君との未来への前奏曲《プレリュード》

羽月咲羅

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序章

プロローグ(2)

 涼夏は双子の妹だ。
 健康体な私とは違って涼夏は病気がちで、小さい頃から風邪をよく引く子だった。
 入院することも多く、そのせいか友達らしい友達は一人もいなかった。
 それでも、明るくて優しくて、その笑顔はいつも周りを照らしてくれた。
 涼夏が太陽なら私は月で、太陽が照らされて初めて光ることができる。
 私にとっての涼夏はまさにそう、妹だけど憧れで、側にいてくれる絶対的な存在。

『夏姫ちゃん、私ね、生まれ変わってもまた夏姫ちゃんの妹になりたい』

 涼夏はそう言い、『夏姫ちゃんが大好きだから』と笑って続けた。

『私のせいで夏姫ちゃんは寂しくてつらい想いをしてるのにね、ごめんね』

 羨ましくて妬ましく思うこともあったけど、私の気持ちをいつもわかってくれるのも涼夏だった。
 お母さんが涼夏ばかりでも、自分の片割れが味方でいてくれるからつらくなかった。
 でも、私は涼夏みたいに素直じゃないから、気持ちもうまく伝えられない不器用だから。
 最後の最後まで、『ありがとう』も『大好き』も涼夏に伝えられなかった。
 涼夏はいつも何度も、大好きだよ、って言ってくれていたのに。

 恥ずかしくてなかなか言えなかったけど、涼夏は私の自慢の妹で大好きだった。
 これからもずっと大好きで、涼夏が妹に生まれてきてくれたことを誇りに思う。
 でも……ごめんね、涼夏。
 大好きなのに、自分に言い訳して、涼夏を利用してばかりいる私は卑怯だ。
 それでも、愛されたくて必要とされたくて、今日も私は涼夏のふりを続ける――。



「いってきます」

 そう言えば、お母さんは嬉しそうに笑って玄関先まで見送ってくれる。

「いってらっしゃい。気をつけてね」

 今までこんなふうに見送られることはなかった。
 涼夏は数えられるほどしか学校に行けなくて、行ける時があっても送迎してもらうことが多かった。
 それは仕方ないことだってわかっていたけど、親の愛情が全部涼夏に向けられているみたいで少し寂しかった。


 空は快晴で眩しくて、まるで涼夏の笑顔みたいにポカポカと暖かかった。
 晴れると安心してしまうのは、その太陽が涼夏のように感じるから。
 一緒にいられなくても、いつも側で見守ってくれている気がするから。

 涼夏とお揃いのシーグラスのブレスレットを掲げるようにすると、陽光に反射してキラリと光る。
 これがあるだけで大事な妹の存在を感じ、それと同時に手枷のようにも感じられた。


 その時、ピコン、と音が鳴り、スマートフォンがメッセージの受信を伝える。
 相手の名前を見ただけで自然と頬が緩み、それはダメだと引き締める。

「……いい加減やめないと」

 連絡を取り合うことも会うことも。
 だって私は涼夏じゃないから、〝彼〟が求めているのも涼夏だから。
 それでもやめられず、ここでも涼夏を利用する私は本当にズルい。

 なにもかもが違う私と涼夏だけど、こういう時は双子だなって痛感する。
 涼夏が好きなものは私も好きになる。
 だから、彼のことも――。
 でも、これ以上のことは望まないから、あと少しだけ涼夏のふりをして会わせて。

 涼夏に頼み込むように心の奥で願い、彼からのメッセージに返信した。
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