7 / 10
おあずけ
しおりを挟む
ライが結婚したら、愛人になろうと決めたオーガスは、自分の父母の愛人に会って、「愛人生活」がどんなものか、聞いてみようとして、失敗に終わった。ライは、もう一度、故郷の第2区に帰り、領主の長女との婚約を断って来た。
東寮の食堂での夕食の後、
「話がある」
と、ライが話しかけ、オーガスはライのシャツの胸倉を掴み、空間移動魔術で、西寮の自分の部屋に連れ込んだ。ライは机のイスに座り、婚約を断ったことを話し出した。
オーガスは、並ぶ机のイスに座ることもできず、立って聞いていた。
「そしたらさ~~~~、『大きくなったら、結婚しようね』なんて、子どもの頃の約束を真に受けてたのかって、すんげ~おじさんに笑われた」
「うぷぷぷぷ」
オーガスは笑ったが、区から永久追放とか、莫大な慰謝料とか、ひどい展開にならなくてよかった。と、安心すると同時に、王城でのパーティーで聞いた、魔力が無いに等しい最弱第三王子の婚約者候補に、第2区の領主の長女が上がっているという噂は、本当だったのかと思う。第2区の領主は、婚約を元々、なかったことにして、第三王子を婿にするべく、堂々と名乗りを上げるつもりなのだろう。
「エリシダには、ちゃんと、お別れして来た」
「『は?あんたのことなんか好きじゃねえし』と言われた!」
「――『もう、あんなことしないから』って、泣かれた」
領主の長女は、親に言われたからじゃなく、子どもの頃の約束を守って、幼なじみのライのお嫁さんになりたかったんだ。と、オーガスは知って、胸は痛んだ。
ライは、うつむく。
「そう言われて、わかったんだ。ぼくは、エリシダをSubとして、しあわせにできない」
オーガスは何も言えずに、ライの薄茶の髪のつむじを見下ろして、聞いていた。
「エリシダの、Domとしての悦びは、虐めることだろ。それを『もうしない』って言うのは、エリシダは欲求不満になっちゃうと思う。だから、これでよかったんだよ――多分。」
第2区の領主の娘が第三王子の婚約者候補というのは、ただの噂の可能性もあるが、オーガスは、念のため、ライが婚約破棄されないように、第三王子と、いい感じになっていた西寮の寮生と関係を持つように仕向けて、できたてほやほや、あっちっち~である。
令嬢が主人公の物語ならば、オーガスは、婚約者を寝取り、第三王子を婿にすることも阻んだ大極悪人キャラである。
オーガスは跪き、うつむくライの包帯を巻いた額に、傷が痛まないように、やさしくキスした。
「ライは何にも悪くない。大極悪人は、ぼくだから。」
「そうだよ。お前が、ぼくの人生、めちゃくちゃにしたんだ」
「そう言われると、ちょっとドキドキしちゃうな…。大極悪人キャラ、楽しいかも。」
ドキドキする胸に両手を重ね合わせるオーガスを、ライは見下ろした。
オーガスの手がライのシャツの胸元を掴んだ。ライは、瞳を閉じた。
ふおおおおおおおおおおおおおおおっ!ちゅー待ち顔、たまらん。キンチョーしちゃって、まつ毛、ぶるぶる、まぶた、ぴくぴく、唇、きゅっとしちゃって、しわしわ~。ぷにぷにほっぺた、両手に包み込んで、ちゅっちゅ、ちゅぱちゅぱ、れろれろ、ぶっちゅ~、ぢゅっぷ~、してえええええええええ
けれど、オーガスは暴走する自分の欲望を抑え込んだ。
「Stay」
オーガスに命令されて、ライは緑の瞳を見開いた。
自分自身にも言って聞かせてるみたいな命令だなと思いながら、オーガスは言う。
「ライが痛いこと、もうしたくない」
ライは額に包帯を巻いていて、鼻にはガーゼを貼り、食事中、唇の傷跡に染みて、何度か、顔をしかめるのを、オーガスは見ていた。自分が拘束魔術で、さらに痛めつけてしまった傷だった。オーガスはライに酷いことをしたと、ちゃんと話した。
ライが散々、「好き」を言わされた後、オーガスが泣き出して、酷いことをしたと謝られた。そして、「ライが痛いこと、もうしない」と言われた。
こわい夢が現実だったと、オーガスに言われても、ライは今も、信じられない。
「オーガスも、こわい夢を見ただけだよ」
ライは言ったけれど、オーガスは、ふわふわの髪を揺らして、首を横に振った。
ライは、自分のシャツの胸元を掴んでいるオーガスの手を、握り締めた。
同じDomで、同じ酷いことをされて、「もうしない」と同じことを言われた。
それがエリシダにとっては「我慢」で、オーガスにとっては「やさしさ」になるのが、ライは不思議だった。
同じ「支配」なのに、こんなにも、かたちはちがう。
オーガスは「ライが痛いこと、もうしない」と言って、何もしなかった。ずっと何もしていない。
ライは、オーガスに言った。
「もう、だいじょうぶだよ」
「やだ。傷が、ちゃんと治るまではしない。ライのこと、めちゃくちゃにするのに、躊躇しちゃうから」
そんなことを言われて、ぷにぷにほっぺたを真っ赤っかにしたライは、オーガスの空間魔術で、食堂に連れ戻された。
短時間で食堂に戻って来たのに、東寮の寮長の顔は真っ赤っかで、西寮の寮長はドヤ顔で、ヤッたのか?!ヤッてないのか?!東寮の寮生と、西寮の寮生は、ムダに悩んだ。
東寮の食堂での夕食の後、
「話がある」
と、ライが話しかけ、オーガスはライのシャツの胸倉を掴み、空間移動魔術で、西寮の自分の部屋に連れ込んだ。ライは机のイスに座り、婚約を断ったことを話し出した。
オーガスは、並ぶ机のイスに座ることもできず、立って聞いていた。
「そしたらさ~~~~、『大きくなったら、結婚しようね』なんて、子どもの頃の約束を真に受けてたのかって、すんげ~おじさんに笑われた」
「うぷぷぷぷ」
オーガスは笑ったが、区から永久追放とか、莫大な慰謝料とか、ひどい展開にならなくてよかった。と、安心すると同時に、王城でのパーティーで聞いた、魔力が無いに等しい最弱第三王子の婚約者候補に、第2区の領主の長女が上がっているという噂は、本当だったのかと思う。第2区の領主は、婚約を元々、なかったことにして、第三王子を婿にするべく、堂々と名乗りを上げるつもりなのだろう。
「エリシダには、ちゃんと、お別れして来た」
「『は?あんたのことなんか好きじゃねえし』と言われた!」
「――『もう、あんなことしないから』って、泣かれた」
領主の長女は、親に言われたからじゃなく、子どもの頃の約束を守って、幼なじみのライのお嫁さんになりたかったんだ。と、オーガスは知って、胸は痛んだ。
ライは、うつむく。
「そう言われて、わかったんだ。ぼくは、エリシダをSubとして、しあわせにできない」
オーガスは何も言えずに、ライの薄茶の髪のつむじを見下ろして、聞いていた。
「エリシダの、Domとしての悦びは、虐めることだろ。それを『もうしない』って言うのは、エリシダは欲求不満になっちゃうと思う。だから、これでよかったんだよ――多分。」
第2区の領主の娘が第三王子の婚約者候補というのは、ただの噂の可能性もあるが、オーガスは、念のため、ライが婚約破棄されないように、第三王子と、いい感じになっていた西寮の寮生と関係を持つように仕向けて、できたてほやほや、あっちっち~である。
令嬢が主人公の物語ならば、オーガスは、婚約者を寝取り、第三王子を婿にすることも阻んだ大極悪人キャラである。
オーガスは跪き、うつむくライの包帯を巻いた額に、傷が痛まないように、やさしくキスした。
「ライは何にも悪くない。大極悪人は、ぼくだから。」
「そうだよ。お前が、ぼくの人生、めちゃくちゃにしたんだ」
「そう言われると、ちょっとドキドキしちゃうな…。大極悪人キャラ、楽しいかも。」
ドキドキする胸に両手を重ね合わせるオーガスを、ライは見下ろした。
オーガスの手がライのシャツの胸元を掴んだ。ライは、瞳を閉じた。
ふおおおおおおおおおおおおおおおっ!ちゅー待ち顔、たまらん。キンチョーしちゃって、まつ毛、ぶるぶる、まぶた、ぴくぴく、唇、きゅっとしちゃって、しわしわ~。ぷにぷにほっぺた、両手に包み込んで、ちゅっちゅ、ちゅぱちゅぱ、れろれろ、ぶっちゅ~、ぢゅっぷ~、してえええええええええ
けれど、オーガスは暴走する自分の欲望を抑え込んだ。
「Stay」
オーガスに命令されて、ライは緑の瞳を見開いた。
自分自身にも言って聞かせてるみたいな命令だなと思いながら、オーガスは言う。
「ライが痛いこと、もうしたくない」
ライは額に包帯を巻いていて、鼻にはガーゼを貼り、食事中、唇の傷跡に染みて、何度か、顔をしかめるのを、オーガスは見ていた。自分が拘束魔術で、さらに痛めつけてしまった傷だった。オーガスはライに酷いことをしたと、ちゃんと話した。
ライが散々、「好き」を言わされた後、オーガスが泣き出して、酷いことをしたと謝られた。そして、「ライが痛いこと、もうしない」と言われた。
こわい夢が現実だったと、オーガスに言われても、ライは今も、信じられない。
「オーガスも、こわい夢を見ただけだよ」
ライは言ったけれど、オーガスは、ふわふわの髪を揺らして、首を横に振った。
ライは、自分のシャツの胸元を掴んでいるオーガスの手を、握り締めた。
同じDomで、同じ酷いことをされて、「もうしない」と同じことを言われた。
それがエリシダにとっては「我慢」で、オーガスにとっては「やさしさ」になるのが、ライは不思議だった。
同じ「支配」なのに、こんなにも、かたちはちがう。
オーガスは「ライが痛いこと、もうしない」と言って、何もしなかった。ずっと何もしていない。
ライは、オーガスに言った。
「もう、だいじょうぶだよ」
「やだ。傷が、ちゃんと治るまではしない。ライのこと、めちゃくちゃにするのに、躊躇しちゃうから」
そんなことを言われて、ぷにぷにほっぺたを真っ赤っかにしたライは、オーガスの空間魔術で、食堂に連れ戻された。
短時間で食堂に戻って来たのに、東寮の寮長の顔は真っ赤っかで、西寮の寮長はドヤ顔で、ヤッたのか?!ヤッてないのか?!東寮の寮生と、西寮の寮生は、ムダに悩んだ。
1
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~
Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい
俺だけに命令して欲しい
俺の全てをあげるから
俺以外を見ないで欲しい
俺だけを愛して………
Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、
でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ
俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を
Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です!
Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。
こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる