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第22章 世界崩壊はわりと身近にあるらしいですよ⁉︎
313話 初契約
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深海海中を漂う潜水遺跡の一室。
元は水堅牢により閉じ込められていた一室が、今や家具が揃い、多少は住みやすい部屋となっていた。
「ああ、本体達はとうとう水以外の加護を得る事に成功したようだ」
本体が受けた加護は、離れている分身体にも影響がある。
当然、闇の大精霊の時も、今回の火の大精霊も、ハッキリと伝わっていた。
分身体アラヤとハウンは、流石に焦りを感じていた。
外界の情報は一切入らず、ただひたすらに水の大精霊に気に入られる事を心がける毎日。
しかし成果はなく、未だに加護を得ることができなかった。
「どう致しますか?」
「どうするも無いよね。味方に付けた中位精霊達を使ったとしても、アーパス様が直接海流を動かしている以上、この潜水遺跡から脱出不可能だし…。そもそも、俺達は加護を受ける目的がある。ただ、この禁呪魔導書を本体へと渡さないといけない」
「私も念話を飛ばしてはいるのですが、位置も人物も捕捉できていません」
「まぁ、今はこのやり方に頼るしか無いかな」
アラヤは部屋を出ると地下に向かう。この遺跡の地下にはアーパスの眷属である巨大イカの魔物クラーケンが居る。
クラーケン(彼女)は、祭壇を寝床にしているのだが、遺跡内はアラヤ達に配慮したアーパスの命令により、お化け海藻による酸素が確保されている。(海藻の光合成はアラヤが協力している)
しかし、彼女はそれが嫌いだった。睡眠をする際には海水に浸りたいと、遺跡に進水口を作ったのだ。
おかげで祭壇は海水に埋もれ、クラーケンのウォーターベッドとなっていた。
「やぁ、クラーケン。今日も良いかな?」
寝ていたクラーケンは、軽く触腕を振りまた眠りにつく。アラヤは海水に入ると、ギリギリ腕が入る進水口へと腕を突っ込んで微細な魔力玉を放出する。
しばらくすると、竜鱗で覆われた手にガチガチと歯が当たる感触がきた。
「かかった!」
魔力玉に釣られてやってきたギャングウツボ(魔物)の顎を、そのまま掴み引っ張り出す。
ニュルッと穴から出たウツボを、アイスで急速冷凍した。
『アンタも好きねぇ?味が淡白だから私はそんなに好きじゃないわぁ』
「なんだ起きてたのか。味付け次第では美味しいんだよ?君が足を一本分けてくれる方がありがたいんだけどね?」
『冗談じゃないわ。私の足はそんな蛇っころみたいな食べ物じゃないのよ?』
失礼しちゃうわ!とクラーケンが触腕をバタつかせるので、アラヤはさっさと退室した。
「ふぅ、今日の分は結構撒けたかな」
アラヤは、最初からウツボ目的でクラーケンの寝床に行った訳ではない。狙いは、進水口から大量の魔力玉を放出することにあった。
そうすることで、アラヤの魔力玉の痕跡を海流に残す為である。そのおかげで、魔導感知により地形が少しだけ分かるのだ。
もちろん、新たな魔導書を持った分身体を穴から出す方法もあるが、穴から出た先がどんな状況か分からない以上、危険過ぎる行為だ。
部屋に戻ったアラヤは、氷漬けのウツボを床に置くと、ハウンは調理器具の準備を始めた。
「この辺りには、大きな海溝も海底火山も隆起した地形は無いね。初めて通る道のようだ」
「同じ海域は3日。その後は他の海域に移動という事でしょうか?」
ハウンは話を聞きながらも、ウツボをヒートアップで解凍し、下処理を終えた後は柵切りにして亜空間に収納している。
「大陸からは離れて移動している事には変わらないね」
「いっそのこと、眷属竜ガルグイユに本体様に魔導書をお渡しできないか伺っては?」
アーパスの眷属竜ガルグイユは、シロナガスクジラに似た魚竜種だ。その大きさは自在に変えられるようで、遺跡に入る際は小さくなっている。
「いや、言伝や手紙を頼もうとした事はあるけど、アーパス様の命令以外は聞く耳持たないよ」
それに、俺が話掛けても凄い無口なんだよなぁ。ひょっとして俺、嫌われてるのかな?
『アラヤ、アーパス様がお呼びです』
アーパスの世話係をしている水の中位精霊がやって来た。
どうやら、今日の我儘が決まったらしい。
「分かりました」
アーパスは、アラヤ達がこの遺跡に残ることを決めてから、毎日一つ我儘を言ってくる。
その内容は、「頭髪を剃って見せて?」や「この数(プール大程に敷き詰めた)の生魚を食べれる?」の簡単なものから、「ブーちゃん(土の大精霊)が喜ぶ様な魚料理を教えなさい」や「闇の大精霊ってどういう子?」といった難しいものまでと幅広い。
「お待たせしました」
アーパスの下に着いたアラヤは甲斐甲斐しく片膝をつき頭を下げる。
『来たわね。今日はね、貴方に合わせたい者がいるのよ』
おや?今日は我儘じゃなかったか、と油断していると、中位精霊が連れて来たのはアラヤの契約精霊であるシレネッタだった。
「シレネッタ⁉︎」
『ハハ、久しぶりね、分身体君』
シレネッタは、両腕を変わった骨の手錠で拘束されていた。捕まったということか?
『アラヤ、この子はやはりアンタの契約精霊で間違いないの?』
「はい。彼女はシレネッタです。でも、何故彼女がこの遺跡に?」
『この遺跡の後を、最近着いて来ていたのよ。アンタが招いたんでしょう?』
「いえ、私達が外に出ていないことは知っていますよね?念話が届かないこの遺跡から彼女を呼ぶなんてできないですよ?」
実際に召喚が有効かどうかは毎日試している。今日まで、念話が届く範囲にはいなかった筈だ。
『あくまでも、彼女自身で私の住処を探し当てというわけ?』
『そ、そうです、アーパス様!偶然ではありますが、アーパス様の海流を見つけて追いかけて来たんです』
シレネッタはオドオドしながらも、偶然見つけた事を強調している。だが実際には、アラヤが毎日ばら撒いていた魔力玉の痕跡を辿り追いかけて来ていたのだ。
『そっちには本体が居るでしょう?わざわざこっちのアラヤに会いに来たのよ?』
アーパスが疑うのも最もだ。そもそも、彼女は単独で来たのだろうか?
『そ、それは、アーパス様とお話しがしたくて…』
『あら、私と?』
アーパスは少し嬉しそうに笑い、シレネッタの拘束を解くように命じる。
『せっかく来たのだから、貴女もここで暮らしなさいよ?』
『それはお断り!』
拘束を解かれたシレネッタの胸元から、大きな気泡が出て来た。
その泡はみるみる形を変えていく。
『まさかっ⁉︎海中に直接貴女が来たの⁉︎風の大精霊‼︎』
泡の形が人型になると、ハッキリとその姿がエアリエルだと分かった。
『ああ、来てやったよ、アーパス。私の子を返してもらいにね!』
『大気が無い海中に貴女が来るなんてね。無謀なまねをしてまで、アラヤを取られた事が許せなかったのかしら?でもお生憎様、アラヤとそのお供の娘は、既にこの遺跡に残ることを誓っているぞ?』
誓い?
確かに、ドウアンを逃がす時にハウンと2人でこの遺跡から逃げないと約束はした。まさか、それが誓いの呪文のように縛りのあるものだったのか?
「エアリエル様、申し訳ありません…」
『くっ…誓いを立てていたのなら、それはもう破れない。でもそれならば、貴女の対応は余りにも不当だ。大精霊に誓いを立てた者達に対して、何故加護を与えない?』
『べ、別に、与えてやらないとは言ってないわ?ただ、この子が大抵のことは全部できちゃうから、私の加護を与えるタイミングが無いだけ…あっ、違うわよ⁉︎別に私の加護の価値を高めようだなんて考えてはないんだからね⁉︎』
「エッ?じゃあ、今までの無理難題は…?」
時折不可能だろと思う我儘があったのは、ワザと困らせて彼女に泣きつくのを待っていたという事なのか?
それで、仕方ないから加護あげるわ。みたいな流れにしようと?
「俺の頑張りが逆効果に…?」
『フム、そうしている間に、残る大精霊の加護はアーパスが最後となった』
ガックリと項垂れるアラヤに、シレネッタが優しく寄り添う。
『今、外では大変な事になっているの。近いうちに風の禁呪魔導書が必要になってくる』
「ああ、俺が持ってるよ。待って、今濡れないようにするから」
亜空間収納から取り出した禁呪魔導書に、保護粘膜とバブルショットで包み、更に上から魔鉱石で包む。
「これを頼むよ」
『ええ、任せておいて』
禁呪魔導書はシレネッタが届けてくれるだろう。だが問題は、今目の前で起きている大精霊同士の口喧嘩だ。
『う、うっさいわね!そもそもアンタがブーちゃんと…!』
『はぁ?ゲーブとは友達なだけ!それに、ゲーブからしたら、自分が認めたアラヤに加護を与えない貴女を、疑問に思っているだろうな!』
『くっ、分かっているわよ!あの子が凄い事くらい!でも、貴女の思い通りになるのが嫌なの!』
アーパスはイライラとしだし、遺跡が揺れ出した。彼女が操る海流の勢いが不安定になったようだ。
『ええぃ、サッサと加護を与えんか!』
エアリエルがアーパスの肩を掴み、2人は暴れ出した。世話係の中位精霊が止めようとするも、弾き出されてしまう。
これはヤバイと、アラヤも止めようした矢先、2人がアラヤに突っ込んで来た。
『ああっ⁉︎間違っーー‼︎⁉︎』
アラヤの胸板にアーパスの手が触れていて、水色の光が全身を包み込んだ。
『ふぅ、どうやら加護を与えたようね?』
エアリエルはドヤ顔で喜んでいるけど、無理矢理もいいところだ。
現に、アーパスは納得のいかない結果に肩を震わせている。
『…するのよ?』
『え?』
『どうするのよ!私の初契約あげちゃったじゃないのよ‼︎⁉︎』
『「ええっ‼︎⁉︎」』
どうやら、加護ではなく、契約者としての加護を与えられてしまったようだ。しかも初めてだったみたい…。
泣き出しそうになるアーパスに対し、アラヤとエアリエルは、互いに見て再び驚きの声を上げるのだった。
元は水堅牢により閉じ込められていた一室が、今や家具が揃い、多少は住みやすい部屋となっていた。
「ああ、本体達はとうとう水以外の加護を得る事に成功したようだ」
本体が受けた加護は、離れている分身体にも影響がある。
当然、闇の大精霊の時も、今回の火の大精霊も、ハッキリと伝わっていた。
分身体アラヤとハウンは、流石に焦りを感じていた。
外界の情報は一切入らず、ただひたすらに水の大精霊に気に入られる事を心がける毎日。
しかし成果はなく、未だに加護を得ることができなかった。
「どう致しますか?」
「どうするも無いよね。味方に付けた中位精霊達を使ったとしても、アーパス様が直接海流を動かしている以上、この潜水遺跡から脱出不可能だし…。そもそも、俺達は加護を受ける目的がある。ただ、この禁呪魔導書を本体へと渡さないといけない」
「私も念話を飛ばしてはいるのですが、位置も人物も捕捉できていません」
「まぁ、今はこのやり方に頼るしか無いかな」
アラヤは部屋を出ると地下に向かう。この遺跡の地下にはアーパスの眷属である巨大イカの魔物クラーケンが居る。
クラーケン(彼女)は、祭壇を寝床にしているのだが、遺跡内はアラヤ達に配慮したアーパスの命令により、お化け海藻による酸素が確保されている。(海藻の光合成はアラヤが協力している)
しかし、彼女はそれが嫌いだった。睡眠をする際には海水に浸りたいと、遺跡に進水口を作ったのだ。
おかげで祭壇は海水に埋もれ、クラーケンのウォーターベッドとなっていた。
「やぁ、クラーケン。今日も良いかな?」
寝ていたクラーケンは、軽く触腕を振りまた眠りにつく。アラヤは海水に入ると、ギリギリ腕が入る進水口へと腕を突っ込んで微細な魔力玉を放出する。
しばらくすると、竜鱗で覆われた手にガチガチと歯が当たる感触がきた。
「かかった!」
