【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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宝玉編~

48.本当の力

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 王宮に着いた私は、そのまま魔力測定器のある部屋に連れてこられた。
 
 どうやら大会が終わったら、早々に私の魔力を図る算段をされていたようだ。
 
 
 そこには先程会場に来られていた陛下や王妃様、側妃様を始め、多くの大臣や教会関係者が集まっていた。
 
 
「大会終了早々で疲れているところ申し訳ない。しかし、君の魔力測定はすぐにでも行なわないといけないと思ったのだ。
 早速だが、この測定器に乗ってくれるかい?」
 
 
 みんなを代表して、大司教様がそう話す。
 
 私はこんな公衆の面前で靴下を脱いで測定する事に、やや躊躇した。
 
 
「どうした? 測定出来ない理由でもあるのかな?」
 
 
 さすがはレスターの父親。
 嫌味ったらしいところは親子だなと思いつつ、発言する。
 
 
「このような大勢の人の前で靴下を脱ぐ事に、やや抵抗があっただけでございます」
 
 そう言った私に、少し気まずげに言葉を濁す。
 
 
「あ、あぁ。それは配慮が足らず申し訳ない。
 しかし……」
 
 
 大司教はそう言いながらも、食い下がろうとする。
 
 
「淑女たるもの、このような公衆の面前で素足を晒すのは抵抗があって当たり前です。
 ごめんなさいね、すぐにメイドに準備させますわ」
 
 
 見かねた王妃様の発言で、一旦控え室にて膝下までのスカートの制服から、裾の長いドレスに着替える。
 こうすれば、裸足でも直接素足が見られる事はない。
 
 
 控え室から出た私は改めて王妃様にカーテシーをして礼を尽くし、測定器の前に立つ。
 
 
「では、エマ・ベルイヤ嬢。
 測定器の上に乗りなさい」
 
 
 大司教の言葉に、私は素直に応じて測定器の上に乗る。
 
 すると、画面に測定内容が表記された。
 
 
 【⠀魔力: 218  】
 【⠀属性: 聖  】
 【⠀属性: 光  】
 【⠀属性: 空間    】
 【⠀属性: ?  】
 
 
 あら? 魔力がまた上がった?
 魔法大会の経験値が貯まったからかしら?
 
 
 呑気にそう考えていた私とは正反対に、周りの人達が大騒ぎし始める。
 
 
 
 
「何だこの数値は!? 測定器の故障か!?」
「属性を見ろ! 何故あんなに出ているんだ?」
「? って何だ?」
 
 などなど。
 
 
 予想していたとはいえ、凄い反響に少し怖気付く。
 
 
「どういう事だ? 故障? いや、合ってるな……」
 
 
 大司教が自分も測定器に乗って故障の有無を確かめていた。
 
 
 
 騒がしさを陛下が片手を上げて制し、私に尋ねてくる。
 
 
 
「エマ嬢。君はこの測定内容を見ても落ち着いているな。どういう事なのか説明してもらえるかな?」
 
 
 今の陛下は先程大会で見せた優しい表情はしていない。
 鋭く私を観察しながら警戒しているのが、ありありと分かる態度だった。
 
 
 
「わたくしの能力は、今まで偽りの能力を表記しておりました。
 本来の能力は、本日ここで示した通りにございます」
 
 私の言葉に、陛下は怪訝な顔をする。
 
 
 
「この魔力測定器は、この世界共通の傑作品。わざと偽りの能力を表記させるのは不可能だと聞いておるが……。大司教、どうだ?」
 
「その通りにございます。偽りの表記など、誰も出来ないと断言できます。
 この娘は明らかに虚言を申しておるのかと」
 
 
 陛下の質問に、大司教が私を訝しげに見ながらそう説明する。
 周りにいた教会関係者や大臣らも、同じような目で私を見てコソコソ言っていた。
 
 
「もちろんわたくしは、そのような事は出来ません。これはある力の協力を得て行なっていたものでございます」
 
「ある力?」
 
 陛下は私の言葉に疑問を呈す。
 私は力強く頷いて、説明を始めた。
 
 
「はい。わたくしは10歳の頃、我が侯爵家の領地にて過ごす事となりました。
 その領地にて、神の遣いである幻獣様と出会ったのです」
 
 私の言葉に、いよいよ頭のおかしな娘の戯言と周りはざわめきだす。
 私はそれに構わず、続きを話した。
 
 
「その幻獣様は領地の屋敷内でわたくしと共に過ごして下さいました。これは領地にいる祖父母にも確認して頂ければ御理解下さる事かと存じます」
 
 
 この説明に関して、陛下は頷いた。
 
「前ベルイヤ侯爵より、内密に幻獣様の事は報告を受けていた。ごく稀にしか出会えない幻獣様がいる事で、この国が魔物から守られている事も理解しているつもりだ」
 
 
 
 え?
 そんな情報は知らないけど?
 
 てか、この世界に魔物とかいたの!?
 
 (グレイ~! 魔物って、どういう事!?)
 
 私は強く心で念じてグレイに話しかける。
 すると、グレイの念話が届いた。
 
『お前……今、そこを気にする場合じゃないだろ……後で説明してやるから、取り敢えずは本題に戻れ!』
 
 
 あ、そうでした。
 
 陛下との対話中だった事を思い出し、内心焦りながら、返答する。
 
 
「はい。その幻獣様のお力をお借りして、わたくしは今まで本当の力を隠しておりました」
 
 
「それは何故だ?」
 
 
「通常の魔力は100まで。この国の1番高い魔力保持者でも魔力は84とか。
 その中で12歳になったばかりのわたくしが、その当時は185の魔力を保持していたなど、有り得ない事でございます。
 また、属性も通常は1つのみ。
 4種類の属性持ちが発覚すれば、わたくしは異端児とされ、その後どう扱われるか分かりません。
 それを危惧して幻獣様が、わたくしの能力を隠して下さいました」
 
 
 私の説明に、陛下は頭を抱えている。
 
 大司教様が、そんな私を指さして、ふざけた事を言い放った。
 
 
「陛下! その娘はきっと悪魔か何かに違いありません! こんな魔力と属性なんて人間では有り得ない! すぐに処罰すべきです!」
 
 
 大司教様の言葉に、周りの人達も動揺する。
 
「確かに有り得ない」
「人間ではないのか!?」
「危ない存在なのでは!?」
 
 徐々に周りも大司教様に同調するような言動が見え始めた。
 
 
 あら? これは少々まずいのでは?
 グレイに幻獣姿で出てきてもらうまでに、私、捕まっちゃう?
 
 
 そんな事を思っていた時、部屋のドアが開いて入ってくる人が居た。
 
 
「そのご令嬢は、れっきとした人間ですよ。
 しかも女神様の御加護を大いに受けている特別な方ですね」
 
 そう言ったその人は教会関係者のようで、白い立襟の司祭服を着ていた。
 
 
「教皇様!?」
 
 その人を見て、大司教様が叫ぶ。
 どうやらこの方は教皇様のようだ。
 その方は私を見て、敬意を払うように礼をする。
 
 
「女神様の愛し子であらせられるこの方を悪魔などと、とんでもない事を言っているとは……。
 大司教、君の目は節穴ですか?
 どうやら私がいない間に、ずいぶんと堕落したようですね」
 
 
 大司教に冷たい目をむけながら、教皇はそう言い放った。
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