天使のトリセツ

切羽未依

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天使のお仕事

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 天使様を起こして、ビッグ唐揚からあげをメインのおかずにして、メシを食わせた。

 天使様は、おっきく、おくちを開けて、ビッグ唐揚げに、かぶりつき、白飯しろメシを、もりもり、食う。食欲がないってのも、ウソだろ!!
 お昼も、お弁当箱が、そのまんま、冷蔵庫に入ってたから、食べなかったの?!って思ったら、米の一粒も残さず、キレイに食べてた。そうね!食べた後のお弁当箱をどうするか、説明しなかった俺が悪かったよ!!


 カピカピのお弁当箱と晩飯の皿洗いをした後、天使様とケンカした。



「天使はけがれないのだ」
「だとしても。シャワーくらい浴びて。着替えは買って来た」
「このころもだって、汚れない」
「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
 こいつが男だったら、ひん剥いて、脇に抱えて、バスタブに放り込んで、シャワー、ブッかけるのに!!

 しかし、それも、この令和時代には、フロハラスメントなのだろーか。フロハラ。
 いいや!!(完全否定)
 そんなこと言ってっから、風呂キャンセル界隈かいわいが、のさばるんだよ!!
 と思いながら、
「わかったよ」
 俺は、ゼンゼンわかってない顔で言う。

 復讐に、ニュースを見て、天気予報の晴れマークで、天使様にダメージを与えてやるぅぅぅ


 リモコンで、テレビをつけて、ニュースを見る。


 天使様が、天気予報、見たら、ショック受けるかなと思って、昨日も、今朝も、ニュース、見てなかったのに。


 は~あ。いつものことだけど、ヤなニュースばっかりだな~…

「天使様って、こういうの、何とかできないの?」
 俺は思わず言ってた。


 ふっと、天使様が笑った。


 俺は天使様を見る。時々、天使様、殺伐さつばつわらいするよな~。

 テレビを見つめている天使様の横顔。
 鼻のカーブから微笑む紅い唇をたどって、あごから喉までのライン、奇跡な美しさだな!!


「これは、天使の仕業しわざだ」
「はい?」
「『仕業しわざ』というのは、『天使がやったことだ。』という意味だ」
 聞き返したら、天使ちゃんに、言葉の意味を、わざわざ解説されちゃったよ!!

「言葉の意味は、わかる。じゃなくて、天使って、ものじゃないの?悪者わるものなの?」
 俺は、天使様の横顔に向かって、聞く。

 天使様の紅い唇が、ますます美しく歪む。
「善も悪もない。それは、人間が決めただけのことだ」
 ぬ~~~~~よく言うよね!それ!!

「天使は、神様をたのしませるために、戦争や災害を起こす」
「はあ?神様も、実は悪者なの?」
「だから、善も悪もないと言っているだろう」
「戦争も災害も、悪だよ。絶対に悪だ」
「神様は、どんなにひどい状況になっても、人間が美しく生きる姿をご覧になるのが、何よりの愉しみなんだ」
「何だよ?それ」
 俺が言うと、また天使様が、ふっと、殺伐笑いをした。

「人間だって、ドラマを見て、愉しんでいるじゃないか。酷い状況になった人間のさまを。」
「それは、本物じゃない、ニセモノだからよ」
「ならば、この『ニュース』というものは?」
 天使様に聞き返されて、俺の心臓、グッサリ!!


 天使様の言う通りだ。

 戦争や災害に負けずに、がんばっている人たちを、俺は平和で安全な部屋で、テレビで見て、たのしんでる。


「学者や芸術家が、狂気におちいるのも、天使の仕業しわざだ」
 殺伐笑いする歪んだ紅い唇で、天使様は言う。
「神様は、人間が真理しんりれることも、ご自身の創造を凌駕りょうがするものを産み出すことも、お気に召さないのだ」


 バカな俺でも、わかる言葉で話してよ、天使様。
 天使様が何を言ってるか、わかんないから、俺は何にも言えない。


 あ……
 殺伐笑いする紅い唇にばっかり目を奪われてて、俺は、やっと気付いた。

 天使様の横顔、テレビの中の人間たちを見つめる薄茶色の瞳は、とても悲しい光に満ちていて、今にも、あふれ出しそうだった。


「天使様は、それがヤだったんだ?」
 俺が言うと、天使様の泣き出しそうな瞳が、こっちを見てくれた。

 あ、天使様、泣いちゃう…と思った瞬間だった。

「言い過ぎた。忘れろ」
 天使様は言った。
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