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プロローグ

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 いきなりだが、この世界には、異世界人と呼ばれる人族がいる。

 彼等は、この世界に無い知識と、世界を跨いだ際に得た特殊な力により、文明や情勢に多大な影響を及ぼした。

 利の為にこちらから呼び寄せた者達を召喚人、次元の歪みに迷い込み、極めて稀に現れるその者達を、禍福人と呼んでいる。

 彼等はとても高待遇されて、名も知られ表立って活躍していた。

 しかしそれは遥か昔の話で、現在ではその力を無理に利用しようとする者達が多い為、国が秘密裏に保護しているという噂だ。

 今回は祭典として召喚人を喚んだらしいが、実際には、国が利用しているのかもしれない。でもそれを、一般人が調べようものなら捕まりかねない。

 何故、僕が今、こんな事を考えているかと言うと、このの場合は、僕は捕まってしまうのか分からないと混乱しているからだ。

「巻き込んじゃったね、大丈夫?」

 差し出されたその手の先で、屈託のない笑顔を見せる彼女に、僕は迷いながらも手を伸ばしてしまった。

 彼女は僕の手を掴むと、尻餅をついていた僕を引き起こし、更に言葉を付け足した。

「ねぇ君、良かったら私のパートナーにならない?」

 彼女は今巷で話題になっている異世界人。

 たった今分かった事実であり、混乱する要因。世間では、良くも悪くも関わるべきではない災いの元。

 だが、彼女の笑顔に悪意は感じられない。
 ただの第一印象。それだけの理由だけれども、僕は彼女の提案に頷いていた。

「はい、よろしくお願いします」

 まるでプロポーズを受けたかのように、自身の鼓動も高鳴っているのがわかる。
 これは直感、いや、無視できない事だったんだ。
 自分でも単純だと思うよ?だけど、

 異世界人を信用するのは、愚かな事だろうか?
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