【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

文字の大きさ
108 / 418
第8章 何処へ行っても目立つ様だよ⁈

104話 快楽の共有

しおりを挟む
 訓練が終わり、簡易シャワー室を亜空間収納から取り出して、1人ずつ体を洗っていく。
 この簡易シャワー室は、電話ボックス並の大きさだ。取り出している姿を側から見ると、某アニメの未来から来たロボット、ドラ○もんみたいだと言われかねない。 
 構造は屋根部分が貯水槽になっていて、室内の上部に固定してあるシャワーへと繋がっている。シャワーの蛇口の根元には、ヒートアップの魔鉱石が設置してある。
 手前にあるボタンに魔力を流すと、お湯が流れ出る仕組みで、横にある摘みで温度調節も可能だ。
 ただ、流れ出た排水の処理先を、毎回掘って溜めなければならないのが難点で、サクションの設置場所と使うタイミングを今は検討中の段階だ。

 みんなが入った後、最後にアラヤが入ると、外で何やら言い合いが聞こえる。

「ちょっと、今日は私とクララの日でしょう?貴女達は馬車で大人しく寝てるべきだわ」

 内容から察するに、夫婦の営みの番で揉めているようだ。
 嫁が4人に増えた事で、公平を期す為に日による当番制が決まっていた。
 月神日はアヤコとサナエ、火神日はカオリとクララ、水神日はアヤコとカオリ、というように日による組み合わせが変わるローテーションが組まれ、日曜日に当たる天神日は休みと決まっていた。
 決まりは守られていて、今日はカオリとクララの筈なんだけど…

「それはマイホームでの話です。このような馬車の旅では、部屋が分かれていないので寝れませんよ。私達に悶々としても耐えろというのですか?」

「だって、それじゃあアラヤとの甘い時間が減るじゃない」

「馬車での移動期間の夜だけです。街や村に着いたら戻しますから、野営時の夜は全員でのお相手という事でお願いします」

「ブフッ⁉︎」

 アラヤは思わず吹き出していた。いくら即席巨大かまくらで敵からの襲撃が無いといえ、いろんな意味でそれはあまりに危険ではないだろうか?
 アラヤは恐る恐るシャワー室から出て着替える。既に話し声は聞こえない。しかし、魔導感知で出口を包囲されていることが分かる。

「アラヤ君、聞いていたのでしょう?出て来てください」

「はい…」

 アラヤが観念して出てくると、4人は寝間着姿でアラヤを取り囲む。湯上がりのほのかに残る湿っぽさが、4人の色っぽさを引き立てている。

「アラヤ君、これは強制ではありません。気が乗らない場合は、当然断って構いません」

 いや、この状況でそれは無理じゃないかな?既に胸の感触が背中や腕に押し付けられているのだから。多過ぎる据え膳食わぬは何の恥になるの…?




「はぁ…今回はまた長かったな…」

 アラヤはゆっくりと上半身を起こす。周りには嫁達が、意識を失ったように熟睡している。カオリに至っては仮死状態デスタイムのようだ。
 途中から記憶が欠落している。こんな事は今までには無かった。原因は、途中でカオリと感覚共有してしまった事にある。
 彼女の色欲魔王としての極上の快楽は、性的な行為で得られる。つまりは、アラヤの捕食で得られる快楽と同等の快楽を、みんなが共有してしまったのだ。しかも、共有により効果は何倍にも跳ね上がる。
 常人ならば、先端に触れただけで達してしまうだろう。
 もはや理性は壊れて、皆んなは意識を失ったのだ。
 唯一、精神耐性を持つアラヤだけが、いち早く立ち直れたのだ。

