魔物大好き《モンスターマニア》は気づけば華麗にモフモフ天下無双していました

王子様の白馬

文字の大きさ
34 / 50
第2章

第15話 扉を開けたその先に

しおりを挟む


 長く続く廊下をしばらく歩き続けていると、とうとう突き当たりまで来た。
 そこには2つの扉があり、側には木製の看板が置かれている。

「ええと……なになに……――『好きな道を選べ』か。この二つの扉のどちらかを選んで進めっていうことだな」

 俺は各扉に視線を向ける。

 一つの扉には――『カゲボーシの部屋』
 もう一つには――『ドリームイーターの部屋』

 そう記された掛札が目に入る。

「カゲボーシ……ドリームイーター……どっちも聞いたことない言葉だな。この名前のモンスターが扉の先にいるってことなんだろうな。」
「にゃお」
「うーん……どっちにしようか。ドリルには各フロアのボスモンスターは教えてもらったけど、ほかに出てくるモンスターは詳しく教えてもらえなかったし」

 ボスモンスターに限っては情報共有されているのだが、その他出現するモンスターは各々の技量を試す場のために教えてもらえない。
 ダンジョンは戦闘力を確かめる場であり、戦闘時の考察力や対応力を試す場でもあるのだ。

「んー……ミーコ、お前はどっちがいい?」
「みゃおっ」

 ミーコは小さくなくと、一つの扉の前へと足を進める。そして再度小さく鳴いた。

「おっ! 『カゲボーシ』の部屋か。分かった、そっちにしてみよう」
「にゃ」
「にしても、どうして二者択一なのかよく分からないな。どうせなら、どっちの部屋も通らないといけないようにした方がいいのに」

 二つの部屋を一つの道に組み込んだ方が、ボスモンスターまで行くのを阻む事ができる。……ダンジョン側としてはそっちの方が良いのではないだろうか。
 もっとも、ダンジョン自体に意思があるわけではないだろうが。

「よし、それじゃ扉開けるぞ」

 俺は扉のドアノブに手をかけ、ゆっくり捻る。
 すると中には――。

「……――この部屋は…………と、図書室? な、なんでだ……」
「にゃーお?」
「本棚と本がたくさんだ。意味がわからん」

 俺は壁まである棚の中にぎっしりと詰まった本が多く並んでいる部屋を見渡す。

 そう。
 まるで日本で俺が住んでいた場所の近所にあった図書館のようだった。
 大きすぎる場所というわけでもなく、かといって狭いというわけでもない、落ち着いた空間。

 俺はそれを訝しみつつ、歩み進める。
 すると、いきなり周囲の本棚から黒い影がたくさん飛び出してきた。
 実態のないそれは、俺たちの周囲をふらふらと浮遊する。

 ミーコに《魅了》と《幻惑》をかけてもらうが、まるで実態がないかのようにかけた瞬間に消えてしまう。

「……はっ? な、なんだこれ……」
「にゃお」
「黒い影……これが扉に書かれていた『カゲボーシ』っていうモンスターか?」

 そう俺が呟いた途端、周囲の影はいきなり動きを止め、地面へと降り立つ。
 そして次第にその姿形を変えていった。

 俺はその異様な光景に目を見張り、息を飲む。
 攻撃を仕掛けてみたものの、どれも煙を切り裂くように実態すらなかった。

 俺は困惑した。
 実態のない相手をどう倒せばよいのだろう。
 悩みながらも敵の弱点がないかどうか、観察を続ける。

 攻撃すらできなかったそれは、しばらくして人型となった。
 身長などはすべてバラバラ、体つきもてんでバラバラだ。
 そして俺は、そのモンスターたちの顔を見た瞬間、この世界に来て一番といえるほど滑稽なほど驚愕の表情を浮かべてしまった。

 なぜなら――。

「……え!? か、母さん……父さん!」

 そう――その影たちは己の父や母の容貌へと変化したのだ。
 他にも見知った顔が多数あり、弟や友人知人、学校の教授や幼馴染などなど。
 名前は全く覚えていないが、まるで魂に刻みつけららているかのように、その相貌には見覚えがある。

 知己の顔ばかりだったのだ。

 俺は息が止まりそうになったが、同時に冷静になっていくのも感じた。

 ――カゲボーシというモンスターは、敵対するものの見知った人間の格好をとり、攻撃しづらくさせる。
 そんなことが容易に想像ができた。

 よく見ればこの世界にやってきてから知り合ったものたちも並んでいる。

 その姿形を変えないモンスターらは、次の瞬間、俺に向かって薄紅色の霧のようなものをかけてくる。
 それを察し、《瞬足》でギリギリ避けきった。
 ミーコも《俊足》によって難を逃れたようだ。

「……っ! な、なんだあの霧は! もしかして、《幻惑》みたいなスキルか!?」
「にゃお」

 なんとなくだが、あの霧を浴びてしまえばしばらくの間、に戻ってこれない気がする。

 目を細め、旧知の者らの容貌をしているモンスターを苦々しい面持ちで一瞥した。

 たしかにこのモンスターたちの攻撃の仕方は理にかなっている。
 俺は今、猛烈に攻撃しづらい。
 本人ではないと分かっているのだが、見知った顔に親愛の念を抱いてしまうことは仕方がないだろう。

 だが、俺は戦って進まなければならない。
 戦う理由はないが、一度決めたことを曲げるのは嫌いだ!

