64 / 82
#君が見る夢
4月 高校2年生
しおりを挟む
廊下に張り出された2年生のクラス表。
2年1組
有生蓮。おお、バスケ部。2年はクラスいっしょか。
今宮想太。2年は、俺、出席番号2番かあ。
江川冴。2年も江川さんと同じクラスかあ。
『「い」まみや』の後は『「え」がわ』か。「う」じゃない。
同じクラスに、宇賀晴の名前は、ない。
わかってはいたけど、胸がキュンッとした。
晴、何組だろ?クラス表に晴の名前を探す。
宇賀晴。3組の出席番号2番。あ、その次は、枝野。同じクラスだ。ちょっとうらやましいな。――晴を見ると、まだ1組の方を見てる。
「晴、3組だよ」
俺が言って指差すと、晴はクラス表じゃなく、俺を見上げた。薄茶色の瞳が、泣きそうに見えた。
えええええええ!俺は、あわあわ言う。
「お前…まさか、2年で、文系と理系で、クラス分かれるって知んなかったの?」
晴は、こくんとうなずいて、顔を上げなかった。
うええええええ…俺は、晴の細い腕、掴んで、クラス表を見る人たちの中から出る。晴が、クラス表を、よく見れるように、前に突っ込んで行ったのであって、俺みてえな、でっけえのがいたら、他の人が見えないから。
晴を連れて、俺は、廊下の端っこまで行く。
晴は、下を向いたままだ。下を向いてると、ますますちっちゃく見えてよくないと思う…
「そんな説明、あったか?」
「それは…なんとなく、みんな知ってる」
晴に聞かれて、俺は答えながら、こいつは、みんなが、当たり前に知ってることを、すこーんと知らなかったりするんだと、今ごろ、思い出す。
ちゃんと言わなきゃダメだった、進路ノートに「文系」「理系」を書く時に。
俺は、ため息つく。
「検索したら、体育の先生になるのに、理系・文系、どっちでもいいらしいんだよな。晴が勉強教えてくれるなら、理系でもよかったな」
晴が顔を上げた。めっちゃ怒った顔を、ぷいっとそむける。
「俺が勉強教えてくれるから、お前はそばにいただけだもんな」
吐き捨てて、晴は歩いて行く。
「そんなこと言わないで~。クラスがちがっちゃっても、教えにもらいに行くから、見捨てないで~、晴~」
追いかけて俺が言っても、振り返らない。俺は手を伸ばして、腕を掴む。
「晴」
晴は、俺の手を振り解こうとして、できるわけねーだろ、バーカ。
「もう教室、校舎、ちがうから。2年は、南校舎だから、廊下、あっちの方だよ」
そう言って俺は、晴の腕から手を離した。
こんな所で、またケンカしてたら、先生に呼び出されてしまう。2年連続、初日から呼び出しは、ないわ~。
晴は下を向いて、俺を見ないまんま、廊下を戻って、南校舎の方へ歩いて行った。ちっちぇ、細い背中。
俺は、これ以上、晴を怒らせないように、追いかけなかった。
2年1組
有生蓮。おお、バスケ部。2年はクラスいっしょか。
今宮想太。2年は、俺、出席番号2番かあ。
江川冴。2年も江川さんと同じクラスかあ。
『「い」まみや』の後は『「え」がわ』か。「う」じゃない。
同じクラスに、宇賀晴の名前は、ない。
わかってはいたけど、胸がキュンッとした。
晴、何組だろ?クラス表に晴の名前を探す。
宇賀晴。3組の出席番号2番。あ、その次は、枝野。同じクラスだ。ちょっとうらやましいな。――晴を見ると、まだ1組の方を見てる。
「晴、3組だよ」
俺が言って指差すと、晴はクラス表じゃなく、俺を見上げた。薄茶色の瞳が、泣きそうに見えた。
えええええええ!俺は、あわあわ言う。
「お前…まさか、2年で、文系と理系で、クラス分かれるって知んなかったの?」
晴は、こくんとうなずいて、顔を上げなかった。
うええええええ…俺は、晴の細い腕、掴んで、クラス表を見る人たちの中から出る。晴が、クラス表を、よく見れるように、前に突っ込んで行ったのであって、俺みてえな、でっけえのがいたら、他の人が見えないから。
晴を連れて、俺は、廊下の端っこまで行く。
晴は、下を向いたままだ。下を向いてると、ますますちっちゃく見えてよくないと思う…
「そんな説明、あったか?」
「それは…なんとなく、みんな知ってる」
晴に聞かれて、俺は答えながら、こいつは、みんなが、当たり前に知ってることを、すこーんと知らなかったりするんだと、今ごろ、思い出す。
ちゃんと言わなきゃダメだった、進路ノートに「文系」「理系」を書く時に。
俺は、ため息つく。
「検索したら、体育の先生になるのに、理系・文系、どっちでもいいらしいんだよな。晴が勉強教えてくれるなら、理系でもよかったな」
晴が顔を上げた。めっちゃ怒った顔を、ぷいっとそむける。
「俺が勉強教えてくれるから、お前はそばにいただけだもんな」
吐き捨てて、晴は歩いて行く。
「そんなこと言わないで~。クラスがちがっちゃっても、教えにもらいに行くから、見捨てないで~、晴~」
追いかけて俺が言っても、振り返らない。俺は手を伸ばして、腕を掴む。
「晴」
晴は、俺の手を振り解こうとして、できるわけねーだろ、バーカ。
「もう教室、校舎、ちがうから。2年は、南校舎だから、廊下、あっちの方だよ」
そう言って俺は、晴の腕から手を離した。
こんな所で、またケンカしてたら、先生に呼び出されてしまう。2年連続、初日から呼び出しは、ないわ~。
晴は下を向いて、俺を見ないまんま、廊下を戻って、南校舎の方へ歩いて行った。ちっちぇ、細い背中。
俺は、これ以上、晴を怒らせないように、追いかけなかった。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
推しに恋した。推しが俺に恋をした。
吉川丸子
BL
「俺は黒波燦を崇拝している!」
「俺は君の声に恋をしている」
完璧なはずの俳優が心奪われたのは、瞳孔の開いた自分のガチオタ。
国民的俳優・黒波燦×自信ゼロのフリーターミュージシャン・灯坂律。
正反対の場所で生きてきた二人が、恋とコンプレックスと音楽に揺さぶられながら、互いの人生を大きく動かしていく溺愛×成長BL。
声から始まる、沼落ち必至の推し活ラブストーリー。
炎の精霊王の愛に満ちて
陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。
悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。
ミヤは答えた。「俺を、愛して」
小説家になろうにも掲載中です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる