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胸の中で自問自答しながらちょい自分自身を笑ってしまった。


夏希ちゃんの気持ちがちゃんとあたしに向いてればあたしは離れて行く気はない──

夏希ちゃんがしっかりとあたしのストーカーをしてれば何も問題ない。

「明日、バイト行く前に朝一でちゃんとショップ行くから」

「…だめ…やっぱ、…晶さんは信用できない──…携帯買い替えるまで俺、見張っちゃうよ?」

「………」

「……明日の朝まで隣で見張るっ…」

「……隣?」

「………」

言ったまま口を閉じた夏希ちゃんの言葉を考えて、あたしは小窓から外を覗いた。

「………鍵ないと俺、マンションの玄関にも入れない…」

小窓から下を覗いたあたしを夏希ちゃんらしき人影が捨て犬のように悲しそうに見上げている。


「ぷっ…」

「なんで笑う」

「鍵どうしたの?」

「えっ!?」

わざとらしく聞いたあたしに夏希ちゃんは驚いた声を返した。

潔く背を向けて立ち去った筈がほんの一時間でまたここへ舞い戻ってきた夏希ちゃんに笑いが溢れる。

夏希ちゃんごめんなさい…


あたし、夏希ちゃんが可愛いから意地悪せずには居られない──



あたしはニヤニヤしながら部屋を徘徊して夏希ちゃんから貰った合い鍵を隠す場所を探して回った。

「鍵をどうしたの?」

「どうしたってさっき返したじゃんっ!?」

「うそ?ここにないよ?」

「ない!?──って、どこやったわけ!?」

「夏希ちゃんに高槻とのことを責められたショックで覚えてない…」

「──…っ…」

まるで交渉人のように時間を引き延ばす。中々鍵を隠すいい場所が思い浮かばない…

うーん…

顎に手を当てて唸った途端にふと思い付いた。

あったじゃん隠せるとこがっ!


「晶さん部屋入れて!俺が鍵捜すからっ」

企みながら仕込みを済ませ、あたしは必死な夏希ちゃんの声を確認してロックを解錠した。

急ぎで着たであろう夏希ちゃんが肩で息をしながらドアを強引に開ける。

「あ、夏希ちゃ…」

振り返ったあたしの腕を掴むと夏希ちゃんはいきなり唇を塞いできた。

こんな時の夏希ちゃんは相変わらず強引だ──

仔犬のようでいて時に雄──

こんな夏希ちゃんもあたしをゾクゾクさせる。

夏希ちゃんはあたし専属のストーカーでレイプ魔で可愛い仔犬…

「……は…っ…」

強く重ねた唇の間から夏希ちゃんの熱い息が漏れた。
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