魔物大好き《モンスターマニア》は気づけば華麗にモフモフ天下無双していました

王子様の白馬

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第2章

第14話 城砦のダンジョン2階層

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 目の前の白が開ける。
 俺はまた、転移装置で階層移動をしてきたのだ。

「……んっ……毎回思うけど、転移するたびに目がチカチカするな。光の具合とかのせいで」
「にゃお」

 俺は目をこすり、視線を周囲に移す。

「――ここは……この目の前にあるのは城か? なんか戦争とかで出てきそうな、鉄壁の守りを持つお城って感じだな。……そういうのなんてったっけ?」
「みゃーお」

 ミーコは俺の足元に擦り寄る。

「ああ、そうだ! 城砦とか城塞……だったか?」

 視界いっぱいに広がる無骨精神が伝わってくる、敵の侵入を簡単には許さなそうな城。
 基本的にはレンガや石などで造られており、色味の少ない建物だ。
 目の前には架橋のようなものが見える。

「今度のダンジョン……2階層は城の中を探索しろってことか」

 俺はポツリと呟き、建物を一瞥する。
 ドリルから多少なりとも聞いていたが、目の前にするのとでは話が違ってくる。

 まるでダンジョン内のようには思えない。
 上を見上げれば、空らしき青が広がっている。
 1階層のダンジョンとは異なり、切迫した空間ではない為か息苦しさを覚えることはなかった。

 この2階層のフロアボス――ボスモンスターは【サキュバス】または【インキュバス】らしい。

 この言葉だけ聞くと、まるで色んな年齢制限に引っかかりそうなモンスターではある。
 ――まあ、その解釈で間違いではないらしい。

 サキュバスやインキュバスは人間の夢の中に侵入し、精気を吸うとされる色欲のモンスターだ。
 “または”と曖昧な表現をしたのは、男性の攻略者の場合と女性の場合とではボスとなるモンスターが異なるからだ。

 ダンジョンの挑戦者が男性ならば――女性型のモンスターであるサキュバス。
 反対に女性の挑戦者ならば――男性型のインキュバス。

 ただし一般的な性別が男性でありながら、心が女性という場合はインキュバスが現れるのだという。
 そして逆もまたしかりというわけだ。
 ……ダンジョンであるのに中々理解が深いということがよくお分かりになるだろう。

「後ろは……、また行き止まりだ」

 1階層の洞窟ダンジョンと同様に、俺の後ろは行き止まり――まるで崖のようにふっつりと地面がなかった。……この下に落ちたら、おそらくダンジョン攻略失敗認定は確実だ。
 目の前の架橋の一本道となっており、やはり当然一方通行なのだろう。
 つまりここがスタート地点なわけだ。

「んじゃ、気をつけていこう」
「にゃ」

 俺とミーコは慎重な足取りで橋の上を歩み始める。
 橋から下を覗くと、ただ深淵のような闇が広がっている。
 どのくらいの深さがあるのか、予想もつかない。
 ごくりと唾を飲み込み、ひたすらに歩く。

「門、だよな。……閉じてるけど」

 俺はその門にゆっくりと触れてみる。
 なんとなく、小難しい仕掛けはないような気がしたからだ。
 そして俺の勘は見事的中した。

 ギイ、とやかましい音を立てて扉は開く。
 いかにも堅固な造りの城であるのに、こんな簡単に侵入を許すのはちぐはぐな感じが否めない。

「にゃおっ!」
「あ、開いた――――けどっ!」

 俺は一瞬のうちにして身構える。

 ――門のすぐ奥に、モンスターが待ち構えていたのだ!

 人型で、姿も人間に近い。
 ただ肌の色は一目で人外だと分かるほど青く、まるで爬虫類の瞳のような目をしている。

 そして異様に――オヤジくさい。
 酒を片手にし、肌の色を変えれば、まるで人生に疲れきったおっさんのようにみえるだろう。
 顎や鼻の下の髭が伸びきっており、全く手を入れられていない様子に不衛生さを感じとった。

 ダンディなモテおっさんを目指している俺にとっては、未来永劫相容れない存在だ。

「な、なんだあのおじさんモンスター! なんで門兵みたいに外で監視してるわけじゃなくて、中で堂々と待ち構えてるんだ!」
「にゃっ」

 オヤジモンスターは、鋭い槍を背中に背負っていた。
 そして俺と目があったその瞬間、槍を構え、こちらへと切っ先を向けてくる。

 まるで、この先は行かさないと言わんばかりに――。

 たしかに門の外ではなく、門から入った直後にまちかまえているのは予想がし辛かった。
 ぶっちゃけひどく驚き、心臓が飛び跳ねた。

 おそらくこのモンスターは、侵入してきた油断しているダンジョン挑戦者を排除するためにここにいるのだろう。

「……油断しないようしないとな。――ミーコ、《魅了》…………いや、やっぱり《幻惑》を頼む」
「みゃ」

 いつも通り、俺はミーコにスキルを掛けさせる。
 《魅了》をかけようかと迷ったが、レベル差を推し量ることはできない。
 対して、おっさんモンスターの瞳は知性を感じることのないものだった。……ただ排除するために遣わされたモンスターって感じだな!
 それゆえ、今回は《幻惑》をかけることにした。

 紫色の霧が岩盤に広がり、モンスターを包む。
 そして、やがて消えた。

「……ん? ……《幻惑》スキルは…………かかっているように見えるけど……。な、なんなんだあれは」

 俺は目の前の異様な光景に唖然とする。

 目の前やオヤジモンスターは、なぜか持っていた槍を捨てた。

 そして――まるで舞踏会でのワルツのステップを踏むように踊り出したのだ!

 ……な、何を見せられているんだ俺は……。も、ものすごい……インパクトだな……。

 幸せな夢へと誘うスキル。
 まさかまさか、このモンスターの幸せな夢はワルツを踊ることなのだろうか。
 頭が良さそうには見えないため、意外だった。

 普通なら男女ペアとなって踊るだろうそれは、モンスター1匹のためだからだろう少しだけ滑稽だ。

「ま、まさか踊りだすとは……ゴブリンにも一人でダンスみたいなことしてるやつもいたけど、あれはただ気分が乗ってはしゃいでるみたいな節があったんだよな」
「にゃー……」
「こ、このモンスターはガチで社交ダンスやってるぞ。す、すげぇ……」

 俺は口をぽかんと開けながらも、内心少しだけ尊敬の意を覚えていた。

 ……俺はこんな華麗なステップは踏めねえ! なんて繊細なダンスなんだ! ……けど一人っていうのがかなり切ないなぁ……。

 俺は感嘆の息をつく。
 けれど、そろそろ終わらせて次にいかなければ。
 このような序盤で悠長にしているのも……な。

 俺はこの意味のわからない光景に終止符を打つため、モンスターが捨てた槍を拾う。
 俺の身長より少しだけ長いそれは、持ってみると意外と手に馴染んだ。

「……すまねえな、おっさんモンスター!!」

 俺はそのモンスターへと攻撃を加えるように、槍で大きく薙ぎ払う。
 武器が横腹にクリーンヒットモンスターは予想通りかなりの距離吹き飛ばされた。
 そして壁にものすごい勢いでぶつかった後、地面へと伏す。

「……まだ消えないか」

 俺は《瞬足》でターゲットに近づき、持っていた槍で腹部を一突きした。
 するとモンスターは黒い靄に包まれ、消える。

「今回のドロップアイテムは、この槍なんだな。カードは……ええと、No.22の――ビッグブロウか。……人間みたいなモンスターだったけど、生命石はドロップしなかったな」

