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第1章 それは自業自得だろ?
餌場
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飛び降りたアッシュは、落下というよりは、体重が軽く風の抵抗が強い為にやや浮遊し流されていた。
音の反響による感知が難しい今、落下地点がどんな場所かすらも分からない上に、タイミングを合わせた無事な着地は不可能だろう。
だがイメージ的に、地面が草地なら虫系統は落下によるダメージは大して無いように見えた気がする。
風が当たる腹側が、地面に向いているのだと想定して足を広げた。
その矢先、前足が何かに当たり、体が回転して地表に背中を叩きつけられた。
(い、痛い?いや、思ったより大して痛くないな。良かった。やはり葉がクッションになったのか?)
地に足が着いた事で、反響を利用した感知が再び可能となった。
最初に居た場所と違い、辺りは若い草が茂る草地のようだ。
まぁ、小さなこの体ではあまりにも世界が広大で、何処かすらも分かりはしないが。
(ともかく、先ずは腹ごしらえだな)
センパイの話だと、視界が無いに等しいこのダニの体でも、お仲間は体温感知で食事場を見つけているらしいからな。
ただ、俺にはその感知に必要な体毛が不足しているらしい。
今思えば、前回は都合良く鼠が寝ている場に遭遇できたものだ。
とりあえず、反響の多い方角へと歩く事にした。
しばらく歩くと、やたらと地響きを感じるようになった。
(何か来る⁉︎)
ドスゥン‼︎‼︎ ドスゥン‼︎‼︎
遠くで地響きが数秒置きに鳴り、此方へと確実に向かってきている。
その正体の移動が早すぎて、音響感知でその姿を把握できない。
ドスゥン‼︎
刹那に地の振動で体が宙に舞う。
真横に降り立ったその正体は、猫などではなかった。
(んっ⁉︎ホーンラビット‼︎)
偶然にも体毛に引っ掛かり、アッシュは必死にしがみついた。
ホーンラビットは、比較的弱いとされる角の生えた兎の魔獣だ。
繁殖力も高く食用肉としても人気で、冒険者やハンターの日銭稼ぎとなっている。
(ハハハ!こいつなら、まだ抵抗無く食えるな!)
正直、野鼠の血などよりはマシだと言えるだろう。
ただ問題は…
(くぅっ!振り落とされてたまるか‼︎)
問題は、ホーンラビットにとってはただの移動が、小さき生物達には脅威の速さの移動だという事だ。
毛根付近まで辿り着くと、風圧や振動で落ちる危険性はだいぶ減った。
(ふぅ、焦ったぜ。せっかく探さなくても訪れた食事場だ。大事な拠点にさせてもらおう)
アッシュは毛根を後ろ足で掴み、体を固定すると早速食事に取り掛かった。
牙状の鋏角で刺し切れ目を入れると、鋏角でそのまま傷口を開く。
(生きる為だ。味の期待はできないな)
滲み出た血に、躊躇いながらも口を付ける。
(美味っ⁉︎なんだこれは⁉︎)
今まで体験した事の無い衝撃の美味さに、飲み続けたい衝動が止まらない。
(鉄っぽい味だとばかり思っていたが、様々な旨味が感じられる。王都の一流レストランより美味くないか?)
これ以上は無理だという限界まで、アッシュは血を飲み続けた。
気がつけば、センパイと変わらないくらいに体が肥大化していた。
(くぅっ、失態だ。こんな体ではまともに動けないぞ…)
2倍以上に膨らんでしまった体は、毛根を掴むことも困難だ。
するとそこへ、他のダニがゴソゴソと現れた。
そのダニは、アッシュが開けた傷口を、そのまま使おうとしている。
(人様の食事場を取るんじゃねぇよ!)
アッシュは、そのダニの下腹を突き上げて飛ばした。
飛ばされたダニは、そのまま落ちて視界から消えていった。
まぁ、落下では死にはしないだろう。
しかしまぁ、ダニの体だと血液がこうも美味しいとは思わなかったな。
センパイが、体がパンパンになるまで飲む気持ちが理解できた。
(フン、この食事場は誰にも渡さんぞ!)
陽の傾きも見えないので、今がどれくらいの時間かも分からないが、食事(吸血)をしてから体感時間がおよそ3時間程で体型が元の大きさに戻った。
少し皮が戻らず、全身が全体的にブヨブヨしている。
まぁ、また食事すれば元通りだろうな。
それにしても、食事後は力が上がるものの、動きがかなり遅くなるので今後は注意が必要だな。
それから約2日。
アッシュは吸血をしては寝て、邪魔が来たら蹴落としを繰り返していた。
(フッ、今回の血も最高に美味かったな)
いつも通り、満腹になってゆっくりと休んでいたら、突然のホーンラビットの大跳躍の振動に耐えられず、アッシュも地表へと落下してしまった。
(チィッ、せっかくの食事場だったのに!自重に耐えられないとは…)
葉のクッションにより落下によるダメージは無かったが、やはり肥大化した体が重く受け身は取れなかったな。
今度の落下地点は、草も背が低く均一のようだ。
つまりは、草食動物の食事場か、人の手が加えられているという事だ。
(だとすれば…次の食事場には無事にありつけるかもな…)
考えが甘かった。
落下から3時間経過…。
(体の痒みまで酷くなってきたな)
辺りの探索の為に少し動き回り過ぎたせいか、食事後の緩く伸びていた皮膚が痛痒かった。
少し大きな反応(おそらく虫の類)もあり、この症状が治まるまでは身を隠す事にした。
重ねた葉の下に潜り身を丸めて仮眠する。
しばらくして起きると、体に違和感があった。服を纏っているような肌触りの感覚だ。
(もしかして人に戻ったのか⁉︎)
だが実際は、伸びていた皮膚が剥がれて掛け布団のようになっていただけだった。
(…これは…?)
音響感知をしていない状態にも関わらず、草の形が分かる。
やや黄緑で、陽を浴びている箇所程、赤み掛かっている。
つまりは、温度を色で感知している。温度感知だ!
足で身体を触ると、センパイに足りないと言われた体毛が生えている。
(ん?足の感覚が…)
どうやら足も、6本から8本に増えたようだ。センパイと同じ成虫形態って事か?
(脱皮というやつか…)
温度感知と音響感知で視界は良好、足が増えた事で機動力が上がり、動き易さは段違いだ。
(フハハハハッ!人間ではあり得ない動きも可能だな!これならダニの一生など余裕だ!)
それから、約2日が過ぎた。
あれから俺は、食事場に一度も遭遇していない。
今の俺は小さなダニ。目が見えない上に、どれだけ速く動いたとしても、世界は広大で、何よりも先ず、動物と遭遇すること自体が稀だった。
このままでは餓死する。それが転生数の消化になるかは分からない。
そもそも、ダニの寿命はどれくらいだ?俺はまだ生まれて5日程度だ。
とてもじゃないが、次の転生に足りていない気がする。
(腹が空いてはいるが、まだ死にそうではない。後2日程度なら耐えれるな。そろそろ場所を移すか…)
俺は、この場所は牧場だと予想している。というのも、辺り一帯の低い草の断面が、同様にむしりちぎられているからだ。
しかし、多種動物による食べ方の違いがない。
食べられているのはどれも柔らかい若草だ。一種の草食動物だけが食べている。
だから、人の手で管理されていると考えた。
つまりここは、とある牧場の草食動物の餌場に違いない。
なので、もはや食べる草が無いこの一帯に居ても動物は来ない。
おそらく今は、違う場所の若草を食べているのだろう。
いくら早く動けるようになったとはいえ、大きな動物の移動速度には追いつけない。
飛び移るには、対象が動いていないタイミングが確実だ。
だとすれば、狙うは舎場の睡眠時か餌場での食事中だ。
アッシュは、新たな餌場だと予想する方角へと、餓死してなるものかと向かうのだった。
音の反響による感知が難しい今、落下地点がどんな場所かすらも分からない上に、タイミングを合わせた無事な着地は不可能だろう。
だがイメージ的に、地面が草地なら虫系統は落下によるダメージは大して無いように見えた気がする。
風が当たる腹側が、地面に向いているのだと想定して足を広げた。
その矢先、前足が何かに当たり、体が回転して地表に背中を叩きつけられた。
(い、痛い?いや、思ったより大して痛くないな。良かった。やはり葉がクッションになったのか?)
