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第一章 登録
二
しおりを挟む年間数万人規模の国民が自殺で命を絶つ国、日本。その数に留まらず、そういったことを考え、実行したいと考える者は数多く存在する。私も、そのうちの一人だった。
——カヨちゃん、この仕事辞めたら?
三ヶ月前。上司のカワノからのパワハラを理由に、勤めていた会社を退職した私には、今後の見通しが立っていなかった。そんな折に唯一の身内だった母親が事故で死に、双子の姉にも愛想を尽かされ、一寸前までもが闇という状態となった程である。
死んで楽になりたい。疲れ果てた私は、いつの間にか、そう思うようになっていた。
しかし…私は、それができずにいた。
死ぬというのは、口で言い放つよりもはるかにハードルが高かったのだ。いくつか試したが、実行する一歩手前でどうしても怖気付いてしまう。首を吊ろうにも、首にかけたところで体が石のように動かなくなる。手首を切ろうにも、剃刀が肌に触れるだけで全身鳥肌が立ち、吐き気をもよおす。死という身の毛もよだつ恐怖が、全身を襲うのだ。
「明日は必ず」と、何度もそう思った。そうして何もできないたびに、自分で自分を卑下する日々。しかし生きるにも、貯金は無くなっていく。内心焦っていた、ある日。九月十日…二週間前のことだったか。SNSの裏アカウントに、フォロワー以外のアカウントから、ダイレクトメッセージが届いた。
メッセージタイトルは『カヨさんへ』。本文は『それだけ辛いのなら、ここを頼ってみるのはいかがでしょうか?』。それだけ。それだけと、URLが一つ貼られていた。アクセスしてみると、パソコンのデスクトップ、ブラウザの全面が黒色に変わる。その後少し遅れて、中央に『人生やりなおしっ子サイト』と、白のゴシック体で横文字が表示された。
胡散臭い、子どもが考えたような名前。タイトルの下には、少しだけ小さくなったサイズで、『私達と共に、生きることを諦めませんか?』と副題たる文章と、さらに小さく、四行程書かれている。
仕事、恋愛、お金…
今の人生をやり直しましょう。
一人じゃなく、皆で。怖くはありません。
幸せを掴み取りたい方のみ、閲覧願います。
怪しさしかないが、初見の様子では、無料のホームページ作成サイトで作ったような、ちゃちなものではなさそうだった。
私はサイト内を細かく見ていく。どうやらこのサイト、自殺をしたくてもできない者たちが集い、皆で一斉にそれを行う…いわゆる心中をする。そのために作られたようだ。つまり、今の私に必要なものだった。
新手の詐欺か、それに類するものの可能性もあった。しかし、私はタイトル副題の言葉が強く印象に残った。
私達と共に——。
これを使えば、私でも死ぬことができるのだろうか。
この先、一人で自らの命を捨てる勇気なんて、出てくるとは思えない。それが分かっていたからこそ、私は最終的にそのサイトを使うことを決めたのであった。
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