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24章 スタジオ初入り
しおりを挟む「聖夜、あの話きたぞ。やってみるか?」
「きた?」
CMの収録を進めるスタジオで楠木さんが休憩をする俺にそう声を掛けてきた。
「撮影はどうだ?」
「虎太朗が利口だから順調!たぶんすぐ終わる」
今日は寒い時期となったらお約束──
暖炉のあるヨーロッパ調のキッチンで白いエプロンを着て歌いながら鍋をかき混ぜる。
クリームシチューのルウのCMだ。
虎太朗の舌っ足らずな歌声にハモりながらシチューを作る姿を撮影しているわけで…
小さいながらプロ根性の虎太朗のお陰で撮影はNGもほとんどなくスムーズに行われていた。
「職種は希望通りでよかったんだろ?」
「うん」
応えながら見せられたスケジュールを手にとる。
“頼りないっ…”
「………」
晶さんに言われたあの言葉は何気にショックだった──
一般人のことは確かに俺にはわからない──
どっぷりこの世界に嵌まった身だから、外の世界を全く知らない。
・
ある意味、井の中の蛙だ。
芸能界も荒波の海ではあるけど結局は隔離された世界──
俺は大海原を知らない……。
だから努力するわけで…
この中に居ても外を知る方法はいくらでもあるから。
俺はいつか晶さんと一緒に夢を叶える為に努力したいわけで──
「決まってるなら伝えておくから、じゃ撮影頑張って」
次の仕事内容の確認を取って楠木さんは切り上げる。
「どっかいくの?」
「ああ、舞花のドラマ撮影の様子見てから新人のCM録りに付きっきりになる」
「なる、行ってらっしゃい」
手を振り合うと楠木さんは足早にこの場を後にした。
「新人で早速CMか…やるな」
俺は呟いた。
楠木さんが見つけたなら持って生まれた“光る才能”てやつがあるはずだ──
事務所に入って直ぐにCMの仕事を貰えるなんて、そうそうない。
てことは──
そいつは“もってるヤツ”ってことでもある──
運と才能。
この世界では必要不可欠な言葉だ──
「会ってみたいかも…」
何となく興味が沸く──
「藤沢さんシチュー皿持ってください。──…じゃあイキマスっ!」
そう思いながら俺はカチンコの合図と共に、エプロン姿でシチューを持って虎太朗とくるくる舞って踊った……。
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