 ――俺は今日、ダンジョン2階層を攻略完了させるのだから!

「……そうだな……ミーコ。さっきと同じように《魅了》と……あとは《浄化》をかけてみてくれっ」
「にゃお」

 ミーコは鳴き声と同時に、スキルを2つ作動させる。
 《幻惑》もかけたいところだが、《浄化》と相反するスキルのため、効果がかき消されてしまうのか辛いところだ。

 発動したスキルが俺たちを取り囲むモンスターにかかったのか確認するため、周囲を見渡す。

 ――けれど、残念なことにスキルはかかっていなかった。

 目で確認した俺は《瞬足》で移動し、持っていた槍でモンスターの体を斬り裂こうとする。
 けれどやはり実態はなく、その体に当たることはできない。

 俺は内心汗を流しながら、観察に努めた。

 モンスターたちがまた薄紅色の霧を出し、俺たちをスキルにかけようとする。

「……っ!」

 幸いなことに、反射も行動も遅い敵。
 物言わず、ただ薄紅色の霧を俺とミーコのいる場所に向かって吹きかける。

 先ほどの攻撃により、敵の手札を知っている俺は次の攻撃を余裕で避けることができた。

 …………あれ? ……避けたあと、タイムラグがある。というかありすぎる。さっきから思ってたけどこのモンスターたち、俺が避けたりして動いたあと、全然視線で捉えられてないよな。

 俺は完全に避けたはずなのに、モンスターたちは薄紅色の霧を元々俺がいた場所だけに吹きかけ続けている。

「これは……――もしかして!」

 一つの可能性に至った俺は、この部屋――図書館全体を見渡す。

 本棚が所狭しと並んでいる中、そのすぐ下――地面に視線を向ける。

「影がない!」

 どの本棚にも影があらず、明らかに異様だ。
 一番大きな本棚を視界で捉える。
 そしてその本棚の影があるのか確認すると――。


「……っ! あの本棚だけは影がある……俺とミーコ以外でこの部屋の中唯一!」

 俺はすぐさま部屋の中で最も大きな本棚へと駆け寄り、そのすぐ下の影を槍で刺す。

「……おっらぁ!」
「グュアアアアアア!!!!」

 その途端、悲鳴ともつかない声が図書館中に響き渡る。
 そしてとうとうそ・れ・が姿を現したのだ。
 そ・れ・――影に潜んでいたモンスターは、実態があった。

「やっぱり……襲ってきた影たちは、みんなこいつが操ってたんだな!」

 戦闘中の敵のタイムラグを感じた時、なんとなく思ったこと。
 それは、『このスピードと反射神経なら、ヒットアンドアウェイ戦法の方がいいんじゃないか』ということだった。
 けれど敵は頑なに猪突猛進に攻撃し続ける。……それは何故か。

 ――影が倒される心配がなかったから。

 今、俺たちに攻撃を仕掛けてくるモンスターは本当に実態がない。
 なにせその影はモンスターが操っている攻・撃・手・段・で・あ・り・、死・ぬ・は・ず・の・な・い・も・の・なのだ。
 俺はそういう結論に至った。

 それに、どんなに攻撃しても声一つ漏らさず、部屋中の本棚の影がなくなっているのもおかしい。
 この戦闘は普通じゃないことがたくさんあったのだ。

 影に隠れ、他の影を操作していたのなら俺たちの前にわざわざ姿を現し、動揺を狙う策略も腑に落ちる。
 気が動転している敵の隙をつき、絡め取るのが本当の攻撃なのかもしれない。……まあ、そういう戦法なのかどうかは直接聞いたわけではないため不明なのだが。

 俺は実体のある本体を槍で突き刺す。

「グュッアアアアア!!」

 モンスターは敵を耳障りな悲鳴をあげ、闇の靄に包まれていった。
 その場に残ったカードとドロップアイテムの瓶に入った赤色の液体を手に取り、次の場所へと進んだ。



 ――。

 ――――。


 影のモンスター――カゲボーシを無事に倒した俺たち。
 図書館にはもう一つの扉があり、そこからダンジョンを進むべく、一本道として続く廊下を再び歩みを進めていた。

 途中にはフート草原にいたスリープゴートや、一度だけ依頼の際に出会ったカラスのように真っ黒な鳥のモンスター、フッケバインに遭遇した。

 それらを跳ね除け終えると、新たな部屋の入り口が用意されていた。
 その扉を潜ると今度は大量のリザードマンの群れに遭遇し、《怪力》と《強堅》等の物理的スキルで圧倒した。

「リザードマンのカードでちょうど登録できる狩猟モンスターカードも25種類か」
「にゃお」
「新しいスキル、取得できるな。……ん、やるか!」

 周囲を探っても敵の気配はない部屋。
 先ほどまで膨大な数のリザードマンがひしめき合っていた場所。
 元は会議室なのか司令室なのかは分からないが、モンスター達によって踏み荒らされている。……俺が暴れたせいで、壊れたところもあるけどな……。

 そんなことを考えながら、俺は新たなスキルを得るためにカードをバインダーに登録する。

 そして新たなスキルを得るための環境は整った。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...