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5章 鍛冶屋と勇者の武具

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少年「一部・・・?」


少年は加治屋の突然の提案に一瞬戸惑ってしまった。


加治屋「さっきも言った様に武具はお前のサイズには合わない。つまりまずお前は体を大きくする事が第一条件。

そして武具は全て揃えなければ真の効果を発揮する事はない。」


少年「だったら・・・どうして・・・?」


加治屋「前の所有者だった勇者は、20代でその装備を揃え、その後10年で魔王軍の本拠地にまで達した。

それでも早い方だ、全く辿り着けない者だってやまほどいる位だ。」


少年「20代で・・・10年・・・、2倍で20年・・・。それだと・・・勇者は今は40代・・・。」


加治屋「40代でも若いと言う奴はいる。だが急激な体の衰えから危機感を感じ、引退に至った。

よくある漫画で、化け物じみた老人なんてなかなかいないんだ。

実際は20代後半から衰えを感じる程だ。」


少年「でも・・・、勇者の武具の一部だけを装備して何の意味が・・・?」


加治屋「一部を身に付けておくことで己の身体に慣れさせる為だ。

それにお前、まだ冒険に出る訳にはいかないだろ?なら時間は充分ある。

武具はなにも鎧や剣や盾じゃない、ペンダント等の装飾品だってあるんだ。」


少年「あ・・・あぁ・・・。確かに時間は充分あるけど・・・。ペンダントを身に付けてどうしろと?」


加治屋「簡単な事だ・・・、その装備を着けたままこの町周辺で修行しろ。それがお前が今出来る事だ。」


少年「・・・・・・・・・。」


少年はいまいちまだ要領を掴めていなかった。


加治屋「・・・また更に同期との差が開くとでも思ってんだろうが、それは・・・お前次第だ。

お前に渡す装備、それには武器の上達速度を飛躍的に上げる効果がある。

まぁ、簡単に言えば武器の熟練度が飛躍的に上達するって事だな。」


少年「でも俺武器なんて・・・。」


加治屋「俺を誰だと思ってる?武器なら俺の所でレンタルすれば良い。

ここには修理の依頼で色々な種類の武器が入って来る。それに、

武器も使用していかないと錆びて行くだけ、修理した武器の試用を頼む事もあるかもしれない。

そうすれば自分に合った武器を見つけられるかもしれないだろ?」

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