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父母の秘密
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オーガスは久しぶりに実家に帰り、父母と夕食を共にした。
王城で、父は侍従を、母は侍女を務めていた。王城近くの官舎に住み、魔術大学の寮からは、徒歩でも帰れる距離だった。実家から大学に通えるのに、寮に入ったのは、仲の良い父母が目に入るのが、いたたまれなくなっていたことが、理由のひとつでもあった。
オーガスの父は魔力が弱く、母は魔力が強く、親に決められた結婚をして、強い魔力を持つ子を得た。成長してオーガスは、Domの本能の欲求が強くなり、父母が、どちらもSubらしいことを、なんとなく気付いた。とても仲の良い父母なのに、Domの愛人を持っているのだろうかと疑ってしまうと同時に、自分が一人っ子であることが、満たされない関係の証明であるような気がしていた。
夕食が終わると、父に
「オーガス、コーヒーでいい?だいじょうぶ?飲める?」
と聞かれて、オーガスは笑ってしまった。夜、眠れなくなるから、子どもの頃は食後のコーヒーを「オトナの飲み物」と言われて、飲ませてもらえなかった。
「だいじょうぶだよ」
オーガスは答えた。もうコーヒーだって飲める大人なのに、親にとっては、いつまでも子どもなのだ。
コーヒーを飲み終わり、オーガスは父母に聞いた。
「父上と母上は、Subだよね?」
父と母は碧の瞳を見開いた。父母子は、皆、碧の瞳を持っていたが、一人一人、微妙に色合いが異なっている。
母が少し黒っぽい碧の瞳をつりあげた。
「オーガス、あなた、そういうことを言うのは、よくないことなの。わかっても、言ってはいけないことだよ」
母の言葉に、父は明るい碧の瞳を精一杯、見開き、力を込めて、うんうん、うなずく。
父は瞳が細く、それを知らないと、切れ長の煌めく碧の瞳、炎のように揺らめく赤毛の美中年に見える。オーガスのふわっふわの鮮やかな赤毛は、父譲りだった。
母と父に叱られても、オーガスは続けた。
「Sub同士なのに、何で結婚したの?魔力の強い子どもを作るため?」
母と父の碧の瞳が動揺した。――オーガスは、やっぱり聞かなきゃよかった。と、後悔した。
「そそそそそそそそんなこと、何で聞くのっ?!」
「オーーーーーーガスもっ、そそそそういうことをっ、考えるほど、オトナになったって、ことだよっっっ」
「ダメ!そんなこと、答えられないっ!」
母は両手で顔を覆った。父は自分を落ち着かせるため、コーヒーを飲み、ぐえっほ、げほげほ、むせた。なんとか呼吸を整えると、父は子に答えた。
「初めに好きになったのは、お母さんの方でね、」
「いや~!だから、やめて~!お父さんの見た目に、だまされたの!お父さん、カッコいいでしょ。見た目ね!見た目だけで、中身、アレなんだけど!」
母が顔を覆ったまま、くぐもった声で叫ぶ。オーガスは、聞いた。
「お父さんも、お母さんも……Domの、愛人が、いるの?」
父は碧の細い瞳を精一杯、見開き、母は顔を覆った手を開き、碧の瞳を見開いた。
父と母が同時にイスを立ち、イスに座るオーガスを左右から抱き締めた。
「いるわけないでしょ」
「いないよ、そんなの」
同時に、子に答えた。
「でも、それなら、どうやって欲求不満を解消してるの?抑制剤?」
「それはね、」
「それはね、」
同時に言って、父母は碧の瞳で笑み交わした。
「国王陛下にお仕えすることで、『支配されたい』なんてSubの本能の欲求は、満たされてるもの」
「国王陛下にお仕えすることで、『支配されたい』なんてSubの本能の欲求は、満たされているから」
王城で侍従を務める父と、侍女を務める母は、同時に答えた。オーガスは父母を見上げる。
「じゃあ何で?ぼく、一人っ子なの?そういう欲求をお互いに感じないからじゃ」
子を抱き締めていた父と母は、ぱっと離れて、互いに背中を向けた。
父は、天井に向かって、人差し指を高く上げた。
「それはねっ、流れ星さまが、このお家に来なかっただけだよ」
母は、自分のお腹に両手を重ね合わせる。
「そう!そうっ!流れ星さまが、このお家に来なかっただけなのっ」
「――流れ星がお母さんのおへそに入って、お腹に赤ちゃんができるんじゃねえって、さすがに、もう知ってっから」
王城で、父は侍従を、母は侍女を務めていた。王城近くの官舎に住み、魔術大学の寮からは、徒歩でも帰れる距離だった。実家から大学に通えるのに、寮に入ったのは、仲の良い父母が目に入るのが、いたたまれなくなっていたことが、理由のひとつでもあった。
オーガスの父は魔力が弱く、母は魔力が強く、親に決められた結婚をして、強い魔力を持つ子を得た。成長してオーガスは、Domの本能の欲求が強くなり、父母が、どちらもSubらしいことを、なんとなく気付いた。とても仲の良い父母なのに、Domの愛人を持っているのだろうかと疑ってしまうと同時に、自分が一人っ子であることが、満たされない関係の証明であるような気がしていた。
夕食が終わると、父に
「オーガス、コーヒーでいい?だいじょうぶ?飲める?」
と聞かれて、オーガスは笑ってしまった。夜、眠れなくなるから、子どもの頃は食後のコーヒーを「オトナの飲み物」と言われて、飲ませてもらえなかった。
「だいじょうぶだよ」
オーガスは答えた。もうコーヒーだって飲める大人なのに、親にとっては、いつまでも子どもなのだ。
コーヒーを飲み終わり、オーガスは父母に聞いた。
「父上と母上は、Subだよね?」
父と母は碧の瞳を見開いた。父母子は、皆、碧の瞳を持っていたが、一人一人、微妙に色合いが異なっている。
母が少し黒っぽい碧の瞳をつりあげた。
「オーガス、あなた、そういうことを言うのは、よくないことなの。わかっても、言ってはいけないことだよ」
母の言葉に、父は明るい碧の瞳を精一杯、見開き、力を込めて、うんうん、うなずく。
父は瞳が細く、それを知らないと、切れ長の煌めく碧の瞳、炎のように揺らめく赤毛の美中年に見える。オーガスのふわっふわの鮮やかな赤毛は、父譲りだった。
母と父に叱られても、オーガスは続けた。
「Sub同士なのに、何で結婚したの?魔力の強い子どもを作るため?」
母と父の碧の瞳が動揺した。――オーガスは、やっぱり聞かなきゃよかった。と、後悔した。
「そそそそそそそそんなこと、何で聞くのっ?!」
「オーーーーーーガスもっ、そそそそういうことをっ、考えるほど、オトナになったって、ことだよっっっ」
「ダメ!そんなこと、答えられないっ!」
母は両手で顔を覆った。父は自分を落ち着かせるため、コーヒーを飲み、ぐえっほ、げほげほ、むせた。なんとか呼吸を整えると、父は子に答えた。
「初めに好きになったのは、お母さんの方でね、」
「いや~!だから、やめて~!お父さんの見た目に、だまされたの!お父さん、カッコいいでしょ。見た目ね!見た目だけで、中身、アレなんだけど!」
母が顔を覆ったまま、くぐもった声で叫ぶ。オーガスは、聞いた。
「お父さんも、お母さんも……Domの、愛人が、いるの?」
父は碧の細い瞳を精一杯、見開き、母は顔を覆った手を開き、碧の瞳を見開いた。
父と母が同時にイスを立ち、イスに座るオーガスを左右から抱き締めた。
「いるわけないでしょ」
「いないよ、そんなの」
同時に、子に答えた。
「でも、それなら、どうやって欲求不満を解消してるの?抑制剤?」
「それはね、」
「それはね、」
同時に言って、父母は碧の瞳で笑み交わした。
「国王陛下にお仕えすることで、『支配されたい』なんてSubの本能の欲求は、満たされてるもの」
「国王陛下にお仕えすることで、『支配されたい』なんてSubの本能の欲求は、満たされているから」
王城で侍従を務める父と、侍女を務める母は、同時に答えた。オーガスは父母を見上げる。
「じゃあ何で?ぼく、一人っ子なの?そういう欲求をお互いに感じないからじゃ」
子を抱き締めていた父と母は、ぱっと離れて、互いに背中を向けた。
父は、天井に向かって、人差し指を高く上げた。
「それはねっ、流れ星さまが、このお家に来なかっただけだよ」
母は、自分のお腹に両手を重ね合わせる。
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