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28章 ラブチェス
しおりを挟む喫茶店の開店前──
この時期になると必ず増える一仕事。秋風に煽られ散った街路樹の葉を掃きながら、あたしは空を眺めた。
天気は快晴。空気が乾燥してきたせいか日増しに寒さは増している。
集めた葉っぱを風で散れないうちに、せっせと袋に詰めて閉じると厨房裏のゴミ箱に放り込んだ。
「マスター、掃き掃除終わったよ」
「おお、ご苦労さん! ついでに伝票にサインしといてくれ」
言われてカウンターへ向かうといつも珈琲豆を卸してくれる業者の田渕さんが立っていた。
「ごめん、田渕さん。マスター手が放せないからあたしがサインする」
「お、晶ちゃん! 見たよカップラーメンのやつっ」
田渕さんはニコニコしながら今週から流されたばかりのCMの話題を振ってきた。
「可愛く映ってたね~知ってる子だって大学生の息子に自慢しちゃったよ」
「え~マジですか」
笑いながら書類にサインをして受け答える。
「ここにいるって教えたからもしかしたら見に来るかも……」
「うげっ…それは勘弁」
苦笑い、書いた伝票を渡すと田渕さんはそれと引き替えにパンフレットを手渡してきた。
・
「これは?」
「晶ちゃん、珈琲の勉強したいって行ってたからどうかなと思ってね。一応何通りかコースもあるし……」
説明を聞きながらパンフレットに目を通す。
「お、研修ツアーか?」
仕込みを済ませ、厨房から出てきたマスターが手を拭きながらあたしの背後からパンフレットを覗いていた。
「28万……海外だって。これでマイスターまでとれちゃうの?」
「そのコースもあるよ、それはちょっと期間が長いけどね」
田渕さんは説明しながら長期間コースのパンフレットを取り出した。
ベーシック、スペシャリスト、マイスター。
マイスターは一ヶ月と結構長い。
「まだ期間があるから気になったら言って。パンフレットは置いていくから」
そう言って田渕さんは店を後にした。
あたしはスペシャリストコースのパンフレットにじっくりと目を通す。
「金に余裕があるなら行ってみたらどうだ?」
「でも、14日間だよ? お店はどうする?」
「なんとかなるわ14日くらい、こういうのは行こうと思ってもなかなかいけないからな。資格も取れるから行って損はないだろ?」
「………」
マスターに乗せられて少し気持ちが傾いた。
「うーん…考えてみる。…まだ期限に余裕あるし」
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