地に足が着いた事で、反響を利用した感知が再び可能となった。
最初に居た場所と違い、辺りは若い草が茂る草地のようだ。
まぁ、小さなこの体ではあまりにも世界が広大で、何処かすらも分かりはしないが。
(ともかく、先ずは腹ごしらえだな)
センパイの話だと、視界が無いに等しいこのダニの体でも、お仲間は体温感知で食事場を見つけているらしいからな。
ただ、俺にはその感知に必要な体毛が不足しているらしい。
今思えば、前回は都合良く鼠が寝ている場に遭遇できたものだ。
とりあえず、反響の多い方角へと歩く事にした。
しばらく歩くと、やたらと地響きを感じるようになった。
(何か来る⁉︎)
ドスゥン‼︎‼︎ ドスゥン‼︎‼︎
遠くで地響きが数秒置きに鳴り、此方へと確実に向かってきている。
その正体の移動が早すぎて、音響感知でその姿を把握できない。
ドスゥン‼︎
刹那に地の振動で体が宙に舞う。
真横に降り立ったその正体は、猫などではなかった。
(んっ⁉︎ホーンラビット‼︎)
偶然にも体毛に引っ掛かり、アッシュは必死にしがみついた。
ホーンラビットは、比較的弱いとされる角の生えた兎の魔獣だ。
繁殖力も高く食用肉としても人気で、冒険者やハンターの日銭稼ぎとなっている。
(ハハハ!こいつなら、まだ抵抗無く食えるな!)
正直、野鼠の血などよりはマシだと言えるだろう。
ただ問題は…
(くぅっ!振り落とされてたまるか‼︎)
問題は、ホーンラビットにとってはただの移動が、小さき生物達には脅威の速さの移動だという事だ。
毛根付近まで辿り着くと、風圧や振動で落ちる危険性はだいぶ減った。
(ふぅ、焦ったぜ。せっかく探さなくても訪れた食事場だ。大事な拠点にさせてもらおう)
アッシュは毛根を後ろ足で掴み、体を固定すると早速食事に取り掛かった。
牙状の鋏角で刺し切れ目を入れると、鋏角でそのまま傷口を開く。
(生きる為だ。味の期待はできないな)
滲み出た血に、躊躇いながらも口を付ける。
(美味っ⁉︎なんだこれは⁉︎)
今まで体験した事の無い衝撃の美味さに、飲み続けたい衝動が止まらない。
(鉄っぽい味だとばかり思っていたが、様々な旨味が感じられる。王都の一流レストランより美味くないか?)
これ以上は無理だという限界まで、アッシュは血を飲み続けた。
気がつけば、センパイと変わらないくらいに体が肥大化していた。
(くぅっ、失態だ。こんな体ではまともに動けないぞ…)
2倍以上に膨らんでしまった体は、毛根を掴むことも困難だ。
するとそこへ、他のダニがゴソゴソと現れた。
そのダニは、アッシュが開けた傷口を、そのまま使おうとしている。
(人様の食事場を取るんじゃねぇよ!)
