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仕事のオファーが殺到する。。。
それが嫌でもわかるから、だから俺は断固反対だ──
「絶対にやらせないからっ…」
真剣に強く言う俺に社長は呆れた溜め息を溢していた。
「だからお前には教えたくなかったんだよ」
「んな言ったって顔出しすればバレるの時間の問題じゃんっ…」
「……楠木が試しに使ってみろっていうから臨時で頼んだだけだ──…まさかマリオが気に入るとは思わなかったんだよ」
「楠木さんが奨めた時点で大当たりじゃんっ…マリオだけじゃないしっ…顔出しなんかしたらあちこちからオファーくるっ…どうすんだよっ!」
俺の必死の訴えに髭は感情のない、にこやかな顔を向けていた。
「ここは芸能プロダクションで俺は社長だ──」
「………」
「売れるものは売る──…そんなのは当たり前。小僧が自分のくだらんヤキモチだけで甘えたこと言ってんじゃない」
「──っ…」
社長は俺を見据えてくる。俺の我が儘なのもただのヤキモチなのも当たってる。ただ、そんなことは百も承知の上で俺は言っている──
・
「晶さんを本格的にデビューさせるなら俺、辞めるからっ」
「………」
「俺か晶さん、どっちか選べばいい」
勝負を挑むように俺は社長を見据える。
「はは…脅しか」
髭は軽く笑っていた──
「なら晶を取る」
「………」
「そしてお前達二人はジ・エンドだ」
「──…」
「晶にガッチリ腕利きのSP付けてお前を半径5000マイル内に近づけないようにしてやる」
「ごせんっ…バカじゃん、それじゃカリフォルニアまで行っちゃうじゃん!」
「ああその通り。早い話が、お前を日本に居れなくしてやるってことだ」
「──…!」
どっちが脅しだよ!?
やっぱりクソチンピラだっこの髭っ…
作り上げた笑顔が腹立たしい。俺は苛立たし気にソファから立ち上がる。
「くそ、晶さん連れて逃亡してやるっ」
「お前は馬鹿か?──有名人のお前がどう逃亡するっつーんだ?」
髭は溜め息混じりに答えてポケットから煙草を取り出していた。
「鬱陶しいからまあ座れ」
一人で熱くなる俺を牽制する。
髭は煙を吐きながら口を動かしていた。
「今後、オファーが来てもラブシーンあるやつは晶が断るだろ?──お前がそう慌てる程でもない。それにたががアドリブのキスシーンで役者のプロのお前がみっともないぞ」
「……っ…」
髭は静かに俺を諭していた。
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