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前世の彼女の知らない話と因果応報のような理不尽
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あの子と出会ったのは、彼女のお誕生日会の時。分家の子供も集めた素敵で盛大なお誕生日会で、少し前に行われた自分の誕生日会とは全く違っていてズルイと思った。何故、私はあの子じゃないのだろうか。うちは『聖女』の血筋なのに。だから、私は『聖女』様にお祈りを捧げる。あの子になれますようにと、毎日お祈りをする。毎日、毎日、毎日。
毎日お祈りを続けていると、気がつけば『聖女』様が隣にいた。
わたしはあなたあなたはわたしと『聖女』様は優しく嗤う。
私以外は見ることができない儚く美しい『聖女』様に嬉しくなって、更にお祈りを続ければ、お兄様があの子の家の後継者に選ばれる。末端の分家から抜擢されるのは珍しいらしく、両親はすごく喜んだ。お兄様が後継者なら、あの子になれるのかもしれないと思ったけれど、あの子は王子様のお嫁さんになるらしい。それはズルイと思う。『聖女』様も、それは正しくないと耳元で囁いてくれた。
その夜、両親を『聖女』様に捧げた。
すると、お兄様が後継者として引き取られたことを口実に、あの子の家に自由に出入りできるようになる。土気色の顔をした両親がいる家から、いつあの子の家へ行ってもお姫様のような待遇で。私はあの子になれたような気がした。その代わり、あの子の待遇がほんのちょっぴり悪くなったので嬉しくなる。
でも、すぐに満足できなくなる。
だから、次にお兄様とあの子の家の使用人を『聖女』様に捧げた。
すると、あの子が王子様やお友達に会うのを邪魔しても、誰も何も咎めて来なくなった。それどころか、あの子も王子様も気付かないし、少し存在感が濃くなった『聖女』様を崇拝する土気色の顔をした使用人やお兄様が邪魔するのを手伝ってくれるようになった。仕事が忙しくてなかなか会えないあの子のお父様以外は、すっかり私があの子。何て素敵なことだろうと思っていた。
これで十分だと思っていたけれど、暫くするとやっぱり満足できなくて。
だから、次にあの子のお父様を『聖女』様に捧げた。
すると、土気色の顔をしたあの子のお父様が、私の『お父様』になった。私の『お父様』は可愛がっていた筈のあの子を罵り、見向きもしなくなる。あの子が絶望して寝込むようになると、溜飲が下がる。すっかり普通の女性に見える『聖女』様は、あの子は今夢の中で私たちに対してしたことの罰を受けているのよとトロリと嗤った。そう、あの子が全て悪い。あの子の物は全て私の物にならなければならない。
後、あの子に残っているのは、王子様だけ。
あの子は未来永劫生まれ変わっても不幸でないといけない。
だから、次に王子様のお友達を『聖女』様に捧げた。
私のことをすっかりあの子だと思っている王子様のお友達の一人目を捧げると、『聖女』様がおかしなことを言い出す。私たちを虐げた血を引いた王子様もあの子と同じように、罰しなければならないと。罰を受けなければならないと。そんなことは『聖女』様にはお願いしていないのに。
その後すぐに、王子様とはご病気で倒れてお会いすることができなくなる。
どうしたらいいだろうか、どうしたらいいだろうか、どうしたらいいだろうか。
もっと『聖女』様に捧げ物をすれば、お願いを聞いて貰えるだろうか。
三人目のお友達を捧げた夜、『聖女』様は「王子様とあの子がいなくなった」と美しい笑顔で告げてきた。慌てて、あの子を探しに行くと彼女は物置小屋で衰弱して冷たくなっていて。腐りかけているお兄様も使用人もいつの間にかあの子の世話をしなくなっていたらしい。
あの子が死んでいなくなったなら、王子様はどうしたのだろう。
物置小屋の入り口で立ち尽くしていると、『聖女』様が優しく肩に手を掛ける。
次に王子様がいる時にあの子が現れたら成り代わって未来永劫不幸にしてあげると、『聖女』様は鈴を転がすような声で言う。まるで、あの子に成り代わるのは『聖女』様かのように。
驚いて振り向けば、あなたはわたしでわたしはあなただからと、『聖女』様は血のように赤い口を大きく開けたのだった。
