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8章 鍛冶屋と共和国

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共和国・・・。その名の通り、共に平和を保つ為に集いし者たちの勢力。


それは対を成す魔王軍と、常に実力が拮抗する程であった。


この世界が出来て十数年。この世界にやって来る者達は日に日に増え、各々様々な生活を送っている。

それは、現世で言う村や町、国の規模にも匹敵する程に。

そして、その問題は今まさに目の前まで近付いても来ていた。人口増加による領土の圧迫。

この異世界にも広大な土地は存在していて、それぞれに気候も変わり、育つ作物にも違いが出来る。

生活に適した場所もあれば、そうでない危険な場所も存在している。

この世界の住人、そのほとんどが外から、つまり現世からやって来た者達、そこから所帯を持ち、子供が生まれる。

どこにでもある光景ではあるが、それが徐々にではあるが領土の圧迫に繋がっていた。


その対策に追われていた共和国軍は、今までは避けて来ていたある場所への進出を画策していた。

この世界のどこかにあると言う裏の世界。世間の間では裏ダンジョンとも呼ばれているそれは、

名前こそ幅広く伝わっていたが、実際にその存在を目の当たりにした者はいなかった。

だがそれは確実に存在する。そう踏んだ共和国軍は、裏ダンジョンの捜索に躍起になり、

世界中の洞窟、山、果ては海底にまで赴いたが成果は得られなかった。


そして、我慢の限界となった共和国軍の上層部は、もう一つの可能性に賭ける事にした。


裏ダンジョンが解放される条件。それは魔王軍のトップである魔王の完全なる討伐。

それが成されれば自動的に裏ダンジョンの門が解放され、ダンジョン自体が表に出現すると言う。

計画を変更した共和国軍の足は速かった。過去に魔王軍に挑んだ冒険者、

各地の有名な実力者を共和国軍へ引き入れ、引退した武道家を兵士の指導役にする事により武力の向上を図った。


そして最後に必要な物。過去に魔王と引けを取らないどころかそれ以上の実力と称された男。

その者を勇者と称える者も少なくなかったが、勇者と言われている理由は他にもあった。

それは勇者が装備していた武具。まとめて勇者の武具とも言われていた物があり、共和国はそれを求めていた。

勇者・・・金田勇はその武具によって、魔王軍の幹部を次々に沈め、後もう少しの所まで魔王を追い詰めていた。

だが、勇者は魔王を討伐する事なく姿を消し、同時に魔王も姿を消した。

勇者である金田は戦力として当てに出来ない、そう考えた共和国軍は、

手放したとされているその勇者の武具を追い求め、

世界各地を探し回った。その武具さえあれば魔王軍の殲滅も夢ではないを信じて。


そして、金田が手放した武具、その在処が始まりの町の外れにある、小さな鍛冶屋にある事を突き止めた。

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