魔力玉に釣られてやってきたギャングウツボ(魔物)の顎を、そのまま掴み引っ張り出す。
ニュルッと穴から出たウツボを、アイスで急速冷凍した。
『アンタも好きねぇ?味が淡白だから私はそんなに好きじゃないわぁ』
「なんだ起きてたのか。味付け次第では美味しいんだよ?君が足を一本分けてくれる方がありがたいんだけどね?」
『冗談じゃないわ。私の足はそんな蛇っころみたいな食べ物じゃないのよ?』
失礼しちゃうわ!とクラーケンが触腕をバタつかせるので、アラヤはさっさと退室した。
「ふぅ、今日の分は結構撒けたかな」
アラヤは、最初からウツボ目的でクラーケンの寝床に行った訳ではない。狙いは、進水口から大量の魔力玉を放出することにあった。
そうすることで、アラヤの魔力玉の痕跡を海流に残す為である。そのおかげで、魔導感知により地形が少しだけ分かるのだ。
もちろん、新たな魔導書を持った分身体を穴から出す方法もあるが、穴から出た先がどんな状況か分からない以上、危険過ぎる行為だ。
部屋に戻ったアラヤは、氷漬けのウツボを床に置くと、ハウンは調理器具の準備を始めた。
「この辺りには、大きな海溝も海底火山も隆起した地形は無いね。初めて通る道のようだ」
「同じ海域は3日。その後は他の海域に移動という事でしょうか?」
ハウンは話を聞きながらも、ウツボをヒートアップで解凍し、下処理を終えた後は柵切りにして亜空間に収納している。
「大陸からは離れて移動している事には変わらないね」
「いっそのこと、眷属竜ガルグイユに本体様に魔導書をお渡しできないか伺っては?」
アーパスの眷属竜ガルグイユは、シロナガスクジラに似た魚竜種だ。その大きさは自在に変えられるようで、遺跡に入る際は小さくなっている。
「いや、言伝や手紙を頼もうとした事はあるけど、アーパス様の命令以外は聞く耳持たないよ」
それに、俺が話掛けても凄い無口なんだよなぁ。ひょっとして俺、嫌われてるのかな?
『アラヤ、アーパス様がお呼びです』
アーパスの世話係をしている水の中位精霊がやって来た。
どうやら、今日の我儘が決まったらしい。
「分かりました」
アーパスは、アラヤ達がこの遺跡に残ることを決めてから、毎日一つ我儘を言ってくる。
その内容は、「頭髪を剃って見せて?」や「この数(プール大程に敷き詰めた)の生魚を食べれる?」の簡単なものから、「ブーちゃん(土の大精霊)が喜ぶ様な魚料理を教えなさい」や「闇の大精霊ってどういう子?」といった難しいものまでと幅広い。
「お待たせしました」
アーパスの下に着いたアラヤは甲斐甲斐しく片膝をつき頭を下げる。
『来たわね。今日はね、貴方に合わせたい者がいるのよ』
おや?今日は我儘じゃなかったか、と油断していると、中位精霊が連れて来たのはアラヤの契約精霊であるシレネッタだった。
「シレネッタ⁉︎」
『ハハ、久しぶりね、分身体君』
シレネッタは、両腕を変わった骨の手錠で拘束されていた。捕まったということか?
『アラヤ、この子はやはりアンタの契約精霊で間違いないの?』
「はい。彼女はシレネッタです。でも、何故彼女がこの遺跡に?」
『この遺跡の後を、最近着いて来ていたのよ。アンタが招いたんでしょう?』
「いえ、私達が外に出ていないことは知っていますよね?念話が届かないこの遺跡から彼女を呼ぶなんてできないですよ?」
実際に召喚が有効かどうかは毎日試している。今日まで、念話が届く範囲にはいなかった筈だ。
『あくまでも、彼女自身で私の住処を探し当てというわけ?』
『そ、そうです、アーパス様!偶然ではありますが、アーパス様の海流を見つけて追いかけて来たんです』
シレネッタはオドオドしながらも、偶然見つけた事を強調している。だが実際には、アラヤが毎日ばら撒いていた魔力玉の痕跡を辿り追いかけて来ていたのだ。
『そっちには本体が居るでしょう?わざわざこっちのアラヤに会いに来たのよ?』
アーパスが疑うのも最もだ。そもそも、彼女は単独で来たのだろうか?