 俺は困惑した面持ちでポツリと零す。

「そのかわり、槍を落としてくれたからいいけど! ……てか、武器の方がいい値段だったりするんだろうか。……いや、でもこのサイズのモンスターがドロップする生命石なら多分かなり高額で買い取ってもらえるんじゃないか?」
「にゃお」
「……ケーリィも生命石は高く買い取るって言ってたしな。な、なんかあの人の名前言っただけで、寒気がしてきたぜ……」

 俺はぶるりと身を震わせた。

 靄に包まれたあと消えるかと思われた槍は、そのまま俺の手元に残っていた。

 ドロップしたアイテムはどうやらこの蔦の巻きついた模様の描かれている槍らしい。
 振ったり突いたりする真似をしてみると、意外と使い勝手や悪くなさそうに思えた。

「よし、今回はこれ使ってみるか! 槍使いになるの、少しだけ憧れてたんだよなあ」
「……みゃお」
「分かってる分かってるって。油断はしないよ」

 俺はそう言って、ミーコとともに門を背中に城の内部への潜入(?)開始した。


 建物内に足を踏み入れると、そこは玄関ホールのようになっていた。
 城砦らしく、外装同様に無骨で色味の少ない内装だ。
 基本的には石造りである。

 俺たちは内部に入った瞬間、なにか異様な空気を感じとった。……粘りつくような、痺れるような妙な違和感を肌に感じ取る。
 そして同時に嗅覚をくすぐる甘い香り。

「……っな、なんなんだ、この甘い匂い」
「にゃ……」

 気を抜けば頭の芯から痺れてしまうようなそれ。
 なんとなくだが、空気が濁っているような感じがする。――それも、桃色に。

「さ、さすがサキュバスとかインキュバスがボスのフロアだな……。油断してると、色々と持ってかれそうだ……」

 俺は頰を両手で叩き、気を引き締める。
 心の隙を突かれれば、泥酔しそうだった。

 ミーコも少しだけ足元がおぼつかないようで、ぼんやりとしている。……大方、空気に当てられたのだろう。

 もしかしてこれも、敵のスキルかなにかかも知れない。
 その可能性に思い至り、俺は口を開いた。

「…………そうだ。もしかしてこういう時にも《浄化》とか効くんじゃないか。ミーコ、一度やってみてくれ」
「……みゃお……」

 そう鳴いて、スキル《浄化》を発動させる。
 このスキルは昨日宿に帰還してから詳細を調べだのだが、かなり有用なものだった。

・・・

スキル《浄化》
能動的アクティブスキル。
心身、または周囲の汚れを取り除く。深く根付いたものは、ときに取り除くことが出来ないことができない。レア度は上の中。

・・・

 相当良さげなスキルで、これから先、使用する機会も増えそうだ。

 アンデッドとかゾンビが出てきたら、聖なる力でなんとやら……的な展開ありそうだしな。その時《浄化》は多用できそうだ。

 ただひとつ。
 俺は昨日帰ってから身体を布巾で拭く前、ミーコに頼んでスキルを使ってもらったのだ。……一応、服は着たまま。
 だが、あまり爽快感や洗われた感を感じ取ることは出来なかったのだ。……まあ、髪の毛に関してはスッキリとしたような気がしないでもないが。

 《浄化》をミーコが発動すると、周囲の濁った空気が一斉に除かれたような感覚に陥る。
 今までの濁った空気のおかげで、より一層清々しささえ感じた。

「おお! やったなミーコ! さっきと比べて空気が綺麗になったぞ」
「にゃお」
「ただ、効果範囲や時間がが分からからな。切れたらすぐ、もう一度掛けられるように準備しておいてくれ」

 気を張っていれば《浄化》をかけなくても進むことは可能であるといっちゃ、可能だ。
 ただ、それではボスに辿り着くまでに精神的、肉体的にも疲弊してしまうだろう。

 俺たちは、そうして眼前にに真っ直ぐ続く石造りで少し薄暗い廊下を進み始めた。

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