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さらに報連相が足りません
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やってきました謎の旦那様の領地へ。
まるで囚人みたいに目隠しされた馬車に揺られること数日、どこにあるのだか解らない領地に。どうやら、行ったり来たりして真っ直ぐに領地へ向かわなかったらしい。途中、宿にも泊まったけれど、従業員等からは完全隔離されていて、聞き込みも何もできないない。旦那様が着けてくれた騎士は、うちの親戚連中みたいに筋肉は裏切らない系の脳筋ではないらしい。
せっかく、お爺様と伯父様に鍛えられてきた成果を見せようと思ったのにと愚痴ると、一緒に拉致された侍女のアニーはがっくりと肩を落とす。
「すっかり、楽しんでおらねますね、お嬢様」
「あら、せっかくだから楽しまないと損じゃない」
「旦那様と坊ちゃまにご連絡しなくて良いのですか?」
「今、どこにいるかも解らないのに?」
「デスヨネー」
と、真顔のアニーが棒読みで言った時、ちょうど馬車が止まる。また休憩かしらと思っていると、馬車の扉が開く。兜で顔を隠している騎士様が外へ出るようにとくぐもった声で言う。馬車の外へ出ると、そこは森の中で。もしかして、伯母様と同じように捨てられてしまうのだろうか。お爺様と伯父様の地獄の特訓を受けた私ならいざ知らず、サバイバル生活はアニーには少し荷が重いかもしれない。馬車を強奪した方が早いかしらと考えていると、騎士様が森の奥を指さす。目を凝らせば、辛うじてお屋敷があるのが見えた。
「大変申し訳ないのですが、ここからはあそこまで徒歩で行って頂けないでしょうか」
と、すまなそうに言った騎士様が、馬車から鞄を下ろしてなぜかちゃんと手が入っているような道に置く。丁寧な手つきといい、ここまでの行程のことを考えると特に害意はなさそうには見えないが、油断大敵ということもある。何しろ、我が家は自慢ではないのだが先祖代々大事な所で極度のうっかりさんなのだから。
鞄を受け取ると、紋章も何もついてない馬車はあっけなく元の道を戻ってしまう。森の中にふたりで残される。とはいえ、遠くに見えるとはいえ、一応行き先はあるのだけど。
気を取り直して、二つの鞄を手に遠くに見えるお屋敷に向かって歩き始める。
しかし、幾ら歩いても屋敷はずっと同じ大きさで。どれだけ遠くにあるのだろうかとため息をつくと、アニーが力尽きたように崩れ落ちた。そのまま、恨みがましい目で見上げてくる。黙っていれば、美人秘書に見えるのに勿体ないと思わずにいられない。いや、実際有能なのだけど、なぜか幼少期から仕えている私には厳しいのだ。
「お嬢様、アニーはこれまでです。ここに捨て置いていって下さい」
「解ったわ。骨は拾ってあげる」
「お嬢様、薄情ですね。旦那様にお嬢様は鬼でしたと報告いたしますよ」
「捨て置いて行って下さいと言ってなかった?」
「空耳です」
「ソラミミデスカー。全く、仕方ないわね。ちょっと待ってなさい」
座り込んだアニーを残して、私は藪の中に入る。鞄を開けて、いつも持ち歩いて訓練用の服を探す。殆どが、新しく用意された物だけど幾つかは卒業パーティーの時に持っていた物だった。暫く鞄を漁った後、目的の物を見つける。良くぞ没収されなかったと思いながら着替えていると、鞄の中に見覚えのない平たい箱が入っていることに気がつく。正確に言えば、殆どが見覚えがないものなのだけど。
いったい、何が入っているのだろうか。
好奇心は猫をも殺すと思いながら箱を開けると、中にはアクセサリー一式納められていて。勿論、アクセサリーの色は旦那様の色で。こんな所で使うことがあるのかしらと首を傾げていると、「お嬢様ー、そろそろ移動しないと日が暮れてしまいますよー」と出発を急かすアニーの声が聞こえた。
いったい、どっちが主人なのか解らない。
とりあえず、お屋敷に着いてから考えればいいかと箱を再び鞄に放り込み、アニーの所へ戻る。そして、アニーを背負った上で全ての鞄を持つ。一応、私の方が主人なんだけど、何かがおかしい。そのまま、お屋敷に向かって歩く。「頑張って下さい、お嬢様ー。ファイトですよー、お嬢様ー」と、背中からアニーの全く心が籠もっていない声援を受けながら歩いてどの位経っただろうか。
ようやく、私たちはお屋敷に辿り着いたのだった。お屋敷まで門がないということは、森自体が敷地なのだろう。どこのどこなのか、未だに解らないけれど。
扉の前には、連絡を受けていたのか、ふくよかなご婦人が待ち構えていた。彼女は人の良さそうな笑みを浮かべると、両腕を広げる。どうやら、思った以上に歓迎してくれるらしい。
そして、
「あらー、可愛い護衛さんと侍女さんね。坊ちゃまの奥様が来るのに人手が足りなくて困っていたのよ」
と、ふくよかなご婦人は、実に嬉しそうに言ったのだった。
どうやら、騎士様たちは私たちのことを護衛と侍女と連絡したらしい。何がどうしたら、そうなるのか全く解らないけれど。どこかで、何か騙されている気がして堪らない。
それにしても、旦那様。ここは、どこなのでしょうか。
まるで囚人みたいに目隠しされた馬車に揺られること数日、どこにあるのだか解らない領地に。どうやら、行ったり来たりして真っ直ぐに領地へ向かわなかったらしい。途中、宿にも泊まったけれど、従業員等からは完全隔離されていて、聞き込みも何もできないない。旦那様が着けてくれた騎士は、うちの親戚連中みたいに筋肉は裏切らない系の脳筋ではないらしい。
せっかく、お爺様と伯父様に鍛えられてきた成果を見せようと思ったのにと愚痴ると、一緒に拉致された侍女のアニーはがっくりと肩を落とす。
「すっかり、楽しんでおらねますね、お嬢様」
「あら、せっかくだから楽しまないと損じゃない」
「旦那様と坊ちゃまにご連絡しなくて良いのですか?」
「今、どこにいるかも解らないのに?」
「デスヨネー」
と、真顔のアニーが棒読みで言った時、ちょうど馬車が止まる。また休憩かしらと思っていると、馬車の扉が開く。兜で顔を隠している騎士様が外へ出るようにとくぐもった声で言う。馬車の外へ出ると、そこは森の中で。もしかして、伯母様と同じように捨てられてしまうのだろうか。お爺様と伯父様の地獄の特訓を受けた私ならいざ知らず、サバイバル生活はアニーには少し荷が重いかもしれない。馬車を強奪した方が早いかしらと考えていると、騎士様が森の奥を指さす。目を凝らせば、辛うじてお屋敷があるのが見えた。
「大変申し訳ないのですが、ここからはあそこまで徒歩で行って頂けないでしょうか」
と、すまなそうに言った騎士様が、馬車から鞄を下ろしてなぜかちゃんと手が入っているような道に置く。丁寧な手つきといい、ここまでの行程のことを考えると特に害意はなさそうには見えないが、油断大敵ということもある。何しろ、我が家は自慢ではないのだが先祖代々大事な所で極度のうっかりさんなのだから。
鞄を受け取ると、紋章も何もついてない馬車はあっけなく元の道を戻ってしまう。森の中にふたりで残される。とはいえ、遠くに見えるとはいえ、一応行き先はあるのだけど。
気を取り直して、二つの鞄を手に遠くに見えるお屋敷に向かって歩き始める。
しかし、幾ら歩いても屋敷はずっと同じ大きさで。どれだけ遠くにあるのだろうかとため息をつくと、アニーが力尽きたように崩れ落ちた。そのまま、恨みがましい目で見上げてくる。黙っていれば、美人秘書に見えるのに勿体ないと思わずにいられない。いや、実際有能なのだけど、なぜか幼少期から仕えている私には厳しいのだ。
「お嬢様、アニーはこれまでです。ここに捨て置いていって下さい」
「解ったわ。骨は拾ってあげる」
「お嬢様、薄情ですね。旦那様にお嬢様は鬼でしたと報告いたしますよ」
「捨て置いて行って下さいと言ってなかった?」
「空耳です」
「ソラミミデスカー。全く、仕方ないわね。ちょっと待ってなさい」
座り込んだアニーを残して、私は藪の中に入る。鞄を開けて、いつも持ち歩いて訓練用の服を探す。殆どが、新しく用意された物だけど幾つかは卒業パーティーの時に持っていた物だった。暫く鞄を漁った後、目的の物を見つける。良くぞ没収されなかったと思いながら着替えていると、鞄の中に見覚えのない平たい箱が入っていることに気がつく。正確に言えば、殆どが見覚えがないものなのだけど。
いったい、何が入っているのだろうか。
好奇心は猫をも殺すと思いながら箱を開けると、中にはアクセサリー一式納められていて。勿論、アクセサリーの色は旦那様の色で。こんな所で使うことがあるのかしらと首を傾げていると、「お嬢様ー、そろそろ移動しないと日が暮れてしまいますよー」と出発を急かすアニーの声が聞こえた。
いったい、どっちが主人なのか解らない。
とりあえず、お屋敷に着いてから考えればいいかと箱を再び鞄に放り込み、アニーの所へ戻る。そして、アニーを背負った上で全ての鞄を持つ。一応、私の方が主人なんだけど、何かがおかしい。そのまま、お屋敷に向かって歩く。「頑張って下さい、お嬢様ー。ファイトですよー、お嬢様ー」と、背中からアニーの全く心が籠もっていない声援を受けながら歩いてどの位経っただろうか。
ようやく、私たちはお屋敷に辿り着いたのだった。お屋敷まで門がないということは、森自体が敷地なのだろう。どこのどこなのか、未だに解らないけれど。
扉の前には、連絡を受けていたのか、ふくよかなご婦人が待ち構えていた。彼女は人の良さそうな笑みを浮かべると、両腕を広げる。どうやら、思った以上に歓迎してくれるらしい。
そして、
「あらー、可愛い護衛さんと侍女さんね。坊ちゃまの奥様が来るのに人手が足りなくて困っていたのよ」
と、ふくよかなご婦人は、実に嬉しそうに言ったのだった。
どうやら、騎士様たちは私たちのことを護衛と侍女と連絡したらしい。何がどうしたら、そうなるのか全く解らないけれど。どこかで、何か騙されている気がして堪らない。
それにしても、旦那様。ここは、どこなのでしょうか。
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