、何なのと詰め寄る。妙な圧力を感じて真緒は少したじろぐ。
「写真部…」
「「「「却下ね」」」」
答えた途端に四人全員にハモって否定された。
「え~~っ?!何で駄目なの~?」
「だって写真部と言えば…ってチャイムだ!この話は後ね」
チャイムの音が鳴り、アカネを除く三人は自分達のクラスに戻って行った。
「ねぇ、アカネちゃん。写真部に何か問題あるの?」
隣の席のアカネに気になって話しかけるが、担任の先生が入って来たので、アカネは軽く首を振り、後でとジェスチャーで返してきた。真緒は仕方なく断念する。
一時限目の現国の授業が終わって、アカネと二人で隣のクラスの三人に会いに行く。ところがどうやら実習棟での授業だったらしく誰も居ない。
「誰も居ないね。それにしても、皆んなが写真部を駄目って言う理由が分からないなぁ」
「真緒はどうして写真部に興味を持ったの?」
「部活案内掲示板に貼り出されている写真がどれも凄く綺麗だったの。私もこんな風に撮りたいなぁって思ったんだ」
アカネはぁ~と納得するように頷いたが、軽く溜め息をついて真緒の肩にポンと手を乗せる。
「駄目な理由はそこじゃ無いんだよ。写真部の部員は今までに…」
諭す様に真緒を説得するアカネの足元を黒い物体が通り抜けた。
アカネはキャッ!っと悲鳴を上げて飛び上がる。そこへ一人の男子生徒が走って来た。
痩せ型の体型で髪形も真ん中分け。眼鏡をかけて少し出っ歯なその男子生徒は手に一眼レフのカメラを持っている。
「おい、そこの君達!今ここに猫が走って来なかったかい?これくらいの黒猫なんだけど」
「あ、あっちに行ったと思います」
物体が走り去った方角を指差す。既に廊下にはその姿は見えない。彼は完全に見失ったことに悔しそうにしている。
「あの猫、化け猫なんだ。校門前で見かけてさ。そのまま追いかけて来たんだけど」
「化け猫…」
「ほ、ほら!尻尾が二本生えてるだろ?」
アカネの疑う眼差しに彼はカメラのディスプレイを見せて来た。
真緒とアカネはその静止画を覗き込む。しかし、確かに二本に見えなくも無いが、ブレて写った様にも見える。
アカネが更に疑う様な眼差しで見た。
「と、とにかく!君達も見かけたら写真部に連絡してくれないか?僕は二年の山田っていうんだ。よろしく頼むよ?」
一方的にそう言うと、山田と名乗った彼は猫の後を追って逃げる様に走って行った。
「ね?あんな奴ばっかりでさ。街中で手当たり次第に写真を撮って、苦情が出て警察に覗きと疑われて補導された人も居るらしいよ?」
「うん、やっぱり止めとく」
真緒はあんな先輩とかは嫌だなと正直に思い、違う部活を探すことに決めた。
「そろそろ教室に戻ろう?」
「うん、ルーナ達は違う時間に会うことにしよう」
ミャオ。
教室に入る時に、猫の鳴き声が聞こえた気がして廊下を見ると、カメラのディスプレイに写っていた黒猫が廊下の曲がり角からこちらを見ている。
(あれ?あの猫、ウチの玄関でたまに見る野良猫に似ている?)
「真緒、早く準備しないと、先生来るよ」
中からアカネの声が聞こえて、真緒は気になりながらも教室へと入った。
机に座って、次の授業の準備をする。
(ひょっとして、迷って学校まで来たのかな?バスで来る距離だし、そんな訳無いか。きっと似てるだけね。それにしても、アカネちゃんは気付いていなかったけど、確かに二本あったなぁ…尻尾)
真緒はぼうっとそんな事を考えていたら、隣の席からアカネが小声で呼ぶ。
「真緒!起立だよ!?」
見れば生徒全員起立していて、慌てて起立する。ジッと、数学の竹下先生に軽く睨まれてしまった。
(はぁ…考えるの後にしよう)
着席を終えると、真緒は授業に気持ちを切り替えて集中するのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる