【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

文字の大きさ
22 / 66
王立学園編~前編

21.クラス分け

しおりを挟む
 ここ王立学園は13歳の年から5年もの間、学生として学園に通う。
 魔力が15以上の者なら平民でも入園出来るが、魔力が高い者の殆どが貴族にて、ほぼ平民はいないのが現状だ。
 逆に貴族で魔力が14以下だと、王立学園には通えない為、今後の人生に大きく影響する。
 男なら、出世コースから外れる事は当たり前、女なら望ましい結婚が出来ないなど……。
 
 
 今年の新入生も平民が12名程いるが、殆どが貴族だ。
 クラス分けも、貴族位と魔力の大きさで組み分けされている。
 魔力、貴族位共に高いクラスを特Aクラスとなり、そこから順にA、B、Cの4クラスだ。
 もちろん攻略対象者は特Aクラスにいる。
 そして男爵令嬢と言えども、聖女候補であるヒロインも当然このクラスだ。
 
 そして……
 
 残念ながら……私も特Aクラスだ……。
 
 唯一の救いはグレイが一緒だということだろう。
 
「ん? そういえば、グレイって、どういう設定なの?」
 
「何だ? 設定とは」
 
 私の質問に、バカにしたような目で見るのはやめて欲しい。
 
 
「だって、グレイって貴族じゃないでしょ?」
 
「ああ、それな」
 
 納得したかのようにグレイが頷く。
 
 
「お前の爺さんに協力してもらった。
 隣国からの留学生として入園する」
 
 
「お祖父様に!?」
 
「ああ」
 
 
 なんて事。
 お祖父様なら、幻獣のグレイの頼み事ならすぐ聞くでしょうね。
 
 
「あれ? でも人間の姿に変えて会いに行ったのなら、ケット・シーだって分からないんじゃない? よく協力してくれたわね」
 
 
「目の前でケット・シーから人間の姿に変わったら、流石に信じるだろ?」
 
 
 グレイは自慢げにそう話す。
 
 うん、グレイ。
 大事な事を小出しに言うのはやめて。
 
 
「じゃ、自由に姿を変えられるの?」
 
「一応決まりはあるがな」
 
 そう言って、一緒に特Aクラスに入る。
 すると、視線が一気にグレイに集まった。
 
 
 
「誰? あの人。見たことない」
「でも、ステキな人だわ」
「どこのご令息なのかしら?」
 主にご令嬢方が頬を染めながら、ヒソヒソと話している。
 令息達は、見た事のない人物にやや警戒しているようだ。
 
 そんな視線をものともせず、グレイは後方席で空いているところに座り、私に視線で横に座れと指示する。
 
 私はグレイに、にっこりと微笑むと、グレイから離れた適当な席に座った。
 
 冗談じゃない。
 こんなに注目されているグレイの隣りに座る勇気など持ち合わせてはいない。
 
『おい。何故そこに座る?』
 
 グレイから念話が飛んできた。
 
『グレイが目立っているからよ』
 
『気にしなければいい』
 
『私は気にするの』
 
 そんな念話を続けていると、担任がやって来た。
 
 定番の自己紹介にて、第1王子の挨拶から始まり、各々の挨拶が続く。
 
「最後に隣国のティエス帝国からの留学生に自己紹介をしてもらおう」
 
 担任の言葉で、クラスのみんなの視線が一気にグレイに集まる。
 
 グレイは静かに立ち上がった。
 
「ティエス帝国から来ましたグレイ・フィリスです。父とこの国のベルイヤ前侯爵が懇意にしており、ベルイヤ前侯爵よりこちらの国の素晴らしさをよくお聞きしていたので、こちらの国で学びたく思い、やって来ました。どうぞよろしく」
 
 そう挨拶した後、優雅に一礼をする。
 
 その仕草にほぅっと令嬢達は惚けるように溜息を吐いた。
 
 
「幸いベルイヤ前侯爵の孫であるエマ・ベルイヤさんもこのクラスにいます。ベルイヤさん、フィリス君に色々手伝ってあげて下さいね」
 
 担任の言葉と同時に私に視線が向く。
 その視線は主に妬みと羨望、好奇の目。
 
 終わった。私の静かな学生生活。
 
「ベルイヤさん、よろしく」
 
 そう言ったグレイのいい笑顔に、思わず睨みそうになる私であった。
 
 
 
 
 
 
 入園式から数週間が経ち、新入生もようやく少し学園生活に慣れて来た頃────
 
 
「エマ。今日はようやく初めての魔法学の授業ですわね。ドキドキしますわ」
 
 以前お茶会で友達になったセリーヌが話しかけてきた。
 
 セリーヌは魔力21で、魔法は水属性なのだそうだ。
 もちろん特Aクラスにいる。
 入園式の時は、ヒロインや攻略対象者、そしてグレイに気を取られていてセリーヌがいた事に全く気付いていなかった。
 セリーヌから話しかけてくれたので、本当に有難い。
 その後は一緒に行動してくれるので、グレイの事も自然に受け入れてくれる。
 今ではセリーヌとグレイの3人でよく行動していた。
 
「初めての魔法学は、まだ属性に関係なく魔法の一般知識なんでしょ? 一般魔法学の先生は誰なのかしら?」
 
 私の質問に、セリーヌは目を輝かして言ってくる。
 
「アストナ先生らしいですわよ! あの方、大人の魅力があって、とても素敵ですわよね」
 
 なるほど。
 さっきのドキドキ発言は、そういう意味なのね。
 
「セリーヌはアストナ先生が気に入っているのね」
 
「やだ! そういうんじゃないですわよ!? あくまで先生として尊敬しているだけですわ!」
 
 真っ赤な顔で私の言葉に過剰反応を示すセリーヌが、とても分かりやすくて可愛い。
 
 
「はいはい、そういう事にしておきましょうね」
 
 
 笑いながらセリーヌと会話を楽しんでいると、授業が始まる知らせの鐘がなった。
 
 
 教室に入ってきたアストナ先生は、クラス全体を見回した後、一瞬私に視線をとめる。
 軽く微笑んでから、みんなの前で挨拶をした。
 
「今日からこのクラスの一般魔法学を教えるジャック・アストナだ。専攻は聖属性。
 一般魔法学では魔法の基礎知識を学び、その後それぞれの属性魔法学を受ける流れとなる。
 このクラスの者は殆どが入園前に事前学習を行なってきたと思うが、もう一度振り返りながら、しっかりとした基礎知識を身に付けてほしい」
 
 そう言ってまた、私に視線をよこす。
 
 私も小さく会釈をして応じた。
 
 ヒロインはアストナ先生に対してまだ興味を持ってない様子。
 強制力が働いて、今後アストナ先生はヒロインに惹かれていくのだろうか。

 出来ればアストナ先生にはヒロインと関わらずに、今のままのアストナ先生でいて欲しいな……。


 私は、一抹の不安を感じながら授業を受けていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢マレーネは、音楽会で出会った聖女様とそっくりさんだった。え?私たち双子なの。だから、入れ替わってまだ見ぬ母に会いに行く

山田 バルス
恋愛
 ベルサイユ学院の卒業式。煌びやかなシャンデリアが吊るされた大広間に、王都中から集まった貴族の若者たちが並んでいた。  その中央で、思いもよらぬ宣告が響き渡った。 「公爵令嬢マレーネ=シュタイン! 今日をもって、君との婚約を破棄する!」  声の主は侯爵家の三男、ルドルフ=フォン=グランデル。茶色の髪をきれいに整え、堂々とした表情で言い放った。場内がざわつく。誰もが驚きを隠せなかった。  婚約破棄。しかも公爵家令嬢に対して、式典の場で。 「……は?」  マレーネは澄んだ青い瞳を瞬かせた。腰まで流れる金髪が揺れる。十五歳、誰もが憧れる学院一の美少女。その彼女の唇が、震えることなく開かれた。 「理由を、聞かせてもらえるかしら」  ルドルフは胸を張って答えた。 「君が、男爵令嬢アーガリーをいじめたからだ!」  場にいた生徒たちが、一斉にアーガリーのほうを見た。桃色の髪を揺らし、潤んだ瞳を伏せる小柄な少女。両手を胸の前で組み、か弱いふりをしている。 「ルドルフ様……わたくし、耐えられなくて……」  その姿に、マレーネはふっと鼻で笑った。 「ふざけないで」  場の空気が一瞬で変わった。マレーネの声は、冷たく、鋭かった。 「私がいじめた? そんな事実はないわ。ただ、この女がぶりっ子して、あなたたちの前で涙を浮かべているだけでしょう」  アーガリーの顔から血の気が引く。だが、ルドルフは必死に彼女を庇った。 「嘘をつくな! 彼女は泣きながら訴えていたんだ! 君が陰で冷たく突き放したと!」 「突き放した? そうね、無意味にまとわりつかれるのは迷惑だったわ。だから一度距離を置いただけ。あれを“いじめ”と呼ぶのなら、この場の誰もが罪人になるんじゃなくて?」 会場に小さな笑いが起きた。何人かの生徒はうなずいている。アーガリーが日頃から小芝居が多いのは、皆も知っていたのだ。  ルドルフの顔に焦りが浮かぶ。しかし、彼は引き下がらない。 「と、とにかく! 君の性格の悪さは明らかだ! そんな女とは婚約を続けられない!」 「……そう」 マレーネの笑顔がふっと消え、青い瞳が鋭く光った。その瞬間、周囲の空気がピリピリと震える。  彼女の体から、圧倒的な魔力があふれ出したのだ。 「な、なに……っ」  ルドルフとアーガリーが同時に後ずさる。床がビリビリと振動し、会場の壁が一部、音を立てて崩れ落ちた。魔力の衝撃にシャンデリアが揺れ、悲鳴が飛び交う。    

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

処理中です...