アッシュは、そのダニの下腹を突き上げて飛ばした。
飛ばされたダニは、そのまま落ちて視界から消えていった。
まぁ、落下では死にはしないだろう。
しかしまぁ、ダニの体だと血液がこうも美味しいとは思わなかったな。
センパイが、体がパンパンになるまで飲む気持ちが理解できた。
(フン、この食事場は誰にも渡さんぞ!)
陽の傾きも見えないので、今がどれくらいの時間かも分からないが、食事(吸血)をしてから体感時間がおよそ3時間程で体型が元の大きさに戻った。
少し皮が戻らず、全身が全体的にブヨブヨしている。
まぁ、また食事すれば元通りだろうな。
それにしても、食事後は力が上がるものの、動きがかなり遅くなるので今後は注意が必要だな。
それから約2日。
アッシュは吸血をしては寝て、邪魔が来たら蹴落としを繰り返していた。
(フッ、今回の血も最高に美味かったな)
いつも通り、満腹になってゆっくりと休んでいたら、突然のホーンラビットの大跳躍の振動に耐えられず、アッシュも地表へと落下してしまった。
(チィッ、せっかくの食事場だったのに!自重に耐えられないとは…)
葉のクッションにより落下によるダメージは無かったが、やはり肥大化した体が重く受け身は取れなかったな。
今度の落下地点は、草も背が低く均一のようだ。
つまりは、草食動物の食事場か、人の手が加えられているという事だ。
(だとすれば…次の食事場には無事にありつけるかもな…)
考えが甘かった。
落下から3時間経過…。
(体の痒みまで酷くなってきたな)
辺りの探索の為に少し動き回り過ぎたせいか、食事後の緩く伸びていた皮膚が痛痒かった。
少し大きな反応(おそらく虫の類)もあり、この症状が治まるまでは身を隠す事にした。
重ねた葉の下に潜り身を丸めて仮眠する。
しばらくして起きると、体に違和感があった。服を纏っているような肌触りの感覚だ。
(もしかして人に戻ったのか⁉︎)
だが実際は、伸びていた皮膚が剥がれて掛け布団のようになっていただけだった。
(…これは…?)
音響感知をしていない状態にも関わらず、草の形が分かる。
やや黄緑で、陽を浴びている箇所程、赤み掛かっている。
つまりは、温度を色で感知している。温度感知だ!
足で身体を触ると、センパイに足りないと言われた体毛が生えている。
(ん?足の感覚が…)
どうやら足も、6本から8本に増えたようだ。センパイと同じ成虫形態って事か?
(脱皮というやつか…)
温度感知と音響感知で視界は良好、足が増えた事で機動力が上がり、動き易さは段違いだ。
(フハハハハッ!人間ではあり得ない動きも可能だな!これならダニの一生など余裕だ!)
それから、約2日が過ぎた。
あれから俺は、食事場に一度も遭遇していない。
今の俺は小さなダニ。目が見えない上に、どれだけ速く動いたとしても、世界は広大で、何よりも先ず、動物と遭遇すること自体が稀だった。
このままでは餓死する。それが転生数の消化になるかは分からない。
そもそも、ダニの寿命はどれくらいだ?俺はまだ生まれて5日程度だ。
とてもじゃないが、次の転生に足りていない気がする。
(腹が空いてはいるが、まだ死にそうではない。後2日程度なら耐えれるな。そろそろ場所を移すか…)
俺は、この場所は牧場だと予想している。というのも、辺り一帯の低い草の断面が、同様にむしりちぎられているからだ。
しかし、多種動物による食べ方の違いがない。
食べられているのはどれも柔らかい若草だ。一種の草食動物だけが食べている。
だから、人の手で管理されていると考えた。
つまりここは、とある牧場の草食動物の餌場に違いない。
なので、もはや食べる草が無いこの一帯に居ても動物は来ない。
おそらく今は、違う場所の若草を食べているのだろう。
いくら早く動けるようになったとはいえ、大きな動物の移動速度には追いつけない。
飛び移るには、対象が動いていないタイミングが確実だ。
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