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第一話
「はぁ……」
ため息をつきながら、顔にかかる汗を腕で乱暴に拭うフロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。騎士としての体を持ちつつも、容姿端麗のライオネルだが、今は見る影もなくボロボロになっていた。
と言うのも、一か月前、自分の婚約者を親の決めたオフィーリア・ノーリッシュ公爵令嬢から自分の恋人リリア・バインズ男爵令嬢に変えるため婚約破棄をしようとした結果、国王メルヴィン・エドワード・ナッシュ・フロナディアにリリア・バインズとの婚約を許可されたものの、一人息子の馬鹿な行動に怒った父であるデルヴィーニュ公爵に王国の北に広がる荒涼とした大地にある荒くれ者の集まる砦へ一年間一兵卒として送り込まれたのだった。
北の砦へ配属されですぐ雑用を言いつけられ、今は砦内で使う薪の薪割りをしているところだった。本来であれば、公爵家の嫡男の仕事ではなかったが、脳筋のためか何も考えずに言われるままに薪を割っているのだった。
「デルヴィーニュ、薪割りばかりが仕事じゃあない。洗濯は?」
やってきたのは、身長二メートルはあろうかと言う身長を持ち筋骨隆々で一重の鋭い瞳とあちこちに激戦の傷跡が残っている迫力のある顔を持つ北の砦の隊長エドモンド・ウィアー。
「隊長、もう少しで薪割りが終わるのでそれから洗濯しようと思ってました。」
「遅い! ごちゃごちゃ言ってないでさっさとしろ!!」
ギロッとにらむ隊長に怯みもせず、ライオネルはにこやかに答えた。
「はい!!」
薪割りを終えると洗濯、掃除と北の砦で一番下っ端の扱いであるライオネルの一日は忙しかった。
そんな忙しい中でも訓練は欠かせない。
一対一で本来打ち合いをするのだが、上位貴族の嫡男をいびろうとする兵士達に仕組まれて一対多数で訓練する日も少なくない。それでも、ライオネルは不平を言わず剣を打ち込む。
いろいろとやらかしてここに来たのだが、そもそも、王国で一二を競う剣の腕を持つライオネルに敵うものはいなかった。
「くっそっ!」
悔しがる兵士の一人にライオネルが一言。
「右足に怪我をしてかばってないでしょうか?」
「!!」
見抜かれた事に驚いた兵士は言葉を返すことが出来ない。
「庇うように動くので少し隙ができてます。隙を隠すようにされた方がいいかと……」
「今の立ち会いでわかったのか?」
「ええ、まぁ」
事も無げに答えるライオネル。
聞いてほしいのか兵士は言葉を続けた。
「右足に古傷があって踏み込む時痛むことがある。それで、隙ができるかもしれん。でも、それを指摘しない方が次の訓練の時、自分が有利になるんじゃあないか?」
不思議そうに聞く兵士にライオネルはきっぱり答えた。
「いいえ、相手が強い方が自分の訓練にもなります」
兵士は呆れた表情を見せた。
「馬鹿か?正直者か?貴族なら尚更、自分の優位を守るためにも言わないものだと思うのだが……」
ライオネルはためらいなく答えた。
「強い相手と訓練した方が自分の鍛練になると思います」
自分の有利になる相手の弱点を隠すことを考えもしてないライオネルに、話を聞いていた兵士達は笑い出す。
不思議そうに首を傾げるライオネル。
「公爵家の人間って鼻持ちならない奴だと思っていたが、お前本当に公爵家の人間か?」
「鼻持ちならないかどうかはわかりませんが、一応公爵家の人間ですが……」
またまた兵士達は爆笑するのだった。
「お前、面白いやつだなぁ」
「面白いですか?」
「もう少し思慮深いと思ったが、馬鹿正直すぎる」
「そうですか?」
爆笑する兵士達につられて、ライオネルも頭を掻きながら、笑うのだった。
下っ端の兵士達に気に入られたライオネルは徐々に砦の中で自分の居場所を見つけ始めたのだった。
ため息をつきながら、顔にかかる汗を腕で乱暴に拭うフロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。騎士としての体を持ちつつも、容姿端麗のライオネルだが、今は見る影もなくボロボロになっていた。
と言うのも、一か月前、自分の婚約者を親の決めたオフィーリア・ノーリッシュ公爵令嬢から自分の恋人リリア・バインズ男爵令嬢に変えるため婚約破棄をしようとした結果、国王メルヴィン・エドワード・ナッシュ・フロナディアにリリア・バインズとの婚約を許可されたものの、一人息子の馬鹿な行動に怒った父であるデルヴィーニュ公爵に王国の北に広がる荒涼とした大地にある荒くれ者の集まる砦へ一年間一兵卒として送り込まれたのだった。
北の砦へ配属されですぐ雑用を言いつけられ、今は砦内で使う薪の薪割りをしているところだった。本来であれば、公爵家の嫡男の仕事ではなかったが、脳筋のためか何も考えずに言われるままに薪を割っているのだった。
「デルヴィーニュ、薪割りばかりが仕事じゃあない。洗濯は?」
やってきたのは、身長二メートルはあろうかと言う身長を持ち筋骨隆々で一重の鋭い瞳とあちこちに激戦の傷跡が残っている迫力のある顔を持つ北の砦の隊長エドモンド・ウィアー。
「隊長、もう少しで薪割りが終わるのでそれから洗濯しようと思ってました。」
「遅い! ごちゃごちゃ言ってないでさっさとしろ!!」
ギロッとにらむ隊長に怯みもせず、ライオネルはにこやかに答えた。
「はい!!」
薪割りを終えると洗濯、掃除と北の砦で一番下っ端の扱いであるライオネルの一日は忙しかった。
そんな忙しい中でも訓練は欠かせない。
一対一で本来打ち合いをするのだが、上位貴族の嫡男をいびろうとする兵士達に仕組まれて一対多数で訓練する日も少なくない。それでも、ライオネルは不平を言わず剣を打ち込む。
いろいろとやらかしてここに来たのだが、そもそも、王国で一二を競う剣の腕を持つライオネルに敵うものはいなかった。
「くっそっ!」
悔しがる兵士の一人にライオネルが一言。
「右足に怪我をしてかばってないでしょうか?」
「!!」
見抜かれた事に驚いた兵士は言葉を返すことが出来ない。
「庇うように動くので少し隙ができてます。隙を隠すようにされた方がいいかと……」
「今の立ち会いでわかったのか?」
「ええ、まぁ」
事も無げに答えるライオネル。
聞いてほしいのか兵士は言葉を続けた。
「右足に古傷があって踏み込む時痛むことがある。それで、隙ができるかもしれん。でも、それを指摘しない方が次の訓練の時、自分が有利になるんじゃあないか?」
不思議そうに聞く兵士にライオネルはきっぱり答えた。
「いいえ、相手が強い方が自分の訓練にもなります」
兵士は呆れた表情を見せた。
「馬鹿か?正直者か?貴族なら尚更、自分の優位を守るためにも言わないものだと思うのだが……」
ライオネルはためらいなく答えた。
「強い相手と訓練した方が自分の鍛練になると思います」
自分の有利になる相手の弱点を隠すことを考えもしてないライオネルに、話を聞いていた兵士達は笑い出す。
不思議そうに首を傾げるライオネル。
「公爵家の人間って鼻持ちならない奴だと思っていたが、お前本当に公爵家の人間か?」
「鼻持ちならないかどうかはわかりませんが、一応公爵家の人間ですが……」
またまた兵士達は爆笑するのだった。
「お前、面白いやつだなぁ」
「面白いですか?」
「もう少し思慮深いと思ったが、馬鹿正直すぎる」
「そうですか?」
爆笑する兵士達につられて、ライオネルも頭を掻きながら、笑うのだった。
下っ端の兵士達に気に入られたライオネルは徐々に砦の中で自分の居場所を見つけ始めたのだった。
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