【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第14章 面会は穏便にお願いしますよ⁉︎

206話 大混戦

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 翌日、再びコロシアムに来たアラヤ達。登録に向かったアラヤとクララは、登録名をニイヤとキララに変えて、持ち込み武器はアラヤは竜爪剣、クララはバスティアノが使用していたブラックジャック(警棒)で手続きをした。彼女の使用するミスリルナイフは、魔鉱石玉による魔法武器なので今回は使用しない。防具は、アラヤは通常の戦闘服バトルスーツ。クララは流石にメイド服は無理そうなので、レミーラに作って貰った胸当てと腰当てのみだ。動き易さ重視らしい。
 登録が終わった順に待合室へと案内される。待合室でも休憩するでなく、直ぐに各方角の入場入り口へと誘導された。アラヤは北門、クララは南門と違う入り口へ向かう事となった。
 着いた北門入り口前には、アラヤを含む13人が待機する事となった。クララと連絡を取ろうと念話をするも、会話できない様に辺りにはジャミングがかけられている様だ。
 まぁ、入場すればできるだろうから問題無いけどね。
 ふと辺りを見ると、他の闘士達がアラヤを見ていた。その目は警戒と殺気に満ちている。警戒されるのは、やはり竜人ドラッヘンの姿だからだろうか。
 (彼等は、始まる前から気疲れしそうだな。大体、殺意はもの凄く気力を使う。それを維持したまま長時間戦うのは至難の業だろう。ましてや、相手に殺したいと思う程の恨みなど無いはずだ)
 アラヤは、自分の見解が正しいとは言い切れないが、周りに釣られて自分を見失う気などさらさら無い。全ての視線を無視して、時間までストレッチを行う事にした。

「入場1分前です。くれぐれも走らずに、開始のドラが鳴るまでは戦闘をしないでくださいね」

 係員が現れて、闘士達を門の前に並ばせる。既に皆息が荒らく、開始直後から全力で暴れるだろう。アラヤは最後尾に並び、魔力制御で気配を消した。

「さぁ、どうぞ。入場して下さい!」

 勢いよく鉄扉が開かれると、闘士達は我先にと飛び出して行く。アラヤは魔導感知でクララの位置を確認すると念話を飛ばした。

『クララ、とりあえずは離れて戦おうか。強敵が居た場合だけ共闘するよ。あ、最終日の闘士達は早い者勝ちでね?』

『分かりました。負けませんよ?』

 2人共、別に殺人を競う気は無い。止むを得ない場合以外は、行動不能にして棄権させるつもりだ。

 アラヤはシューバッツの反応を探す。厄介なのは、やはり空を飛ぶ彼だろう。早めに落としておきたい。

「居た。始まりから飛んでるのか…」

 地上に降りたら狙われるのは当然だからなぁ。制限時間終わりまで飛んで凌ぐつもりの様だ。

「さぁ、本日も始まりました命を賭けた魂のぶつかり合い!進行アンド解説は私、ベッキーでお送りします!」

 とうとうベッキーの解説が始まった。場所取りは既に皆終えている。アラヤはシューバッツの死角になる場所へと移動した。

「本日、最終日を迎えた強者は3名!未だ無傷の混血変異種ミクストレース、シューバッツ!この雄もかなり強い、防御も攻撃力も文句無し!灰色の象人エレファンガル、ダンブー!そして、技能が明らかになる最終日まで存在を隠し通して来た隠者!カメレオンの蜥蜴人リザードマン、ハクハク!」

 次々と紹介される闘士達。紹介されなければ、まだ隠れてたのにとハクハクは辺りに怯えている。一方でダンブーは意気揚々と笑顔で手を振っている。よほど生き残る自信があるのだろう。

「…3日目の闘士達も目が離せない猛者ばかりだ!そんな中‼︎本日は注目するべき挑戦者が現れたぞ‼︎その美しい銀毛に見惚れる雄が多数!シルバーファングの狼人ライカンスロープ、キララーー‼︎入場前にアプローチした闘士達は全て撃沈したとの事!闘技場に舞う紅一点、彼女の戦い方にも注目だぁーっ!」

 クララは、観客席に居るアヤコ達には手を振ったが、辺りの闘士達の熱視線にはツンと冷めた表情をしている。

「フフフ、今日はそれだけじゃないぞーーっ!その噂を聞いて来た観客も多い筈!ついに、このコロシアムにも奴が来た‼︎もはや伝説とされるドラゴンの亜人!小柄な体にはどんな力が隠されているのか!竜人ドラッヘン、ニイヤーーっ‼︎」

