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第14章 面会は穏便にお願いしますよ⁉︎
200話 タオとハル
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浮遊邸の大食堂。
ヤブネカ村の広場みたく無駄に広くしてしまったと感じていたけど、現状は50人入れる食堂がいっぱいいっぱいの満席状態になっていた。
「坊や、それで、どうなんだい?」
アラヤが座る隣に狼人姿のクレアが座っており、昼食を食べている最中のアラヤに寄り掛かる様に密着していた。
「クレアさん、離れて下さい。アラヤ君は食事中ですし、周りにも気を配ってもらわないと」
アヤコ達が注意するのはもっともで、問題は彼女の格好にあった。上下共に下着に近い薄着しか着ていない状態なのだ。
狼人で大半に体毛があるとはいえ、その体型はモデル並みに引き締まっている。特に胸から腹部にかけては人肌に近いので、そこに女性美を感じるのは同族だけでは無いはずだ。
「仕方ないだろう?我々狼人の雌は今が繁殖期。強い雄を求めるのは本能だよ」
そう、アラヤに対する色仕掛けを行っていたのだ。腕と背に当たるモフモフと柔らかい弾力に、アラヤは通常よりも食べるスピードが落ちている。
「母さん、ご主人様を狙うのは止めて」
そこへ現れたクララが、母を引き離しに掛かる。だが、そうするクララもやや普段より露出度高めのメイド服(サナエデザインの夏服用メイド服)である。彼女はまだ人狼時には変化は見られないのだが、狼人、特に銀狼時にはこの数日発情を抑えづらい様だ。
「だけどこれは本能。私達は子を増やすように古来から神々によって決められている」
クレアの舌先が、アラヤの口元に付いた食べ残しを掬い取る。
「ちょ、ちょっと⁉︎」
キスに近い行動に嫁達が怒り出し、楽しい食事が少し乱されたが、そこへハウンからの念話が届く。
『アラヤ様、バナン様への伝言は完了し只今帰りました。それで、コルキアに着いたのですが、農園入り口にてアラヤ様を探している方が居られまして…』
『ひょっとして、執事みたいな人かな?』
『はい。他にお子様も2人居られます』
『分かった。降りてくるから待ってて』
現在浮遊邸は農園の真上で停泊している。結界により見つかる事は無いし、その方が移動が手っ取り早いからね。
ゴンドラで農園に降りたアラヤは、入り口で待つハウン達を見つけた。やはり来訪者はバスティアノ達だった。
「お待たせしました。お久しぶりですバスティアノさん。タオとハルちゃんも元気そうだね!」
「ししょ~!」
「アラヤさん!お久しぶりです!」
アラヤに、遠慮なしに抱きつくハルとタオ。うん、タオだけでなくハルも少し背が伸びた様だ。ま、まだ追い抜かれないよね?
バスティアノはアラヤの先日の変装に気付いているかもしれないが、タオ達の手前、知らない振りをしてもらおうと目配せする。
「お会いできて良かったです。アラヤ様に似た方達を見たと、支店の者から聞きましたので、もしや此処に来ておられるのではと立ち寄った次第です」
話を合わせてくれた様で、ニコリと目配せを返してくれた。
「それにしても、農園のこの有り様はどうされたのですか?」
復旧は始まっているものの、畑を優先的に直している為に、建物はあまり手付かずで焼け落ちたままの瓦礫が山積みの状態なのだ。
「ああ、2日前に賊から放火されたみたいでして、今は復旧工事の為に休園しています」
「そんな事が…。このバルガス農園は我がバルグ商会の契約農園の一つでして。これは早急に坊ちゃんに報告し、復旧の援助を請わねばなりませんね」
「お待ち下さい」
手帳を取り出して、被害状況と必要経費を目算し始めたバスティアノをハウンが止めた。
「着いて直ぐの情報なんですが、今現在、戦争状態の為に他領への移動が制限されている様です。特に行商人への審査も厳重になっているらしく、デピッケルからの資材や人材派遣は出来ないと思われます。それだけでなく、先程この領自体も防衛の為に資源の購入規制が決まりましたので、補修材等も買い占めは出来ません」
アラヤ達は浮遊邸により陸路を来ていないので、関所の規制を知らなかった。このグラーニュ領はアルローズ領とも近い上に港町もある。規制は厳しくなって当然だろう。
「なるほど、タイミングが悪うございますね…」
「…この農園には縁がありまして、復旧に関しては私達が手伝っているので問題有りませんよ」
実際に、復旧に使用している補修材は街では買わず、ほぼアラヤ達の持ち物で賄っている。まぁ、その分のお代は、クレアと交渉済み(向こう10年間の高級葡萄酒、毎月2樽)だからね。
「それに、子爵様の御子息が、補償してくれる筈ですので」
含み笑いをするアラヤに、バスティアノはああ…と件の事の理由を全てを納得した様だ。
「しかし、それはそうと、戦争が始まったのは困りましたね。戦時中の商業ギルドは多忙を極めますから。私としては直ぐにでも坊ちゃんの側に戻りたいのですが…。それにこの子達も不安でしょうし…」
バスティアノの視線がふとタオ達に向けられる。タオ達の両親もデピッケルに滞在しているんだったね。
「……バスティアノさん、飛竜とか乗れます?」
アラヤが出した案をバスティアノは呑んだ。それは、アラヤ達の飛竜を1匹彼に貸し、バスティアノが単身でデピッケルに戻るというもの。タオとハルはアラヤ達と一緒にいたいとごねたのだ。まぁ、その方が安全かもしれないからね。アヤコを呼び、2人を浮遊邸へと連れて行ってもらった。さぞや驚く事だろう。
「馬車は俺が預かっておきます。復旧が終わり次第、この子達もデピッケルに送りますので安心して下さい」
浮遊邸から飛竜を連れて来てもらい、バスティアノに軽く乗り方をレクチャーする。飛竜に乗るのは初めてだったらしいのだが、彼は直ぐにマスターした。
「…感謝します。それにしても…アラヤ様には驚かされますな。まさか、飛竜を従えておられたとは。それに、旧知の仲である彼女と知り合いだったとは…」
「アンタに同意だよ。まさかこんな形で再会するとは思わなかったよ」
復旧作業に戻って来たクレアが、バスティアノを見るなり抱き付いた時は驚いた。2人は、かつて冒険者仲間だったらしいのだ。
「娘とやり合ったらしいじゃないか。どうだった?かなり成長したものだろう?」
「ああ…。再戦を約束したのだが、今のままでは勝てる気がせんよ。昔の君の様だったよ、クレア」
この2人、中々に良い雰囲気だな。邪魔しちゃ悪い気がしたが、会話が続くに連れてクレアの表情がだんだんと興奮してきた様なので間に割って入る。
「バスティアノさん、少し遠回りになると思うけど、アルローズ領を避けたルートで帰って下さい。帝国軍には、空飛ぶ船がいるそうなので、くれぐれもご注意を」
「空飛ぶ船ですか。それは軍事的だけでなく、商業的にも素晴らしいですな。バルグ様ならば喜んで見に行く事でしょう。ですが、今は脅威でしか有りません。急ぎ坊ちゃんに知らせねば。帝国に物流戦で負ける訳にはいきませんからね」
バスティアノは軽く礼をした後、デピッケルへ向け飛竜を操り飛び立って行った。テレポートで送る手もあったが、そこまで手を貸す必要は無いと考えたのだ。
「…ったく、邪魔しないで欲しかったね」
クレアは興醒めだよと愚痴を零しながら、復旧作業に向かって行った。だって、目の前で知り合いの情事を見たく無かったからね。
「アラヤ様、もう一点ご報告があります」
クレアが去って誰も辺りに居なくなると、ハウンが真剣な表情でそう言った。
「どうしたの?」
「今、この領内に寛容の勇者が居ます」
「えっ⁉︎寛容の勇者は、傲慢魔王を倒しに海を渡ったんじゃ…?」
「それが、倒すどころか同盟を結び、再びこの領へと帰って来たらしいのです。現在領地を横断し、アルローズ領へと向かっているらしいです。このコルキアから離れているとはいえ、用心した方が宜しいかと」
まさかの魔王と同盟を結ぶとは、寛容の勇者は何を考えているのか分からないな。
それに、カオリには知られたらマズイと思う。復讐すると言い出して暴走しそうだからね。
ヤブネカ村の広場みたく無駄に広くしてしまったと感じていたけど、現状は50人入れる食堂がいっぱいいっぱいの満席状態になっていた。
「坊や、それで、どうなんだい?」
アラヤが座る隣に狼人姿のクレアが座っており、昼食を食べている最中のアラヤに寄り掛かる様に密着していた。
「クレアさん、離れて下さい。アラヤ君は食事中ですし、周りにも気を配ってもらわないと」
アヤコ達が注意するのはもっともで、問題は彼女の格好にあった。上下共に下着に近い薄着しか着ていない状態なのだ。
狼人で大半に体毛があるとはいえ、その体型はモデル並みに引き締まっている。特に胸から腹部にかけては人肌に近いので、そこに女性美を感じるのは同族だけでは無いはずだ。
「仕方ないだろう?我々狼人の雌は今が繁殖期。強い雄を求めるのは本能だよ」
そう、アラヤに対する色仕掛けを行っていたのだ。腕と背に当たるモフモフと柔らかい弾力に、アラヤは通常よりも食べるスピードが落ちている。
「母さん、ご主人様を狙うのは止めて」
そこへ現れたクララが、母を引き離しに掛かる。だが、そうするクララもやや普段より露出度高めのメイド服(サナエデザインの夏服用メイド服)である。彼女はまだ人狼時には変化は見られないのだが、狼人、特に銀狼時にはこの数日発情を抑えづらい様だ。
「だけどこれは本能。私達は子を増やすように古来から神々によって決められている」
クレアの舌先が、アラヤの口元に付いた食べ残しを掬い取る。
「ちょ、ちょっと⁉︎」
キスに近い行動に嫁達が怒り出し、楽しい食事が少し乱されたが、そこへハウンからの念話が届く。
『アラヤ様、バナン様への伝言は完了し只今帰りました。それで、コルキアに着いたのですが、農園入り口にてアラヤ様を探している方が居られまして…』
『ひょっとして、執事みたいな人かな?』
『はい。他にお子様も2人居られます』
『分かった。降りてくるから待ってて』
現在浮遊邸は農園の真上で停泊している。結界により見つかる事は無いし、その方が移動が手っ取り早いからね。
ゴンドラで農園に降りたアラヤは、入り口で待つハウン達を見つけた。やはり来訪者はバスティアノ達だった。
「お待たせしました。お久しぶりですバスティアノさん。タオとハルちゃんも元気そうだね!」
「ししょ~!」
「アラヤさん!お久しぶりです!」
アラヤに、遠慮なしに抱きつくハルとタオ。うん、タオだけでなくハルも少し背が伸びた様だ。ま、まだ追い抜かれないよね?
バスティアノはアラヤの先日の変装に気付いているかもしれないが、タオ達の手前、知らない振りをしてもらおうと目配せする。
「お会いできて良かったです。アラヤ様に似た方達を見たと、支店の者から聞きましたので、もしや此処に来ておられるのではと立ち寄った次第です」
話を合わせてくれた様で、ニコリと目配せを返してくれた。
「それにしても、農園のこの有り様はどうされたのですか?」
復旧は始まっているものの、畑を優先的に直している為に、建物はあまり手付かずで焼け落ちたままの瓦礫が山積みの状態なのだ。
「ああ、2日前に賊から放火されたみたいでして、今は復旧工事の為に休園しています」
「そんな事が…。このバルガス農園は我がバルグ商会の契約農園の一つでして。これは早急に坊ちゃんに報告し、復旧の援助を請わねばなりませんね」
「お待ち下さい」
手帳を取り出して、被害状況と必要経費を目算し始めたバスティアノをハウンが止めた。
「着いて直ぐの情報なんですが、今現在、戦争状態の為に他領への移動が制限されている様です。特に行商人への審査も厳重になっているらしく、デピッケルからの資材や人材派遣は出来ないと思われます。それだけでなく、先程この領自体も防衛の為に資源の購入規制が決まりましたので、補修材等も買い占めは出来ません」
アラヤ達は浮遊邸により陸路を来ていないので、関所の規制を知らなかった。このグラーニュ領はアルローズ領とも近い上に港町もある。規制は厳しくなって当然だろう。
「なるほど、タイミングが悪うございますね…」
「…この農園には縁がありまして、復旧に関しては私達が手伝っているので問題有りませんよ」
実際に、復旧に使用している補修材は街では買わず、ほぼアラヤ達の持ち物で賄っている。まぁ、その分のお代は、クレアと交渉済み(向こう10年間の高級葡萄酒、毎月2樽)だからね。
「それに、子爵様の御子息が、補償してくれる筈ですので」
含み笑いをするアラヤに、バスティアノはああ…と件の事の理由を全てを納得した様だ。
「しかし、それはそうと、戦争が始まったのは困りましたね。戦時中の商業ギルドは多忙を極めますから。私としては直ぐにでも坊ちゃんの側に戻りたいのですが…。それにこの子達も不安でしょうし…」
バスティアノの視線がふとタオ達に向けられる。タオ達の両親もデピッケルに滞在しているんだったね。
「……バスティアノさん、飛竜とか乗れます?」
アラヤが出した案をバスティアノは呑んだ。それは、アラヤ達の飛竜を1匹彼に貸し、バスティアノが単身でデピッケルに戻るというもの。タオとハルはアラヤ達と一緒にいたいとごねたのだ。まぁ、その方が安全かもしれないからね。アヤコを呼び、2人を浮遊邸へと連れて行ってもらった。さぞや驚く事だろう。
「馬車は俺が預かっておきます。復旧が終わり次第、この子達もデピッケルに送りますので安心して下さい」
浮遊邸から飛竜を連れて来てもらい、バスティアノに軽く乗り方をレクチャーする。飛竜に乗るのは初めてだったらしいのだが、彼は直ぐにマスターした。
「…感謝します。それにしても…アラヤ様には驚かされますな。まさか、飛竜を従えておられたとは。それに、旧知の仲である彼女と知り合いだったとは…」
「アンタに同意だよ。まさかこんな形で再会するとは思わなかったよ」
復旧作業に戻って来たクレアが、バスティアノを見るなり抱き付いた時は驚いた。2人は、かつて冒険者仲間だったらしいのだ。
「娘とやり合ったらしいじゃないか。どうだった?かなり成長したものだろう?」
「ああ…。再戦を約束したのだが、今のままでは勝てる気がせんよ。昔の君の様だったよ、クレア」
この2人、中々に良い雰囲気だな。邪魔しちゃ悪い気がしたが、会話が続くに連れてクレアの表情がだんだんと興奮してきた様なので間に割って入る。
「バスティアノさん、少し遠回りになると思うけど、アルローズ領を避けたルートで帰って下さい。帝国軍には、空飛ぶ船がいるそうなので、くれぐれもご注意を」
「空飛ぶ船ですか。それは軍事的だけでなく、商業的にも素晴らしいですな。バルグ様ならば喜んで見に行く事でしょう。ですが、今は脅威でしか有りません。急ぎ坊ちゃんに知らせねば。帝国に物流戦で負ける訳にはいきませんからね」
バスティアノは軽く礼をした後、デピッケルへ向け飛竜を操り飛び立って行った。テレポートで送る手もあったが、そこまで手を貸す必要は無いと考えたのだ。
「…ったく、邪魔しないで欲しかったね」
クレアは興醒めだよと愚痴を零しながら、復旧作業に向かって行った。だって、目の前で知り合いの情事を見たく無かったからね。
「アラヤ様、もう一点ご報告があります」
クレアが去って誰も辺りに居なくなると、ハウンが真剣な表情でそう言った。
「どうしたの?」
「今、この領内に寛容の勇者が居ます」
「えっ⁉︎寛容の勇者は、傲慢魔王を倒しに海を渡ったんじゃ…?」
「それが、倒すどころか同盟を結び、再びこの領へと帰って来たらしいのです。現在領地を横断し、アルローズ領へと向かっているらしいです。このコルキアから離れているとはいえ、用心した方が宜しいかと」
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