君との未来への前奏曲《プレリュード》

羽月咲羅

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第3章

交わした約束(1)

「ねえ、帰りにクレープ食べに行かない?」

 その日の学校が終わって帰り道の途中、いきなり由宇に誘われた。

「ごめん、今日は病院に行くんだ」
「妹ちゃんのところ?」
「うん。気になる男の子がいるみたいでね、最近よく相談に乗ってるの」
「えーそうなんだ」
「SNSで知り合った子で、ほとんど毎日やりとりしてるって言ってた」

 涼夏は病院にいることのほうが多くて、学校に行くことができても周りからは腫れ物に触るみたいな扱いを受けることが少なくない。
 いつまた体調が悪くなるかもわからない、一緒に遊ぶことも儘ならない。
 そんな状態で友達を作るのは難しい。
 普通に話すことはあってもそれだけで、心を開くことは簡単にはできない。
 涼夏は明るくて優しくていい子だけど、人見知りなところがあるから慣れない人の前だと口数も少なくなるから余計に。
 だから、たとえSNS上でも涼夏が会ったこともない男の子と連絡を取り合っているのは不思議だった。

「私も繋がった男の子いるけど、そんな仲良くならないんだけど!? なんで!?」
「なんでって言われても…」
「この性格のせい? それとも顔!? 私つり目だし、男の子と遊びに行っても引かれることが多いんだよね」

 由宇はその見た目からもクールビューティという言葉が似合う、はっきりとした物言いをする子だ。
 キツく言いすぎて敬遠されることもあるけど、言葉の裏には優しさや温かさがある。
 そんなことを言えば、気持ち悪い、って言われるだろうから言わないけど。

「由宇、綺麗なのにね」
「でも、夏姫みたいな子のほうが男ウケは良いしモテるんだよ。双子ってことは、妹ちゃんも夏姫にそっくりなんでしょ」
「まあね」

 性格は違っても顔はそっくりで、小さい頃から間違えられることは何度もあった。
 それがおもしろくて、入れ替わって遊んだりしたことも数えきれないほどにある。
 涼夏は入院生活が長いからこそなお、そうすることで外で楽しんでほしかった。
 その翌日は体調が悪くなる時もあったけど、それでもいつも楽しそうだった。
 その笑顔が見たくて、ありがとう、って言ってくれるのが嬉しくて、入れ替わるのをやめることがなかなかできずにいた。

「あ、じゃあ今度、遊ぼうよ! 妹ちゃんとその男の子と友達とで!」
「え?」
「私、夏姫の妹ちゃんと会ったことないし、会ってみたいんだよねぇ」

 こんなことを言ってくれる由宇は優しいと思う。
 病気を持った子と遊ぶのはいろいろ我慢を強いられることもあって、大変なことも多いのに。

「約束ね! じゃ、妹ちゃんによろしくねー」

 由宇は分かれ道まで来ると、言いたいことを言って帰っていってしまった。
 私も手を振ってから、涼夏の待つ病院のほうへとゆっくり足を進めた。


 正直な話、両親から無償の愛を受け取っている彼女に嫉妬する気持ちがなくもない。
 だから涼夏に会うのが嫌な時も少なからずあって、そんな醜い感情を持ってしまう自分が嫌だった。
 でも、大事な妹でそれ以上に好きな気持ちのほうが大きくて、いつも会いに行くんだ。
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