「にいやー!ガンバー!」

 カオリ達の声援が聞こえる。せっかく気配を消していたのに、呼ばれたからには姿を見せない訳にもいかないね。手を振り返すと、今度は彼女達が周りから注目される事となった。

「生き残り総数28名、初参加闘士52名。計80名による大決戦!間も無く開始です‼︎」

 緊張感が高まり場が鎮まる。殺気が各方位から感じられる中、開始のドラが鳴り響いた。

「あーっと!開始と同時に狙われたのは、ニイヤだぁぁっ‼︎」

 注目株を先に叩こうと動いた闘士達が、次々とアラヤに襲い掛かる。その速さは、亜人だけあって流石に速い。だがアラヤは普通に相手する気は無いので、ヘイストを掛けた状態で攻撃を捌いていく。その際に、相手の腕や脚の腱を斬った。

「何という速さ!俊足の猫人カッツェパーソンを最も簡単に躱して、反撃までして見せたぁっ⁉︎」

 ベッキーの解説がアラヤ中心な為に、次から次に新たな闘士が襲って来る。これでは好きに動けない。クララの方を見ると、象人のダンブーに挑んでいる最中だった。

「くっ、俺も頑張らないと!」

 アラヤは、襲い掛かる犬人ホンデライタの振り下ろされた剣を躱してその腕を掴むと、空飛ぶシューバッツ目掛けてその闘士にグラビティを掛けて投げた。

「うわぁぁぁっ⁉︎」

「なっ‼︎⁉︎」 

 シューバッツは驚きつつも、矢を放ち闘士の勢いを殺して躱す。

「あの体重を投げてくるだと⁉︎どんな怪力だよ!」

 安全地帯だと思って、高みの見物で体力温存を狙っていたが、シューバッツは更に高度を上げる事にした。
 案の定、またもや闘士が投げ飛ばされる。しかし今度は届く距離では無い。

「フフッ、それは無理だと……えっ⁉︎」

 投げられた闘士を踏み台に、アラヤが飛躍の構えをしていた。シューバッツは慌てて弓を構える。

「獲ったっ!」

 彼が矢を放つよりも早く、瞬歩で彼の頭上まで飛んだアラヤは、始めから狙っていた翼を斬った。

「ギヤァァァアッ‼︎」

 地上に落とされたシューバッツは、堪らず痛みに転げ回る。闘士達がこの機を逃す筈も無く、シューバッツは降参をする間も無く討たれた。

「とうとうここで、シューバッツが討たれてしまったぁ‼︎残る最終日闘士は2人!」

「先ず1人。クラ…キララはまだ戦ってるな。それなら、あと1人のカメレオンを倒すか」

 カメレオン特有の技能、擬態で姿を消して次々と闘士を襲っているハクハク。だが、アラヤの熱感知にはくっきりとその姿が見えている。逆に気配を消して背後に回ると、彼の目がギョロギョロと此方をむいた。
 気付かれたかと思い、その背中を蹴り飛ばした。

「ギャン!」

 擬態が解けて、ハクハクは戦っている最中のダンブーの背中に当たった。

「おのれ、邪魔するで無い‼︎」

 ダンブーは、ふらつくハクハクの胸元を掴むと、地面に頭を叩きつけた。ピクリとも動かなくなった彼を放置して、再びクララと戦いを再開する。

『手伝おうか?』

『いえ、やらせて下さい』

 明らかに楽しんでいる声が返ってくる。動きはクララより遅いけど、ダンブーの攻撃の手数は剣・牙・鼻と多く、威力もある。彼女はその全ての攻撃を躱し、ダンブーの硬い皮膚にブラックジャックで打撃を入れていく。
 開始直前は余裕があったダンブーだが、今はその余裕は無いと見える。
 手足の関節を重点的に叩かれて、とうとう膝を地に付けた。どうやら骨が折れたみたいだな。

「ま、参った。俺は降参する」

「おおっとぉっ⁉︎キララの猛攻撃に、最終日のダンブーは耐えられなかった‼︎開始20分、ハイペースで生き残り闘士が倒されているぞー⁉︎」

 降参を表明したダンブーが地中に沈む様にして消えた。辺りを見ると、討たれた者達の姿も消えている。邪魔にならない様に移動させているのかな?原理は分からないけど、これも神の力かもしれない。

 この時点で、アラヤとクララの周りから、闘士達が離れ始めた。無闇に攻めるのは無理だと判断したらしい。
 その後も、2人を避ける様に逃げ出す闘士達。少しガッカリだけど、無理に戦う必要も無いかな。
 こうして初日は時間が過ぎ、大した成績(討伐数)を出す事無く幕を閉じた。
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