どうしてこうなった!

とらい

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■第1章 元・ガーディアン、現・サラリーマンの帰還

① 15年ぶりの故郷(たぶん)

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エールデンより異世界の日本に送還されて、15年の月日が流れていた。

わたしは現在、東城トウジョウ 斎門サイモンと名乗っている。
年齢も30歳となり、何とか中小企業の営業職で働く事が出来ていた。

因みに東城というのはク…いや、勇者の苗字で私と勇者が入れ替わったと同時に、その世界で何故か補正が働くという状態になっていた。
これも因果律という事なんだろうか?怖い神様…。
私は元の世界エールデンの知識を持ちながら、何故かク…勇者の家族に家族扱いを受け、戸籍の名前や当時の学生証も私の名前に変わっていた。
頭の中に異世界に関する知識が流れ込み、高熱が続いて寝込む事もしばしばあったが、何とか異世界で生きる為に必死で学んだ。
勇者の人となりはどうかと思うが、彼の家族は皆良い人ばかりで恨む事など次第に考えられなかった。
あの勇者は此方で自分の存在がどうなっているのか知らないだろう。教える気は無いし、教える機会など無いと思っている。
元の世界との余りにもかけ離れた状況に心が折れそうであったが、その度に心にあの美しいウィザードであるエドガー様を思い出していた。

王女の執務室で起きた光景をふと思い出す。私は喫煙の趣味は無かったが、あの出来事がきっかけとなったのか日本では喫煙する事が
多かった。ヘビースモーカーというやつだ。

一言、言え。
せめて説得するとか考えろ。
命をかけて旅した仲間に騙し討ちとか、酷くないか?

今更考えても、15年も経過しているのだからどうしようもないが、誰にも伝えられない言葉が内に溢れて来る様だった。

会社へ行く為にスーツへ着替えて、ショルダーバッグを肩から引っ掛けた状態でトーストを咥えながら靴を履き、母親(日本の)にハンカチを渡されて
玄関から足早に家を出た所で、見覚えのある夕暮れの色が足元に広がる。

「…へ?」

私は思わず咥えたトーストをボトリッと落とし、間抜けな声を発していた。
赤い色に染め上げて行く魔法陣に思わず背後を見ると、首を傾げた母親(日本の)がいってらっしゃいと手を振る。

どうやら魔法陣は異世界(日本)の母には見えてないらしい。
顔を引き攣らせた状態で家の玄関が閉まると同時に、忽然と私は異世界(日本)より姿を消す事になる。

まじか…この感覚は…またなのか?と、赤い光から一気に暗闇に包まれる感覚。
あの感覚は二度と味わいたくないと思っていたのに、何故…神は私に試練ばかり与えるのだろうか?






「…ぉぃ…おいっ…起きろ…!」

声が聞こえる。
会社で昼寝でもしていたか?
うっすらと目を開けると、視界がブレているので身体を揺すられている事に気づく。

「…んっ…ぁ…」

寝ぼけた様な声を発すると、はぁと溜息が聞こえた。
男か?視界が安定すると冷たい床の感触を肌で感じ、目の前に私を覗き込む顔が見える。
大柄で身長はどれぐらいだろう。私は182cmは確かあった筈だが、それ以上にデカい。筋肉質で首から腕にかけての
筋肉が分厚い事がよく分かる。彼の服装は明らかに地球では無い様な気がする。
ファンタジーの村人がする様なアースカラーの軽装、麻の様なシャツとズボンではあるが清潔感はある。
無精髭を携えているが端正な顔立ち、淡い金髪と碧眼…っ…ん?

「サイモンか?」

低い艶のある声が響く。

あぁ…待て、待て、待て…

「良かった…やっと成功した…。」

深い安堵感を漂わせる声色が耳に心地良い…ってちょっと待て。彼は、華奢な…美少年だった筈だ。
可憐なウィザードの筈だ!!

私の心のオアシス…可憐なまま成長しているなら、麗しい人になっている筈だ。例え、三十路おじさんになっていてもだっ!!

「サイモンだろ?」

私の好みのタイプとはかけ離れた男がそこに居た。
あまりの衝撃に私はそこからの記憶がない。






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