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3章 鉱石と鍛冶屋

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加治屋「ふぅ・・・着いた、ここがお前が言っていた発掘調査が行われる場所だ。」


2人は予定より少し遅くなったが、目的地の場所に到着していた。


徳井「へぇ・・・、至る所に洞窟があるんだな?これ全部人力でなんだろ?よくやるよぉ・・・。」


その場所は鉱山と言う名の通り、全てが岩石類で構成されており、

その所々には調査の跡とも見受けられる洞窟が幾つも残されていた。


加治屋「前来た時よりも・・・ここも随分掘り返されてた様だな・・・。まるでハチの巣だ・・・。」


徳井「何だ?随分寂しそうじゃないか?」


加治屋「そりゃそうだろ・・・。発掘の調査には興味あるが、無暗に採掘する事を良いとは思っていない。

それに、人間の都合で元々あった自然の景観が損なわれるのも良い気はしないしな。」


そして、そんな2人の会話を聞きつけてなのか・・・。


調査員「あのぉ・・・あなた達はもしかして・・・、発掘調査の見学に来られた方達ですか?」


いかにも発掘の調査を行っていそうな肌色の作業着を着た男性が、2人に近付きながら問いかけて来た。


加治屋「えぇ、職業柄鉱石に携わる機会が多いもので・・・見学に来させていただきました。

それにもしかしたら新しい鉱石が何か仕事のアイデアになるかもと思いまして・・・。」


調査員「そうでしたか・・・。いやはや、町に見学者募集の案内を出したは良いものの、

この御時世・・・、鉱石にあまり興味を持たれていない方が多い様で・・・。

それも・・・実は言うと、あなた達が最初の見学希望者なんですよ・・・。」


徳井「え・・・?そうなんですか?結構大々的に張られてたから注目されていたのかと・・・。」


調査員「いやぁ・・・、あれは失敗でした。見た事の無い鉱石が見つかって舞い上がってしまって・・・。

あの掲示板に張って貰ったのも奮発して発注したので余計に・・・。」


そう言いながら調査員の男性は、恥ずかしがりながらもどこか落ち込んでいる様にも見えた。


加治屋「・・・もしかして、ここの調査は皆あなたが?」


調査員「いえ・・・、以前は数人のメンバーで調査を行っていたのですが、

いくら採掘しても何の進展も無い事が続き、1人、また1人とここを離れて行ってしまいました・・・。

そして・・・、今では私だけが残ってしまって。辞めるに辞められない状況なんです・・・。」


徳井「・・・時代と言うのは恐ろしいな。例え別の世界に来たとしても趣味趣向が変わる訳じゃないし。

それにその趣味を共有して来た仲間がいなくなってしまうのも・・・なぁ?」


加治屋「これも時代の流れってやつか・・・。何とも皮肉な事だな。」


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