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第1章
精神安定剤(4)
私はそっと窓を開けて空を見上げた。
由宇が言っていたとおり、そこには無数の星が光り輝いていて綺麗だった。
その星の数だけ、それ以上にたくさんの人がいろんな悩みを抱えている。
私だけがこんな想いをしているわけじゃない。
悩みは違えど、きっと誰もが悩んだり苦しんだりしているはずだ。
だからと言って今の自分の悩みや苦しみが消えてなくなるわけじゃないけど、そう思ったら少しだけ楽になった。
バタン、と玄関のドアが閉まる音がして、その数秒後に車のエンジン音が聞こえた。
まだ仕事が残っていたのか涼夏のところに行ったのか、お母さんはいつもなにも言わずに出ていくからわからない。
涼夏が一時退院してきた時は家で料理をしたりするのに、私だけだとなにもしない。
最低限のお金を置いていくだけ。
なにか言えばワガママだと言われ、それ以上のことを言えなくさせる。
涼夏へ向ける想いの半分、いや10分の1でもいいからたまには優しくしてくれればいいのに。
ーーあ、ダメだ。
負の感情が自分の中に少しずつ広がっていき、精神的に追いつめられていく。
大丈夫、こんなの今に始まったことじゃないと言い聞かせようとするもののうまくいかない。
両親との関係が拗れていたとしても私には涼夏がいる、友達だってちゃんといる。
私の世界のうちの家族が欠けていてもなんてことない、そのはずなのに。
「…く、薬…っ」
イケナイと頭ではわかっていて何度もやめようと思っているのに、こういう時に頼ってしまうのはやっぱり薬で、それは私の精神安定剤だった。
でも、いつも持ち歩いているケースの中に薬はひとつもなかった。
どうやら切らしてしまっているらしい。
それなら仕方ないと諦められたらよかったのに、持っていないことが不安でたまらない。
気持ちが少しでも不安定になったらもうダメで、ほとんど無意識に部屋を出た。
「…買って、こなきゃ……早く…っ」
歩く足取りは重く、足を動かすだけで動悸と息切れを起こしてしまう。
それでも、行かなきゃ、買わなきゃ、という義務感のようなものが自分を動かした。
『夏姫ちゃんが傷ついたりしたら、私も痛くてつらいんだからね』
いつだったか、涼夏にそう言われたことがある。
涼夏を傷つけないために、大事な妹を守るためにこんなことはしちゃいけないって思うのに、なんで繰り返してしまうんだろう。
なにも言わなくても、私がODをすれば涼夏にはすぐにバレてしまう。
双子だから通じ合うものがあって、同じ痛みを感じることがよくあった。
そうやって私達は同じものを共有し合って今まで生きてきたし、これからだって。
それならなお、こんなことを続けたらダメなのにどうして私は……。
「…ごめん、涼夏……やめられないよ…」
私がなんとか日々を過ごせるのは、ODをすることで気持ちを落ち着かせているから。
やってしまって後悔することは目に見えているのに、それでもやらないことのほうが怖い。
だから、市販薬でもなんでも持っているだけで安心を得られるならそうするだけ。
そして、ODをするための薬を買いに行くために家を出たのだったーー。
由宇が言っていたとおり、そこには無数の星が光り輝いていて綺麗だった。
その星の数だけ、それ以上にたくさんの人がいろんな悩みを抱えている。
私だけがこんな想いをしているわけじゃない。
悩みは違えど、きっと誰もが悩んだり苦しんだりしているはずだ。
だからと言って今の自分の悩みや苦しみが消えてなくなるわけじゃないけど、そう思ったら少しだけ楽になった。
バタン、と玄関のドアが閉まる音がして、その数秒後に車のエンジン音が聞こえた。
まだ仕事が残っていたのか涼夏のところに行ったのか、お母さんはいつもなにも言わずに出ていくからわからない。
涼夏が一時退院してきた時は家で料理をしたりするのに、私だけだとなにもしない。
最低限のお金を置いていくだけ。
なにか言えばワガママだと言われ、それ以上のことを言えなくさせる。
涼夏へ向ける想いの半分、いや10分の1でもいいからたまには優しくしてくれればいいのに。
ーーあ、ダメだ。
負の感情が自分の中に少しずつ広がっていき、精神的に追いつめられていく。
大丈夫、こんなの今に始まったことじゃないと言い聞かせようとするもののうまくいかない。
両親との関係が拗れていたとしても私には涼夏がいる、友達だってちゃんといる。
私の世界のうちの家族が欠けていてもなんてことない、そのはずなのに。
「…く、薬…っ」
イケナイと頭ではわかっていて何度もやめようと思っているのに、こういう時に頼ってしまうのはやっぱり薬で、それは私の精神安定剤だった。
でも、いつも持ち歩いているケースの中に薬はひとつもなかった。
どうやら切らしてしまっているらしい。
それなら仕方ないと諦められたらよかったのに、持っていないことが不安でたまらない。
気持ちが少しでも不安定になったらもうダメで、ほとんど無意識に部屋を出た。
「…買って、こなきゃ……早く…っ」
歩く足取りは重く、足を動かすだけで動悸と息切れを起こしてしまう。
それでも、行かなきゃ、買わなきゃ、という義務感のようなものが自分を動かした。
『夏姫ちゃんが傷ついたりしたら、私も痛くてつらいんだからね』
いつだったか、涼夏にそう言われたことがある。
涼夏を傷つけないために、大事な妹を守るためにこんなことはしちゃいけないって思うのに、なんで繰り返してしまうんだろう。
なにも言わなくても、私がODをすれば涼夏にはすぐにバレてしまう。
双子だから通じ合うものがあって、同じ痛みを感じることがよくあった。
そうやって私達は同じものを共有し合って今まで生きてきたし、これからだって。
それならなお、こんなことを続けたらダメなのにどうして私は……。
「…ごめん、涼夏……やめられないよ…」
私がなんとか日々を過ごせるのは、ODをすることで気持ちを落ち着かせているから。
やってしまって後悔することは目に見えているのに、それでもやらないことのほうが怖い。
だから、市販薬でもなんでも持っているだけで安心を得られるならそうするだけ。
そして、ODをするための薬を買いに行くために家を出たのだったーー。
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