そして、私は『聖女』様の捧げ物になった。
あの女になりかわれますように。
王子様とそのお友達が人が変わったようにあの女を嫌いになりますように。
そして、あの女が未来永劫生まれ変わっても不幸になりますように。
毎日お祈りを続けていると、気がつけば『聖女』様が隣にいた。
わたしはあなたあなたはわたしと『聖女』様は優しく嗤う。
私以外は見ることができない儚く美しい『聖女』様に嬉しくなって、更にお祈りを続ければ、お兄様があの子の家の後継者に選ばれる。末端の分家から抜擢されるのは珍しいらしく、両親はすごく喜んだ。お兄様が後継者なら、あの子になれるのかもしれないと思ったけれど、あの子は王子様のお嫁さんになるらしい。それはズルイと思う。『聖女』様も、それは正しくないと耳元で囁いてくれた。
その夜、両親を『聖女』様に捧げた。
すると、お兄様が後継者として引き取られたことを口実に、あの子の家に自由に出入りできるようになる。土気色の顔をした両親がいる家から、いつあの子の家へ行ってもお姫様のような待遇で。私はあの子になれたような気がした。その代わり、あの子の待遇がほんのちょっぴり悪くなったので嬉しくなる。
でも、すぐに満足できなくなる。
だから、次にお兄様とあの子の家の使用人を『聖女』様に捧げた。
すると、あの子が王子様やお友達に会うのを邪魔しても、誰も何も咎めて来なくなった。それどころか、あの子も王子様も気付かないし、少し存在感が濃くなった『聖女』様を崇拝する土気色の顔をした使用人やお兄様が邪魔するのを手伝ってくれるようになった。仕事が忙しくてなかなか会えないあの子のお父様以外は、すっかり私があの子。何て素敵なことだろうと思っていた。
これで十分だと思っていたけれど、暫くするとやっぱり満足できなくて。
だから、次にあの子のお父様を『聖女』様に捧げた。
すると、土気色の顔をしたあの子のお父様が、私の『お父様』になった。私の『お父様』は可愛がっていた筈のあの子を罵り、見向きもしなくなる。あの子が絶望して寝込むようになると、溜飲が下がる。すっかり普通の女性に見える『聖女』様は、あの子は今夢の中で私たちに対してしたことの罰を受けているのよとトロリと嗤った。そう、あの子が全て悪い。あの子の物は全て私の物にならなければならない。
後、あの子に残っているのは、王子様だけ。
あの子は未来永劫生まれ変わっても不幸でないといけない。
だから、次に王子様のお友達を『聖女』様に捧げた。
私のことをすっかりあの子だと思っている王子様のお友達の一人目を捧げると、『聖女』様がおかしなことを言い出す。私たちを虐げた血を引いた王子様もあの子と同じように、罰しなければならないと。罰を受けなければならないと。そんなことは『聖女』様にはお願いしていないのに。
その後すぐに、王子様とはご病気で倒れてお会いすることができなくなる。
どうしたらいいだろうか、どうしたらいいだろうか、どうしたらいいだろうか。
もっと『聖女』様に捧げ物をすれば、お願いを聞いて貰えるだろうか。
三人目のお友達を捧げた夜、『聖女』様は「王子様とあの子がいなくなった」と美しい笑顔で告げてきた。慌てて、あの子を探しに行くと彼女は物置小屋で衰弱して冷たくなっていて。腐りかけているお兄様も使用人もいつの間にかあの子の世話をしなくなっていたらしい。
あの子が死んでいなくなったなら、王子様はどうしたのだろう。
物置小屋の入り口で立ち尽くしていると、『聖女』様が優しく肩に手を掛ける。
次に王子様がいる時にあの子が現れたら成り代わって未来永劫不幸にしてあげると、『聖女』様は鈴を転がすような声で言う。まるで、あの子に成り代わるのは『聖女』様かのように。
驚いて振り向けば、あなたはわたしでわたしはあなただからと、『聖女』様は血のように赤い口を大きく開けたのだった。
そして、私は『聖女』様の捧げ物になった。
あの女になりかわれますように。
王子様とそのお友達が人が変わったようにあの女を嫌いになりますように。
そして、あの女が未来永劫生まれ変わっても不幸になりますように。
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