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第三十四話(完)
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リリーのパン屋はオープンしてみれば、大盛況だった。
オープン初日はキース、ライオネル、エドモンドにパンをプレゼントして無くなったのだが、次の日からはパンが夕方前には売り切れてしまうほどだった。
と、言うのも初日にキース、ライオネル、エドモンドが店にやってきた事が広まり、デルヴィーニュ公爵家の後ろ楯もある店なので安心で、かつ、今まで見たこともないパンが並んでいるため、噂が噂を呼び、領都の女性に大人気になったのだった。
それから、時間が経たないうちに評判が国中に伝わり、王都に出店しないリリーのパン屋で話題のパンを買うためにわざわざ貴族がデルヴィーニュ家の領地に観光を兼ねてやってくるまでになった。
この国で今まで見たことないようなパンをいろいろと作るリリーのパン屋はあっという間に国一と言われるまでになったのだった。
パン屋のオープンから半年経ち、リリーとニールは結婚式を挙げることになった。忙しい合間を縫って二人は結婚式の準備をしたのだった。
結婚式の当日、空は青く晴れ渡り、二人の結婚を祝福しているような恵まれた天気だった。
領都のそれほど大きくない教会でマリー、マイケル、キースの三人が出席して結婚式が行われる。
教会の控室ではリリーがマリーによって胸元から腕までをレースで隠すような純白のシンプルなマーメイドラインのドレスを着せてもらっていたのだった。髪はいつもと違い両サイドを編み込んだアップスタイルで、両耳の後ろに花を飾ってもらっていた。
リリーの様子を見に来たキースとマイケルは普段と違うリリーの姿に言葉を無くす。初々しいリリーの花嫁姿に二人は涙ぐむのだった。
キースはライオネルとリリアの結婚式にも出席していたので、その式のいろいろな意味での荒れっぷりを知っていたのだった。その時とは違う今日のリリーの様子を見て、リリーが幸せになれそうで良かったなぁと式の前だと言うのに涙ぐんでしまったのだった。
マイケルは何故かリリーの父になったような気持ちで感極まり涙ぐむ。
そんな二人を見たマリーは二人を追い出しにかかるのだった。
「まだ、準備中なんだから、式までのお楽しみと言う事で部屋の外に出ておくれよ!!」
「マリー、済まない。気になってしまって……」
そう言うキースにマイケルも同意する。
「なんだか娘を嫁に出す気持ちになってしまって……」
二人とも心からリリーの事が心配だったようで、それを聞いたリリーは嬉しそうに二人に微笑むのだった。
教会のチャペル内には、厳かな空気が流れ、神父によって式が執り行われようとしているのだった。
リリーがダイヤモンドリリーで作られたブーケを手に、エスコート役のマイケルに付き添われ、一礼をしてバージンロードを入場してくる。
神父の手前でリリーを待つニールの普段見ることのない白の礼服姿がリリーにはなんだかまぶしくて正視する事ができなかった。ニールの胸元にはリリーのブーケとおそろいのダイヤモンドリリーのブーケトニアが飾られている。リリーはニールと初めておそろいの物を付けていることが嬉しくて自然と笑みが溢れてくるのだった。
リリーがマイケルに付き添われ、一歩一歩踏みしめてニールの所までやってきた。そして、マイケルからニールにバトンタッチされる。そして、ニールとリリーは神父の前へ進む。
神父によって挙式開始の宣言がなされるのだった。そして、神父が祝福を述べ、二人は誓約し、指輪を交換する。
式は粛々と進む。
「それでは誓いの口づけを」
神父によって促され、ニールはリリーのベールを上げる。リリーと目が合ったニールは嬉しそうにリリーに微笑んだかと思うと、リリーの頬に手を添えて上を向かせて優しい口づけをする。
リリーは二度目とはいえ、普通、人前ですることではないので、緊張から固くなっているのだった。
結婚式なので、軽く触れるだけだとその場にはいた者は思っていたが、ニールはリリーを離そうとはしなかった。
コホンッ
神父の咳払いで我に返ったニールはソッとリリーの唇から自分の唇を離すのだった。そして、軽くリリーを抱き締めて、リリーに小さな声でささやくのだった。
「やっと手にいれた。もう離さないから」
ニールはそう言って、リリーに笑いかけ、そっと離れたのだった。言われたリリーは顔を赤くする。
「これにて二人は晴れて夫婦となられました」