「カオリさんとだけは、感覚共有は危険だと分かってたのに、まさか彼女自体がコピーした感覚共有を使うとは考えて無かった。次からは絶対に禁止だな」

 アラヤは、彼女達の体を綺麗にしてから馬車の寝床に寝かせた。
 はぁ、今日はなんか疲れだけが残ったなぁ。アラヤはそのまま寝込んでしまう。

 翌朝、アラヤが目を覚ますと、アラヤより先にカオリが起きていた。彼女自身、まだアラヤの全技能コピーが続いているのだろう。精神耐性が働いていたらしい。

「おはよう、にいや。みんなはまだ起きないね」

「おはよう。みんなは…」

 アラヤは、その原因がカオリさんにあると説明した。

「…だって、みんなだけ感覚繋がってて羨ましかったんだもの。私の快楽をみんなにもあげたいって思ったのよ」

「うん、次からは注意しなきゃね」

 とりあえず、みんなが起きるまでの間、カオリと魔鉱石の製作をしながら話をしていた。

「うう…、少し頭が痛いです」

 やがて、みんなが起き出したので、ようやく出発の準備に取り掛かる事ができる。
 馬達の準備も終わり、アラヤはカオリと2人で、アースクラウドでかまくらの片方を持ち上げる。

「さぁ、再び出発だ」

 持ち上げて出来た隙間から、馬車を外に走らせる。

「うわぁ、真っ白だな!」

 外の世界は、雪が積もって銀世界になっていた。これだと、馬車が上手く走らせる事ができない。

「クララ、銀狼になって馬の前でホットブローを頼む!」

「分かりました!」

 クララは銀狼に変身すると、衣服を脱ぎ捨てて表へと飛び出した。
 銀世界に銀狼って、似合い過ぎてるね。

「ホットブロー!」

 馬が進む道の雪を、馬車が無理なく走れる程度に溶かしながら先行して走る。
 クララの魔力が尽きそうになると、アヤコとサナエが先頭の馬に乗馬して、ホットブローの魔鉱石を使用する。この繰り返しを続けながら、夕方前にインガス領の関所へと到達した。

 魔導感知には反応があるのだが、扉が閉まっているままなので、大声で呼びかけてみる。

「すいませーん‼︎門を開けてもらえませんかー⁉︎」

 返事は返ってこない。もう一度、魔導感知に更に熱感知を兼用してみる。

「反応が微弱で体温が低い。低体温症か⁈」

「どうするの?」

「クララと俺で門の上から中に入る。直ぐに閂を外すから、少し待っていてくれ」

 アラヤは両足をバルクアップして、クララと共に門の上へと跳躍する。
 門の上へと降り立った2人は、目下の状態を見て状況を理解した。
 つい先刻まで戦闘があったようで、消えたばかりの松明の煙や、雪に飛び散る血痕が見える。

「クララは閂を頼む。俺は生存者の元に行く」

「分かりました」

 アラヤは、魔導感知に反応した者の場所へと急ぐ。そして守衛室らしき場所に、その者達が居た。

「おい、大丈夫か⁉︎」

 そこには、2人の守衛が怪我を追った状態で倒れていた。直ぐに2人にヒール(中)を掛ける。怪我は治っても、意識は朦朧としているようだ。2人の脇の下に触れて、ヒートアップの最弱の強さで体の中心から温めていく。
 やがて、虚だった目も光が戻り、アラヤの姿を見据えている。
 皆んなも直ぐに駆け付けて来て、サナエさんが温かい白湯を飲ませる。

「ああ…助かったよ。礼を言う」

「いえ、間に合ったのは貴方達の体力があったからだ。他の方々は、残念だけど…」

 クララが、門の付近で亡くなっていた3人の守衛達を発見していた。

「…そうか」

「何があったのか、教えていただけませんか?」

「…君は見た目と違い、随分と大人のようだな。……2時間程前に、領内から動物や魔物の群れがやってきた。それ等は何から逃げて来ているようだった。俺達はを迎え撃とうと構えていたが、逆に返り討ちにあってしまったという訳さ」

「それで、その正体は何なのですか?」

「冥界の魔物、シルバーレイスだよ」

 どうやら彼等を襲ったのは、死霊系魔物のようだ。初アンデットが、中級死霊系魔物とは、これは厄介なタイミングで来てしまったのかもしれない。
 死霊系って、武器は通用するんだったっけ?良く考えたら、アラヤは対処法を知らなかったのだ。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

処理中です...