『そ、それは、アーパス様とお話しがしたくて…』
『あら、私と?』
アーパスは少し嬉しそうに笑い、シレネッタの拘束を解くように命じる。
『せっかく来たのだから、貴女もここで暮らしなさいよ?』
『それはお断り!』
拘束を解かれたシレネッタの胸元から、大きな気泡が出て来た。
その泡はみるみる形を変えていく。
『まさかっ⁉︎海中に直接貴女が来たの⁉︎風の大精霊‼︎』
泡の形が人型になると、ハッキリとその姿がエアリエルだと分かった。
『ああ、来てやったよ、アーパス。私の子を返してもらいにね!』
『大気が無い海中に貴女が来るなんてね。無謀なまねをしてまで、アラヤを取られた事が許せなかったのかしら?でもお生憎様、アラヤとそのお供の娘は、既にこの遺跡に残ることを誓っているぞ?』
誓い?
確かに、ドウアンを逃がす時にハウンと2人でこの遺跡から逃げないと約束はした。まさか、それが誓いの呪文のように縛りのあるものだったのか?
「エアリエル様、申し訳ありません…」
『くっ…誓いを立てていたのなら、それはもう破れない。でもそれならば、貴女の対応は余りにも不当だ。大精霊に誓いを立てた者達に対して、何故加護を与えない?』
『べ、別に、与えてやらないとは言ってないわ?ただ、この子が大抵のことは全部できちゃうから、私の加護を与えるタイミングが無いだけ…あっ、違うわよ⁉︎別に私の加護の価値を高めようだなんて考えてはないんだからね⁉︎』
「エッ?じゃあ、今までの無理難題は…?」
時折不可能だろと思う我儘があったのは、ワザと困らせて彼女に泣きつくのを待っていたという事なのか?
それで、仕方ないから加護あげるわ。みたいな流れにしようと?
「俺の頑張りが逆効果に…?」
『フム、そうしている間に、残る大精霊の加護はアーパスが最後となった』
ガックリと項垂れるアラヤに、シレネッタが優しく寄り添う。
『今、外では大変な事になっているの。近いうちに風の禁呪魔導書が必要になってくる』
「ああ、俺が持ってるよ。待って、今濡れないようにするから」
亜空間収納から取り出した禁呪魔導書に、保護粘膜とバブルショットで包み、更に上から魔鉱石で包む。
「これを頼むよ」
『ええ、任せておいて』
禁呪魔導書はシレネッタが届けてくれるだろう。だが問題は、今目の前で起きている大精霊同士の口喧嘩だ。
『う、うっさいわね!そもそもアンタがブーちゃんと…!』
『はぁ?ゲーブとは友達なだけ!それに、ゲーブからしたら、自分が認めたアラヤに加護を与えない貴女を、疑問に思っているだろうな!』
『くっ、分かっているわよ!あの子が凄い事くらい!でも、貴女の思い通りになるのが嫌なの!』
アーパスはイライラとしだし、遺跡が揺れ出した。彼女が操る海流の勢いが不安定になったようだ。
『ええぃ、サッサと加護を与えんか!』
エアリエルがアーパスの肩を掴み、2人は暴れ出した。世話係の中位精霊が止めようとするも、弾き出されてしまう。
これはヤバイと、アラヤも止めようした矢先、2人がアラヤに突っ込んで来た。
『ああっ⁉︎間違っーー‼︎⁉︎』
アラヤの胸板にアーパスの手が触れていて、水色の光が全身を包み込んだ。
『ふぅ、どうやら加護を与えたようね?』
エアリエルはドヤ顔で喜んでいるけど、無理矢理もいいところだ。
現に、アーパスは納得のいかない結果に肩を震わせている。
『…するのよ?』
『え?』
『どうするのよ!私の初契約あげちゃったじゃないのよ‼︎⁉︎』
『「ええっ‼︎⁉︎」』
どうやら、加護ではなく、契約者としての加護を与えられてしまったようだ。しかも初めてだったみたい…。
泣き出しそうになるアーパスに対し、アラヤとエアリエルは、互いに見て再び驚きの声を上げるのだった。
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