神父の声とともに教会内に祝福の鐘の音が鳴り響く。
出席者は三人だけだったが、ニールとリリーは幸せそう。
式が終わり、教会の外に五人は出てきたのだった。
リリーはキースに頭を下げた。
「キース様、忙しい中、式に来て頂きありがとうございました。」
そう言って、リリーは持っていたブーケをキースに渡すのだった。
「え?俺?俺、男だけど?」
花嫁のブーケを貰うと次に結婚できると言うジンクスはこの世界にもあるのだが、普通は未婚の女性が貰う物だった。未婚とは言え、男であるキースは渡されたことに焦って、マイケルとマリーに助けを求める様に見る。
リリーはためらいなくうなずくのだった。
「ええ。でも、私に幸せを運んでくれたキース様に渡したかったんです」
マリーは焦るキースの様子に笑いをこらえるのが必死だった。
「せっかくだから、貰っておやりよ」
マイケルもキースの様子を見て、ニヤニヤとしている。
「次はキース様の番だな」
ニールは嬉しそうな顔をして参戦してきたのだった。
「愛する人と結婚するって、いいですよ。キース様、頑張って相手を見つけてください」
困ったように渋々ダイヤモンドリリーのブーケを抱えるキースを四人は暖かく見守るのだった。
◇◇◇◇
結婚してから更にリリーのパン屋は繁盛して、大忙し。リリーはニールに支えられながら、パン作りに精を出した。そして、それから二年後、ニールとの間に子供ができ、リリーとニールは子育てに、マイケルとマリーはじじばばとして、大忙し。
そして、リリーとニールは生涯共に過ごしたのだった。
END
※※※※※※
最後まで読んでいただいてありがとうございましたm(_ _)m
感想やお気に入りに登録ありがとうございましたm(_ _)m 嬉しかったです。
今回、目標に「毎日更新」を心の中でこそっと上げていました。
思ったより話が長くなり、達成が危うい時がありました。
無事達成できて良かったです。
ニールのことが意外とほったらかしなので、カテゴリーの「恋愛」をあまり生かせてませんでした。
一週間ぐらいで(→もう少しかかりそうですm(_ _)m)、ニールsideを投稿しようと思っていますが、出来なかったらいけないので、(初心者過ぎて書き上げる自信がないもので……そのうち投稿できるとは思うのですが……。)一先ず完結にさせていただきます。ありがとうございましたm(_ _)m
オープン初日はキース、ライオネル、エドモンドにパンをプレゼントして無くなったのだが、次の日からはパンが夕方前には売り切れてしまうほどだった。
と、言うのも初日にキース、ライオネル、エドモンドが店にやってきた事が広まり、デルヴィーニュ公爵家の後ろ楯もある店なので安心で、かつ、今まで見たこともないパンが並んでいるため、噂が噂を呼び、領都の女性に大人気になったのだった。
それから、時間が経たないうちに評判が国中に伝わり、王都に出店しないリリーのパン屋で話題のパンを買うためにわざわざ貴族がデルヴィーニュ家の領地に観光を兼ねてやってくるまでになった。
この国で今まで見たことないようなパンをいろいろと作るリリーのパン屋はあっという間に国一と言われるまでになったのだった。
パン屋のオープンから半年経ち、リリーとニールは結婚式を挙げることになった。忙しい合間を縫って二人は結婚式の準備をしたのだった。
結婚式の当日、空は青く晴れ渡り、二人の結婚を祝福しているような恵まれた天気だった。
領都のそれほど大きくない教会でマリー、マイケル、キースの三人が出席して結婚式が行われる。
教会の控室ではリリーがマリーによって胸元から腕までをレースで隠すような純白のシンプルなマーメイドラインのドレスを着せてもらっていたのだった。髪はいつもと違い両サイドを編み込んだアップスタイルで、両耳の後ろに花を飾ってもらっていた。
リリーの様子を見に来たキースとマイケルは普段と違うリリーの姿に言葉を無くす。初々しいリリーの花嫁姿に二人は涙ぐむのだった。
キースはライオネルとリリアの結婚式にも出席していたので、その式のいろいろな意味での荒れっぷりを知っていたのだった。その時とは違う今日のリリーの様子を見て、リリーが幸せになれそうで良かったなぁと式の前だと言うのに涙ぐんでしまったのだった。
マイケルは何故かリリーの父になったような気持ちで感極まり涙ぐむ。
そんな二人を見たマリーは二人を追い出しにかかるのだった。
「まだ、準備中なんだから、式までのお楽しみと言う事で部屋の外に出ておくれよ!!」
「マリー、済まない。気になってしまって……」
そう言うキースにマイケルも同意する。
「なんだか娘を嫁に出す気持ちになってしまって……」
二人とも心からリリーの事が心配だったようで、それを聞いたリリーは嬉しそうに二人に微笑むのだった。
教会のチャペル内には、厳かな空気が流れ、神父によって式が執り行われようとしているのだった。
リリーがダイヤモンドリリーで作られたブーケを手に、エスコート役のマイケルに付き添われ、一礼をしてバージンロードを入場してくる。
神父の手前でリリーを待つニールの普段見ることのない白の礼服姿がリリーにはなんだかまぶしくて正視する事ができなかった。ニールの胸元にはリリーのブーケとおそろいのダイヤモンドリリーのブーケトニアが飾られている。リリーはニールと初めておそろいの物を付けていることが嬉しくて自然と笑みが溢れてくるのだった。
リリーがマイケルに付き添われ、一歩一歩踏みしめてニールの所までやってきた。そして、マイケルからニールにバトンタッチされる。そして、ニールとリリーは神父の前へ進む。
神父によって挙式開始の宣言がなされるのだった。そして、神父が祝福を述べ、二人は誓約し、指輪を交換する。
式は粛々と進む。
「それでは誓いの口づけを」
神父によって促され、ニールはリリーのベールを上げる。リリーと目が合ったニールは嬉しそうにリリーに微笑んだかと思うと、リリーの頬に手を添えて上を向かせて優しい口づけをする。
リリーは二度目とはいえ、普通、人前ですることではないので、緊張から固くなっているのだった。
結婚式なので、軽く触れるだけだとその場にはいた者は思っていたが、ニールはリリーを離そうとはしなかった。
コホンッ
神父の咳払いで我に返ったニールはソッとリリーの唇から自分の唇を離すのだった。そして、軽くリリーを抱き締めて、リリーに小さな声でささやくのだった。
「やっと手にいれた。もう離さないから」
ニールはそう言って、リリーに笑いかけ、そっと離れたのだった。言われたリリーは顔を赤くする。
「これにて二人は晴れて夫婦となられました」
神父の声とともに教会内に祝福の鐘の音が鳴り響く。
出席者は三人だけだったが、ニールとリリーは幸せそう。
式が終わり、教会の外に五人は出てきたのだった。
リリーはキースに頭を下げた。
「キース様、忙しい中、式に来て頂きありがとうございました。」
そう言って、リリーは持っていたブーケをキースに渡すのだった。
「え?俺?俺、男だけど?」
花嫁のブーケを貰うと次に結婚できると言うジンクスはこの世界にもあるのだが、普通は未婚の女性が貰う物だった。未婚とは言え、男であるキースは渡されたことに焦って、マイケルとマリーに助けを求める様に見る。
リリーはためらいなくうなずくのだった。
「ええ。でも、私に幸せを運んでくれたキース様に渡したかったんです」
マリーは焦るキースの様子に笑いをこらえるのが必死だった。
「せっかくだから、貰っておやりよ」
マイケルもキースの様子を見て、ニヤニヤとしている。
「次はキース様の番だな」
ニールは嬉しそうな顔をして参戦してきたのだった。
「愛する人と結婚するって、いいですよ。キース様、頑張って相手を見つけてください」
困ったように渋々ダイヤモンドリリーのブーケを抱えるキースを四人は暖かく見守るのだった。
◇◇◇◇
結婚してから更にリリーのパン屋は繁盛して、大忙し。リリーはニールに支えられながら、パン作りに精を出した。そして、それから二年後、ニールとの間に子供ができ、リリーとニールは子育てに、マイケルとマリーはじじばばとして、大忙し。
そして、リリーとニールは生涯共に過ごしたのだった。
END
※※※※※※
最後まで読んでいただいてありがとうございましたm(_ _)m
感想やお気に入りに登録ありがとうございましたm(_ _)m 嬉しかったです。
今回、目標に「毎日更新」を心の中でこそっと上げていました。
思ったより話が長くなり、達成が危うい時がありました。
無事達成できて良かったです。
ニールのことが意外とほったらかしなので、カテゴリーの「恋愛」をあまり生かせてませんでした。
一週間ぐらいで(→もう少しかかりそうですm(_ _)m)、ニールsideを投稿しようと思っていますが、出来なかったらいけないので、(初心者過ぎて書き上げる自信がないもので……そのうち投稿できるとは思うのですが……。)一先ず完結にさせていただきます。ありがとうございましたm(_ _)m
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