逆境からの見習い冒険者

たらも

文字の大きさ
5 / 20

第5話

しおりを挟む
目が覚めた。
身体の感覚が全くない。
意識はしっかりしている。
周りを見渡すと、白く清潔な広い部屋ようだが、空中に意味不明の文字?や数字?のようなものがびっしり浮かんでいる。

「気がついたかな」

真っ白い服の年齢も性別も良く分からない人から話しかけられた。

「魔物の量を増やし過ぎて、ヒトが減り過ぎてしまったのでね」
「少し巻き戻して、調整する事にした」
「聴力の無いヒトのサンプルとして、君は役に立ってくれた。せっかくだから巻き戻した後は聴力を戻しておくよ」
「2年間の記憶は無くなるがね」

ラナは困惑している。
耳が聞こえる?
言葉がわかる。
そして喋れる。
どうなってるんだろう?
さっきまでゴブリンに食べられていて…

「リア姉ちゃんは!?」

「あの少女なら、君を助けに戻って殺されたよ」
「その後、魔物の大量発生が起きて国そのものが滅んだがね」

「え……!?」

「だから巻き戻しだよ。データも取れたしね」

「なんで…そんな酷い事を平気で…話せるんですか!」

ラナは怒りと悲しさと困惑と恐怖が混ざり合い、よくわからないままに叫んだ。
…意識に空白が生じて、スッと冷静になった。

「サンプルと議論する気はないので、意識を調整した」
「とはいえ、倫理的に問題があったのも事実だ。少し譲歩しよう」

目の前にリアが現れた。

「リア姉ちゃん!」

「ラナ!?」

2人は泣き顔で謝りあって、抱き合った。
暫く、2人は泣いていた。
安心と後悔と懺悔と。

「選ばせてあげよう」
「聴力を戻すか、今の記憶を保持したまま2年前に戻るか」

忘れてしまえば、耳も聴こえる。
魔物の量も調節されるなら、普通に生きていけるのではないだろうか?
でも…今の悔しさを忘れて良いのか?
また、誰も守れないままで終わるんじゃないだろうか。
ラナは目を閉じて。
静かに答えた。

「記憶を」

リアがラナを見つめている。
驚いたように…

「良いだろう」

白い人は答えた。
リアも決心して、声をあげる。

「私も! 私の記憶も残してください!」
「強くなりたいんです!」

「君は五体満足だろう? それとも何か代償を払うのかな?」

リアは俯いた。
しかし…このままで良いはずがない。
ラナに護ってもらった事。
ラナを死なせてしまった事。
父を助けられなかった事。
リアは顔をあげた。

「声を」
「声を渡します。話せなくなっても良い!」
「ラナとは手で話せる」
「耳が聞こえるなら、ラナの代わりに聴くことは出来る!」

「駄目だよ! リア姉ちゃん!」

思わず叫んでしまった。
みんなと違う。
それによって、どれだけ周りが冷たくなるか知っているラナは声を荒らげてしまったが…

「私は決めたの。ラナの代わりに聴く。そしてラナと一緒にみんなを護る」

落ち着いた微笑みでリアは言った。
ラナは思わず見惚れてしまった。

(こんなに…綺麗だったんだ)

リアの覚悟と想いが嬉しいやら、照れくさいやら。
2人なら出来る気がして、ラナは頷いた。

「一緒に」

「うん、一緒にね」

白い人が宙を指す。

「今の君たちのステータスだ」

ラナ
力:6
体力6
知力:14
速さ:7
魔力:0

リア
力:10
体力:12
知力:11
速さ:11
魔力:0

リアに負けてた。

(分かってたけど、実際に見ると凹むなぁ…)

「私の趣味として、少しだけ介入するのも面白いかもしれないな。助言を与えよう」
「魔力を鍛えると良い」

「魔力? どうしたら良いのよ?」

「それは自分達で何とかするんだね」
「最後だ。これがあのゴブリンのステータスだ」
ゴブリン
力:18
体力:15
知力:7
速さ:17
魔力:0

「ステータスは教会で見るとこが出来るが、君達では払えないくらい対価が必要だ」
「よく覚えておくと良い」
「時が戻る関係上、年齢も下がる。知力以外はステータスも下がる」
「もう会う事もないだろうが、興味深い変数となる事を期待する」
「それではな」

ラナとリアは意識を失った。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

処理中です...