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第3章
交わした約束(4)
その翌日、朝起きた時から体調が悪かった。
なんて言えばいいのかわからないけど、とにかく全身がだるくて苦しかった。
直感的にわかる。
これは自分自身じゃない、涼夏が感じているものだということが。
「涼夏…っ」
だるい体を無理やりに動かして、なんとかベッドから這い出るようにして起きた。
だんだん息苦しさがひどくなって、まともに息をするのもつらい。
ーー涼夏、大丈夫だよね…?
それが不安だった。
簡単に治らなくても寝込むことがあっても、涼夏が生きていてくれるなら。
それだけで、私はまだ頑張れる、ってそう思えるから。
生まれる前から一緒で、それが当たり前で、まるで空気みたいにいるのが普通だった。
側にいなくても側にいてくれているような、不思議な安心感があった。
それは涼夏だからできることで、他の誰も涼夏の代わりにはなれない。
双子として、妹としてずっと一緒にいたから、側にいないなんて考えられない。
なんの根拠もないのに、涼夏は絶対にいなくならないって今も思ってる。
でも、そう思うほど胸が痛くて苦しくて、それ以上の苦しみを感じてるだろう涼夏が心配で不安でたまらなかった。
その時だった。
スマートフォンが着信を伝え、画面に〝お母さん〟の文字が出たのは。
今までほとんどかかってきたことがないのに、なんでこんな時に限って。
『今から病院に来れる?』
躊躇いながらも電話に出ると耳に届いたお母さんの声は小さく震えていて、いつもより弱々しく聞こえた。
「え、学校がーー」
『……涼夏が急変して、苦しそうにしながらずっとあんたの名前を呼んでるのよ』
「え」
『だから病院に来なさい。涼夏が待ってるから』
わかったわね、と念押しして、電話が切れた。
いつも向けられるものとは違う、ほんの少し優しさが見えるような言葉。
でもそれは私に対してのものじゃない、涼夏が望んでいることだからだ。
行かなきゃ、涼夏が待ってるんだから。
そう思うのに、この胸の痛みが、ひたすら続く苦しみが嫌な未来を想像させる。
考えたくないのに、どうしてもこれから待ち受けているだろう未来の光景が過ぎる。
なにをバカなことを、と笑えたらよかった。
涼夏の元気な姿を見て、笑い話になるくらいに一緒に生きていけたらいいのに。
「…っ…」
嗚咽が漏れそうになる。
いつも涼夏に会うのは嬉しくて、笑顔を見るだけで安心して、自分の存在意義を感じることができた。
それもこれもすべて涼夏がいたからで、いなくなってしまったらパッと消えてしまう。
私の存在も生きる理由も、涼夏がいるからこそなのに。
会いたいのに会いたくないーーそう思ったのは、きっと初めてだった。
『夏姫ちゃん』
ふと聞こえた涼夏の声。
顔を上げてみてもそこに涼夏がいるわけもなく、家の中は相変わらず静まり返っているだけだった。
『夏姫ちゃんが来るまで頑張るから、絶対に会いに来てね』
それは耳というより脳に直接語りかけられたような言葉だった。
空耳かもしれない、だとしても涼夏の想いが伝わってくるのがわかった。
今まで涼夏はどんなことがあっても、ワガママも〝絶対〟の言葉も言ったことなんてなかった。
でも今、涼夏は言った。
それだけの想いがあるんだとわかって、行かないわけにはいかない。
どんな現実が待っていたとしても後悔しないように、会いに行かなきゃ。
「待っててね……涼夏…」
頑張れ、なんて言いたくない。
でも今だけは言わせて。
ーー私が行くまで頑張って。
ただそれだけを願い、私は胸の痛みを受け止めながらも病院へと向かった。
最後に、涼夏に会うために。
なんて言えばいいのかわからないけど、とにかく全身がだるくて苦しかった。
直感的にわかる。
これは自分自身じゃない、涼夏が感じているものだということが。
「涼夏…っ」
だるい体を無理やりに動かして、なんとかベッドから這い出るようにして起きた。
だんだん息苦しさがひどくなって、まともに息をするのもつらい。
ーー涼夏、大丈夫だよね…?
それが不安だった。
簡単に治らなくても寝込むことがあっても、涼夏が生きていてくれるなら。
それだけで、私はまだ頑張れる、ってそう思えるから。
生まれる前から一緒で、それが当たり前で、まるで空気みたいにいるのが普通だった。
側にいなくても側にいてくれているような、不思議な安心感があった。
それは涼夏だからできることで、他の誰も涼夏の代わりにはなれない。
双子として、妹としてずっと一緒にいたから、側にいないなんて考えられない。
なんの根拠もないのに、涼夏は絶対にいなくならないって今も思ってる。
でも、そう思うほど胸が痛くて苦しくて、それ以上の苦しみを感じてるだろう涼夏が心配で不安でたまらなかった。
その時だった。
スマートフォンが着信を伝え、画面に〝お母さん〟の文字が出たのは。
今までほとんどかかってきたことがないのに、なんでこんな時に限って。
『今から病院に来れる?』
躊躇いながらも電話に出ると耳に届いたお母さんの声は小さく震えていて、いつもより弱々しく聞こえた。
「え、学校がーー」
『……涼夏が急変して、苦しそうにしながらずっとあんたの名前を呼んでるのよ』
「え」
『だから病院に来なさい。涼夏が待ってるから』
わかったわね、と念押しして、電話が切れた。
いつも向けられるものとは違う、ほんの少し優しさが見えるような言葉。
でもそれは私に対してのものじゃない、涼夏が望んでいることだからだ。
行かなきゃ、涼夏が待ってるんだから。
そう思うのに、この胸の痛みが、ひたすら続く苦しみが嫌な未来を想像させる。
考えたくないのに、どうしてもこれから待ち受けているだろう未来の光景が過ぎる。
なにをバカなことを、と笑えたらよかった。
涼夏の元気な姿を見て、笑い話になるくらいに一緒に生きていけたらいいのに。
「…っ…」
嗚咽が漏れそうになる。
いつも涼夏に会うのは嬉しくて、笑顔を見るだけで安心して、自分の存在意義を感じることができた。
それもこれもすべて涼夏がいたからで、いなくなってしまったらパッと消えてしまう。
私の存在も生きる理由も、涼夏がいるからこそなのに。
会いたいのに会いたくないーーそう思ったのは、きっと初めてだった。
『夏姫ちゃん』
ふと聞こえた涼夏の声。
顔を上げてみてもそこに涼夏がいるわけもなく、家の中は相変わらず静まり返っているだけだった。
『夏姫ちゃんが来るまで頑張るから、絶対に会いに来てね』
それは耳というより脳に直接語りかけられたような言葉だった。
空耳かもしれない、だとしても涼夏の想いが伝わってくるのがわかった。
今まで涼夏はどんなことがあっても、ワガママも〝絶対〟の言葉も言ったことなんてなかった。
でも今、涼夏は言った。
それだけの想いがあるんだとわかって、行かないわけにはいかない。
どんな現実が待っていたとしても後悔しないように、会いに行かなきゃ。
「待っててね……涼夏…」
頑張れ、なんて言いたくない。
でも今だけは言わせて。
ーー私が行くまで頑張って。
ただそれだけを願い、私は胸の痛みを受け止めながらも病院へと向かった。
最後に、涼夏に会うために。
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