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27章 想いすぎるからこそ
しおりを挟む「藤沢さん目線をこっちにお願いします」
そう指示された通り、身体の向きはそのままで、俺は顔だけをカメラに向けた。
11月初旬──
高視聴率をキープしたままの連ドラと売り上げ好調の俺の写真集。
一皮剥けた藤沢 聖夜。大人としての役者の意気込みみたいなのを語らされるために雑誌の取材を受けている最中だ──
対談式に進められるインタビュー内容はやっぱり恋愛の話も吹っ掛けられるわけで……
「ドラマの影響で大人の女性ファンもかなり増えてきたようですが──歳上の女性に対しての印象は?」
「俺は恋愛で年齢を気にしたことは一度もないですね」
正直な話だ──
役者は自分の年齢と同じ役をやる訳じゃない。その度に違う設定、違う年齢を演じれば、相手の年齢なんて気にも止めなくなる──
「では、歳上女性も大歓迎ということで?──」
「もちろん!寧ろ結構な歳上がタイプかもっ」
笑ながら語る。これはもちろん新しく増えたファン層へのリップサービス。
今回の取材社はアラサーをターゲットにした月刊のファッション誌だ。働く独身女性の多い時代、会社の上司が彼女だったりと、年上彼女・年下彼氏が主流になりつつある。
・
取材を受けながらふと思った。
恋愛を語りながらいきなり俺が結婚とかしたら驚くだろうな……なんて。
二十歳になって大人の恋愛を通り越して婚約──…ってか?
ただ、思うに未だわからない……
大人の恋愛ってなんだ?
不倫とか、
何かの理由で一緒になりたくてもなれないとか、
自分を優先するからこそ好きでも一人で居ることを選ぶとか……
若い時の恋愛は相手のことばかりを考えて必死になって…
好きって勢いばかりが溢れて
「……」
まさしく俺がいま、その状況だ──
本気の恋愛が遅かったから…
今更、抑えられない感情の起伏に右往左往する俺がいる──
晶さんと俺の想いの熱さの違いはそこなんだろうか?
晶さんは…
高槻とどんな恋愛をしたんだろう……
“すごく好きになってきてるから──”
旅行先でそう答えた晶さんの言葉を思い出す。
晶さんはまだ完全に俺に惚れてくれてはいない──
そして何かと隠し事も多い……
俺は少し悔しさが込み上げて小さく唇を噛んでいた。
「──では有り難うございました」
俺の恋愛観、ドラマの最終録画に掛けての思いを語り取材を終えて俺は事務所に戻った。
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